スパム対策は「できることから」
| 【国内記事】 | 2002.3.05 |
インターネットホットライン連絡協議会は3月4日,セミナー形式の第2回研究会を開催した。テーマは「迷惑メール」。非営利ボランティアでインターネットを用いた犯罪に対する相談・対応を行っている「Web110」代表の吉川誠司氏,それに,「特定商取引に関する法律施行規則の改正」を通じて迷惑メール対策に着手した経済産業省の商務情報政策局消費経済政策課の原英史氏によって,迷惑メールの現状とその対策が語られた。
吉川氏の講演は,インターネットを舞台としたトラブルの具体的な実例・手口の紹介が中心だった。中でも,ネットオークションや国際電話とからめたトラブル,恐喝サイトといった既知の事例に加え,サービスプロバイダーやホスティング事業者のセキュリティについて触れたことは特筆すべきだろう。
こうした事業者の中には,セキュリティ対策が不十分なだけでなく,関連ログの開示を求めても拒否されることもあるという(通信事業者としての立場上,やむを得ないとの見方もあるだろうが)。また,責任の所在やガイドラインが未整備な場合も多い。こうした現状に対する吉川氏の意見は,「もう少し柔軟な対応ができないか」だ。
さまざまな対策が出るも,実効性は「?」
トラブルの実例を踏まえた上で,同氏は迷惑メールをめぐる問題点をまとめた。
この記事を読んでいる方ならばご存じのとおり,迷惑メールに対しては,携帯電話キャリアや行政が幾つか対策を講じている。しかし,一連の対策が実効性を持っているかどうかとなると,はなはだ心もとないのが現状だ。
まずキャリアによる対策だが,たとえばドメイン指定受信には「FROM詐称」という手がある。選択受信拒否は,指定できるのはわずか10件であり,「携帯アドレスを毎回変更して送信」されればどうしようもない。宛先不明を多く含んだ大量の同報メールをブロックするスパムフィルタにしても,送信側が精度の高いアドレスリストを使用するようになっており,徐々に効果は薄くなっている。またこの対策には,本来受信されるべきメールまでブロックされかねないという問題点も残っている。
では,先日経済産業省が打ち出し,2月1日より施行された「!広告!」表示の義務付けはどうか。現実に迷惑メールの数が減ったかというとそうではない。むしろ,「!広告!」さえ付ければ合法であるという,送信者側の一種の開き直りすら感じられる。
なお,特定商取引法の改正では,「受け取り拒否方法の連絡方法を表示し,それを表示しない場合は件名欄に“!連絡方法無!”を表示する」旨も示されている。しかし,少なくとも私(=筆者)個人の経験では,連絡先が明記されていないにもかかわらず「!連絡方法無!」と付いた迷惑メールを受け取った覚えはなく,改正省令が遵守されているとは思えない。
そもそも,吉川氏の言うように「こうした業者が最初から本当の住所を明かすわけがない」のである。さらに,迷惑メール内の連絡先に「メールを停止してほしい」と通知したがゆえに,アクティブなアドレスであることが知られてしまい,アドレスリストに記載されてしまうケースもある。
吉川氏は,迷惑メールには2つの観点から問題があるとした。1つは,アダルト情報や出会い系サイトなどを含んだメールを無差別に送り付けるという,迷惑メールおよび送信者自身の問題。もう1つは迷惑メールを許容する環境だ。これには,身元確認なしで利用できるドメイン登録システムや無料プロバイダ,フリーメール,ヘッダー情報を削除してしまうiモード端末など,身元の隠蔽を可能にするシステムと,迷惑メール送信を容易にする,通称「スパムウェア」の存在がある。本来,インターネットの利用を広げ,ユーザーに利便をもたらすはずのサービスが,迷惑メールを助長させているわけだ。
「(迷惑メール送信者や)スパムウェア作者のほうが進んでおり,何らかの対策が出されればすぐに対応してくる」(吉川氏)
こうした状況を踏まえた上で同氏は,対策は「それぞれの立場で,できることから1つひとつ進めていくこと」しかないと述べた。行政による法整備,窓口相談の整備,事業者によるサービスの改善,それにマスコミによる正しい情報提供などを通じて解決に導いていくことが,遠回りに見えても最善の道だという見方だ。同氏は「まずは,迷惑メール自体が問題であるという意識を高め,社会的なコンセンサスとしていくこと」が重要だとも述べている。
法案改正では「再送信の禁止」や「連絡方法表示の義務付け」も
吉川氏の後に登場したのが,経済産業省の原氏だ。同省では,消費者の保護と電子商取引の発展という観点から,迷惑メール対策を進めている。その第1弾として,省令改正(=特定商取引に関する法律施行規則の一部を改正する省令)を2月1日より施行。引き続き,法律の改正に取り組んでいる。同省が提出した「特定商取引法の改正案」は3月初めの閣議決定を経て,国会審議にかけられる予定だ。
原氏は,省令改正に対し「“連絡方法無しを許可するのは手ぬるいのではないか”という意見もあった」と認めたうえで,「特定商取引法」「表示義務」という現行の枠組みの基での迷惑メール対策には限界があったと述べた。
これに対し,審議が進む改正案には,ユーザーがメールの受け取りを希望しない旨を事業者に連絡した場合,それ以上送信を行わないようにする「再送信の禁止」や「連絡方法表示の義務付け」が盛り込まれる。したがって,「法改正以降は,連絡方法を表示しない迷惑メールは認められなくなる」と同氏は述べた。
なおこの法律に違反した場合,事業者は指示や業務停止命令といった行政処分の対象となる。これら行政処分に従わない場合には最高で2年以内の懲役,3億円以下の罰金といった罰則が適用されるという。
さらに同省では,対策に実効性を持たせるため,財団法人日本産業協会を通じて,迷惑メールに関する情報収集を2月1日より開始している。既に同協会には,メールの件数ベースで数千件,事業者数では数百件の情報が寄せられているということだ。
なお,迷惑メール対策に関しては,与党による議員立法案も進められている。原氏は,「経済産業省案は,消費者に被害をもたらすような形で商業広告を行わないようにという,消費者保護の観点からまとめたもの。一方議員立法案は,私が知る限りでは,通信の観点からの規制だ。通信機能に支障が起きることを防ぐため,大量のメール送信を防止するというう観点からまとめられている」とした。迷惑メール対策の足並みがばらばらとなり,混乱を招くのではないかという指摘もあるが,あくまで「これら2つの法案を通じてパッケージで対応していく」(原氏)という見解だ。
一連の法律改正を通じて,迷惑メール対策には一定の進展が見られるかもしれない。しかし,海外事業者から送信される迷惑メール対策や,消費者に対する教育など,残る課題も多い。
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[高橋睦美 ,ITmedia]
