新春インタビュー2002 >>
関連リンク

マイクロソフト 阿多親市社長 .Netで新たな領域に挑むマイクロソフト

昨年11月,ブロードバンド時代の新しいOSとしてWindows XPを出荷したマイクロソフト。2002年は,新しい開発ツールやWindows .Net Serverの出荷も始まる。XML Webサービスによって,既存資産を最大限に生かしつつ,開発効率を高めていく実装技術が今年出そろうと阿多親市社長は話す。

ZDNet 先ずは2001年の国内PC市場を振り返っていただけますか。

「国内のPC市場には2400万台のポテンシャルがあり,Windows XPが起爆剤になって再び成長軌道に戻る」と阿多社長
阿多 一昨年夏から伸びが鈍化し,昨年6月以降,コンシューマー市場を中心に前年割れという厳しい状況が続きました。ただ,11月にWindows XPを出荷し,かなり回復しています。12月の第4週,そして1月の第1週を見ると,前年ぎりぎりか少し落ちている程度にまでなっています。

 米国市場のPCや家電製品の世帯普及率から見て,彼らの4800万台というピークの半分,つまり2400万台のポテンシャルが国内市場にあると思っていますし,その考えは変わっていません。これまでにも右肩上がりできたわけではなく,1997年には前年割れを経験しました。踊り場を経て,再び成長軌道に乗るものと思っています。

ZDNet Windows XPはその起爆剤になり得ますか? 単に新しいOSが出たからといって,もう市場は踊らないという声もありますが。

阿多 過去のWindowsにはそれぞれ主要なテーマがありました。Windows 95はインターネットとうまく相乗効果があり,電子メールやWebブラウジングがPCを購入する動機付けになりました。Windows 98は,プラグ&プレイを実現し,デジタルカメラやカラープリンタといった新しい周辺機器を接続するだけですぐ使えるようにしました。これでインターネットを閲覧したり,情報発信する機能は整いました。

 これに対して,Windows XPはブロードバンド時代の新しいOSです。ADSLが急速に普及しており,ケーブルなどを合わせるとユーザーは200万人に達しています。今年末にこれが2000万人になったとしてもだれも驚かないでしょう。

 そうなったとき,コンテントも含めたサービスが必要になってきます。Windows XPにはサービスプロバイダーにとって市場機会を創り出す幾つかの仕組みが搭載されています。高品質のオーディオ/ビジュアルコンテントのためにWindows Media Playerを組み込み,やはりビデオも含めたIPコミュニケーションのためにWindows Messengerを組み込みました。また,インターネットの使い勝手を良くする「.Net My Services」のクライアント機能も搭載しました。

 新たに出荷されるPCの90%にWindows XPがプリインストールされていくわけですから,既に国内出荷された数百万に,毎月100万のインストールベースが増えていくことになります。

ZDNet .Net My Services,特に認証サービスの.Net Passportに対しては,プライバシーが侵されるのではないかという心配の声もあります。米国で使われている「インターネットの貸金庫」というキャッチフレーズは分かりやすくていいと思います。

阿多 米国とは違い,日本で貸金庫は馴染みのあるものではありません。あまり適切ではないと思います。われわれは,.Net My Servicesを理解してもらえるよう,ビデオを制作し,昨年12月中旬に行った「.Netデベロッパーズカンファレンス」でデベロッパーの方々に見てもらいました。

 議論や心配があった割には「これだけのこと?」という声が多かったと思います。また,「これは便利そうだ。市場機会もある」と感じてもらえたと思います。

 (サン・マイクロシステムズらによって)Liberty Allianceが結成され,マイクロソフトも「フェデレーション」(連合体)という考え方で対抗しているわけですが,われわれは,「本当に役に立ち,しかも使いやすいのか」が重要だと考えています。使い物にならないものに関してセキュリティを議論しても意味はありません。

 現在のインターネットに十分なサービス,複合的なサービスがないのは明確です。そうであれば,われわれは,サービスを提供する人たちにどういうビジネスチャンスがあるのかを示し,個人の情報をどのように管理していくべきかはこれから相談しながら決めていきたいと考えているのです。

 Passport認証サービスに2億人の情報が登録されていますが,求められるのは名前,メールアドレス,そして国名だけです。これ以上は任意です。必ずしもクレジットカード番号を保存する必要はなく,カード会社の顧客データベースと連携が図れればいいわけです。

 マイクロソフトとしては,.Netデベロッパーズカンファレンスで4社のパートナーからデモされたプロトタイプをデベロッパーのみなさんにもっと拡張していってほしいと願っています。

次のページ

[聞き手:浅井英二 ,ITmedia]