「ユビキタス進展でコーヒーは冷めなくなる」と慶応SFCの村井氏

【国内記事】 2001.09.21

 慶応義塾大学藤沢湘南キャンパス(SFC)は9月21日,ITをはじめとした先端的な研究成果を発表するための年次イベント「SFC OPEN RESEARCH FORUM 2001」(ORF)を同日から2日間の予定で開催した。ORFの推進団体であるSFC研究所で所長を務める村井純氏が,プレスカンファレンスで講演し,電気自動車「KAZ」への取り組みなど同イベントの見どころを説明するとともに,同キャンパスの研究体制の独自性,ブロードバンドやIPv6についての考えを示した。

経済財政政策担当大臣の竹中平蔵氏とともに日本のIT政策における重要人物である村井氏

 村井氏はSFC自体が先端的な研究施設になっていると話す。敷地内の周遊道路には2.4GHzのワイヤレスLANや,次世代携帯電話の通信回線など数種類のワイヤレスインターネット環境が整えられている。

「構内の道路を車で回れば,さまざまなワイヤレスインターネット環境を切り替えながら,インターネットを楽しむことができる」(村井氏)

 また,同氏は同研究施設が産学官の連携が最もうまくいってる大学の1つとも話している。もともとは,政府や民間企業の研究と,大学での研究が重なることはあまり多くなかったという。しかし,インターネットの登場により,通信工学分野の巨大組織であるNTTがインターネットプロトコルの研究に力を入れ始めたため,両者の研究に親和性が出てきたとしている。

 実際,同大学構内にはNTTドコモやインターネットイニシアティブ(IIJ)など,さまざまな会社がスポンサーとなり,寝泊まりできる独自の研究施設を持っているなど,産学官の協力体制が構築されている。

 さらに同氏によれば,現在の研究の多くがもはや単なる技術という言葉では括れないとする。

「電気自動車はもはや技術の世界あるいは“環境にやさしい”というだけのものではなくなっている。人間や社会,環境,文化,政策などの世界を経由して技術に戻ってきているのだ」(村井氏)

 その意味では,総合政策学部と環境情報学部の融合によるトータルな教育を目指す理念を持ち,民間企業や政府とのつながりも重視している同大学としては,「電気自動車は非常にSFCらしい研究」とするのも自然な考えといえるだろう。

ユビキタスが進化してコーヒーは冷めなくなる

 今回のフォーラムで注目されている概念に,ブロードバンドやユビキタスコンピューティングがある。この「いつでも,どこでも,どんなデバイスからでもインターネットに接続」できるユビキタスネットワークの構築について同氏は,IPv6をキーワードとして挙げている。

 同氏は,プライバシーやセキュリティ,政策などの問題が常にあるとしながらも,将来は冷めないコーヒーカップをつくることも可能とした。

 夢のような話だが,ワイヤレスインターネットのおかげでコーヒーは常に一定の温度が保たれるという。仕掛けはこうだ。

 コーヒーカップに定期的に何らかの電波が当たるようになっている。カップに電波が当たると,カップ内の情報はすべてデジタル化され,情報がインターネット接続機器に信号として渡される。信号を受けとった機器はそれをイベントとしてCPUを回転させ,カップ内のコーヒーの温度などを計算し,適切な温度まで温められるエネルギーを供給する命令信号をカップに送る。不可能な考え方ではないとして同氏は話してくれた。

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▼Networld + Interop 2001 Tokyo基調講演:「インターネットは地球環境の一部になる」,N+I基調講演で慶応大教授の村井純氏

関連リンク

▼SFC OPEN RESEARCH FORUM 2001サイト

▼慶応義塾大学

▼WIDEプロジェクト

[怒賀新也 ,ITmedia]