「iSCSI自体に問題はない」,課題はCPUの負荷

【海外記事】2002.5.08

 NetWorld+Interop 2002 LasVegas(N+I 2002 LasVegas)展示会の見どころの1つが,InteropNet Labs(iLabs)だ。取り上げられている3つのテーマのうち,MPLSと無線LANの2つは過去のN+Iでも登場済みだが,今回初の試みとなったのがiSCSIである。

 iSCSIは,TCP/IPネットワークから直接,ストレージ機器へのアクセスを可能にする技術。ストレージエリアネットワーク(SAN)で利用されているファイバチャネル(FC)プロトコルの代わりに,広く普及しているIPネットワークを利用してストレージにアクセスできる。コストや相互接続性の点で課題が残るFCベースのSANに代わるアーキテクチャとして,注目を集めている。

 iSCSIは元々,米IBMと米シスコシステムズの主導で開発された技術だが,現在ではインテルのほかアダプテック,ニシャン,ファルコンストアなど,ストレージ業界側でもサポートが広まっている。iLabsのIPストレージエリアでは,これらベンダーが提供するiSCSI対応製品をギガビットイーサネットで結んでデータをやり取りするデモが行われた。

 ところで,ストレージをIPネットワーク経由でやり取りする方法は,iSCSIだけではない。FCプロトコルをIPパケットでカプセリングするトンネリング型技術のFCIPや,ゲートウェイでFC-IP間の変換を行うiFCPといった手法も提案されている。

 iLabsのIPストレージ担当者は,「既に存在するSANどうしを接続する場合には,FCIPが適している。この場合,IPとFCという2つのネットワークを別々に運用する必要はなくなり,コストメリットも大きいが,SAN側のアドレス再割り当てといった作業が発生する」と言う。

 これに対しiSCSIが適しているのは,新規にサーバをストレージネットワークに追加するケースだ。現在ではたいていのサーバは,IPネットワークへの接続を前提にしている。ここでiSCSIを利用すれば,IPネットワーク経由でダイレクトにストレージ機器にアクセスでき,新たにFC対応アダプタやFCスイッチなどを購入する必要はない。

 初日を見る限り,iLabsでは順調にiSCSIが動作しているという。担当者いわく,「iSCSI自体の動作にほとんど問題はない」。SCSIとTCP/IPの変換にまつわるオーバヘッドも,パフォーマンスに大きく影響を与えることはないそうだ。

今のところ相互接続の動作は順調という

「現実に,オーバヘッドの問題を完全に解決することはできない。しかしiSCSIは,この問題を上回るメリットをもたらす。もはやSANとIPという2つのネットワークを並行して運用する必要はないからだ」と担当者は語った。また,IPネットワークをベースとしているため,QoSやセキュリティなどの技術をストレージに組み合わせることも可能になる。

 最大の問題は,iSCSIの仕様以外のところにある。ギガビットという帯域でストレージをやりとりすることから来る,CPUへの大きな負荷だ。「100Mbpsという帯域であれば問題になることはないが,iSCSIが実際に導入される際には,ギガビットイーサネットが前提になるだろうから,この問題を何とか解決していく必要がある」と担当者は述べている。

 また,万一iSCSIが流れるIPネットワークの一部に障害が発生した際に,どのようにリカバリを行うかも課題だ。特にこの部分は,ネットワークの部分だけではなく,データベースに代表されるアプリケーション側のサポートも含めて検討していく必要があるという。

 なお,iLabsでのデモンストレーションとは別に,ベンダーも独自にiSCSIに関する発表を行っている。

 例えばアダプテックとSSHコミュニケーションズセキュリティ(SSH)は,共同で,iSCSIにIPSecを組み合わせ,ストレージネットワークのセキュリティを強化することを発表した。SSHのIPSecソフトウェアをアダプテックのストレージ製品に搭載し,ストレージを盗聴などの危険から守ると言う。SSHはまた,SAN向けのIPSecツールキット「SSH QuickSec Toolkit for SAN」もリリースしており,こちらは今月より市場に提供される予定だ。

関連リンク

▼NetWorld+Interop LasVegas 2002

▼米アダプテック

▼SSHコミュニケーションズ・セキュリティ

[高橋睦美 ,ITmedia]