エンタープライズ:トピックス | 2002年5月28日更新 |
シュートシーンは無線LANで配信?
FIFAワールドカップのネットワークは,1万数千人のメディア関係者がアクセスするほか,約4万人のボランティア,選手や関係者,それに主催者である日本/韓国のFIFA大会事務局が利用する大規模なものだ。4月末からのテストを経て,5月中旬より稼働を開始している。この上で,スケジューリングや参加者の身分照会,試合結果のレポート,あるいはバックエンドのロジスティクス関連のアプリケーションが稼働する。
本格稼働を開始した国際メディアセンターはとにかく広い。既に到着したプレスもおり,ボランティアスタッフと一緒にPCセッティング作業に取り組む姿も見られた |
従来の大会とは異なり,日本と韓国という2つの国をつなぐことから,今回のネットワーク構築は非常に複雑なものであり,アバイアにとって非常にエキサイティングな作業だったと,米アバイアで,FIFAワールドカップネットワーク構築プロジェクトの責任者を務めるダグ・ガードナー氏は述べている。
機器,トポロジともに完全冗長化
大まかなネットワーク構造は次のようなものだ。
まず,パシフィコ横浜と韓国の2カ所に設置されたIMCを国際IP-VPNで接続。日韓のIMCが互いにフェイルオーバーの機能を提供できるように設計されている。また,IMCはそれぞれ,国内のスタジアムや事務局を結ぶハブとしての役割を果たし,国内の拠点はATM網と,バックアップ回線の役割を果たす公衆網(PSTN)で二重に接続される。なお長距離回線はNTTコミュニケーションズやコリアテレコムが提供する。
ガードナー氏は「製品においても設計においても冗長性を確保し,単一の障害点がないようにした」と述べており,4万以上のノード,1万台に及ぶネットワーク機器のすべてについて,信頼性について万全の体制を敷いたことを強調した。
もう1つの特徴は,データと音声の統合だ。アバイアの「ECLIPS(Enterprise Class IP Solutions)」や「DEFINITY Enterprise Communications Server」,IPフォン/ソフトフォンを用いて,VoIPやビデオカンファレンスを実現している。今回は,マルチキャストストリーミングのように帯域を大きく消費するアプリケーションは導入していないこともあって,回線にはまだ余裕もあり,品質およびパフォーマンスを確保できているという。
また,IMC内部および試合会場には,無線LANアクセスポイントを設置した。これにより例えば,「スタジアムで撮影した写真や記事を無線LAN経由で即座に送信し,これまでよりもすばやく速報を流すことができる」(ガードナー氏)。
IMC内に設置された無線アクセスポイント |
ただ,IMCにせよ各会場のスタジアムにせよ,通常のオフィスとは異なり,イーサネットで伝送可能な距離を超えて配線を行う必要がある。このため一部では,光ファイバとメディアコンバータを組み合わせてネットワークを構築するなど,いろいろと工夫を凝らしたそうだ。
IMCでは,各種ケーブルは地下を這う |
なおIMC内には,無線LANカードの販売およびインストールサービス,サポートを行うためのブースが設置されている。既に「ORiNOCO」無線LANクライアントを持っていれば,利用料金のみで利用できるという。
無線LANサポートセンターとスタッフ。当たり前だが日本語のほか英語,韓国語,フランス語など,各国の言語に対応したドライバを用意している |
セキュリティの側面では,ファイアウォール導入はもちろん,FIFA ATM外部に接続する場合にはVPNを利用することとした。一連のVPNクライアントおよびセキュリティ機器は,管理サーバによって一元的に監視・管理されるという。ちなみに,一般にエンタープライズ環境で課題とされる物理的・人的なセキュリティについては,国際空港並み,もしくはそれ以上に厳しい警備体制が敷かれている。
アバイアでは同大会に備え,運用のサポート人員として,20カ国以上から200人におよぶエンジニアや技術者を派遣,日韓両国に配置している。またCTCからも延べ300人が,ネットワーク設計・構築のサポートや事前テストに携わった。
FIFAワールドカップネットワークの運用管理ルーム。FIFAのITスタッフだけでも240人に上るという |
会期中は,アバイアの日韓両オフィスだけでなく,米国およびシンガポールのリモートサイトを加え,計4カ所から24時間体制でネットワークの管理作業を行う。またCTCも,国内約60カ所のサービス・サポート拠点とFIFAのネットワークをリンクさせ,万一の際には速やかな対応を取れる体制を整えている。このネットワーク管理ツールには,アバイアの「CajunRules」「CajunView」と「EXPERT Systems」を利用していく。
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[高橋睦美 ,ITmedia]