e-Day:ウインテルに染まるPocket PC 2002デビュー

【国内記事】 2001.10.05

 10月5日,マイクロソフトはPocket PC 2002のデビューイベントを日米同時に開催した。今週はNTTドコモが次世代携帯電話サービス「FOMA」を世界に先駆けて開始したり,DDIポケットが「AirH"」通信カードのコンパクトフラッシュ版を発売するなど,モーバイル関連のニュースが目白押しとなった。ケータイ大国ニッポンの本領発揮,といったところか。

 東京のホテルではPocket PC 2002の発表会が盛大に行われたが,ユーザーインタフェースが似ているWindows XPと同じように,もはや新しいプラットフォームが登場したからといって市場が踊ってくれることを期待できないだろう。

 ましてや米国の経済減速は同時多発テロによって確実となった。企業の予算削減と個人消費の冷え込みというダブルパンチは,多様化するデバイスの先兵とみられるPDAにも陰を落とす。市場調査会社のIDCは,PDAの出荷予測を下方修正した。

 同社によると,これまで「前年比50%増」としていたが,現時点で「10〜20%増」にとどまる見通しだという。マイクロソフトの阿多親市社長は,「2005年にはPalmを大きくリードしているだろう」と強気だが,IDCによるとPalmから市場シェアを奪うのに苦戦しているという

 PCよりはずっと成長性が高く,まだ成熟市場というには程遠いものの,ハードウェアプラットフォームの淘汰は,Pocket PC 2002で一気に進んだ。かつてWindows NTがCPUへの非依存を掲げて華々しくデビューしたが,時を追うごとにPowerPC,MIPS,そしてAlphaのサポートが打ち切られた。それと同じことがWindows CEでも起こり,新しいPocket PCではSH3とMIPSの姿が見えなくなった。

 StrongARMを生み,次世代のIA-64にも注入されようとしているAlphaの技術は一矢を報いたものの,PCと同じようにいつのまにかPocket PCはウインテルの世界になっている。1年以上前にStrongARMを採用したPDAのプロトタイプをインテルから見せてもらったが,小ぶりの弁当箱のようだった。それがまさか……,である。

 とっくにPCではインテル,ハードウェアメーカー,マイクロソフト,ISV,ソリューションプロバイダーという水平協業が確立されたが,早くもPocket PCがこのモードに入ったとみていいだろう。

 Pocket PC 2002日本語版の発表会に同席したハードウェアメーカーたちが開発中のPDAは,どれもStrongARMを採用し,スペック的にも似たり寄ったり。32MバイトROM,64Mバイトフラッシュメモリ,6万5000色の反射型TFTディスプレイ,コンパクトフラッシュとSDのデュアルスロットといったところは判で押したようだ。顧客に提供するバリューは,コンテントやソリューションに比重が移っている。しかも,ケータイ大国の日本では,Pocket PCのバリューもワイヤレスインフラの整備に依存したりする。

 私も今週半ばに出荷が始まったAirH"通信カードのコンパクトフラッシュ版をさっそく購入し,現行バージョンのPocket PCで「つなぎっぱなし」にトライしている。そうしてみると改めて分かるのは,システムというのはバランスが大切だということ。

 普段は5時間近くバッテリーで使えたNTTドコモのG-FORTだが,AirH"で半減してしまう。また,電子メールであれば実用的なのだが,CPUのパワー不足とPocket PC版のInternet Explorerのせいだろうか,Webブラウジングとなるとモタモタする。コンパクトフラッシュのスロットをAirH"カードが使うため,MP3データが入ってるCFメモリカードも装着できない……。

 難しいものだと感じると同時に,20年も革新を続けてきたPCはやはり侮れない。

[浅井英二 ,ITmedia]