エンタープライズ:ニュース 2002/07/18 21:30:00 更新


日立ITコンベンション開幕、水冷PCやミューチップなど先端技術が賑やかに集う

日立製作所は7月18日、同社のITソリューションを紹介するカンファレンスや展示を行う「Hitachi IT コンベンション 2002」を、東京国際フォーラムで開幕した。

 日立製作所は7月18日、同社のITソリューションを紹介するカンファレンスや展示を行う「Hitachi IT コンベンション 2002」を、東京国際フォーラムで開幕した。2日間の開催が予定されている。基調講演は同社の庄山悦彦社長が務め、「ユビキタス情報社会」を実現させる同社の製品やサービスを紹介した。来場者には、同社が開発した「ミューチップ」が埋め込まれたパスが配られ、アクセス管理や参加セッションの管理を行っている。また、展示会場には、先日発売された水冷式PCの仕組みを紹介するコーナーも設置された。

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「ユビキタス社会が到来した」と繰り返す庄山社長

  昨年と同様に(関連記事参照)、「ユビキタス社会の到来で情報が水と同じライフラインになる」と話す庄山氏。少し使い古された印象も出てきたこのキーワードだが、このイベントで紹介されている技術を見ると、着実に実現に向かっていることが分かる。

 例えば、同コンセプトを実現するための同社の具体的な取り組みで、最も注目できるのがミューチップだ。

 ミューチップは、「世界最小無線認識IC」と同社が呼ぶ極めて微小なチップ。大きさは、0.4ミリ四方。指の上に乗せても小さなゴミくらいにしか思えない1粒のミューチップにはそれぞれ、製造時に128ビットのユニークIDが振られている。5センチメートルほどの紙製の外部アンテナの先端に同チップを搭載し、それをミューチップリーダーと呼ばれるデバイスで読み取ることで、その情報がデータベースに格納される。

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来場者に渡された入場パス。真ん中の窓の黒い線の先端に0.4×0.4ミリメートルのミューチップが埋め込まれている。

 基調講演では、ミューチップの想定導入事例として、病院の薬や点滴の管理が紹介された。同チップがラベルに埋め込まれることで、医療製品の管理が安全で確実に行えるようになるという。また、販売業者などが、各商品にミューチップを搭載することで、商品情報を効率的に管理できることなどが触れられた。

 ミューチップは、読み取り専用など機能がシンプルな分、実現できることにも制限がある。しかし、書き込み不能である分、IDの改ざんなどは物理的に不可能になり、セキュリティを確保できる。周波数は2.45GHz、ミューチップリーダーとの最大の通信距離はおよそ30センチ、電池無しで動作する受動型チップとなっている。

 現在はまだ、1ウェハから取れるチップの数が理論上20万なのに対して、実際は7万が限界という。これは、ミューチップがガラスのような性質を持っているため、ウェハから切り出すときに、周りのシリコンを傷つけてしまうためだ。また、通信距離への顧客の要求も高いなど、技術的な課題も幾つかあるため本格的な出荷にはいたっていない。ただし、顧客からの問合せは、「日立創立以来の多さ」と同社の担当者は話している。ミューチップ1つの単価が10〜20円くらいになると、市場に爆発的に普及すると日立は見ているようだ。

注目の水冷PC

 一方、同会場には、同社が先日正式に発売した(関連記事)水冷式PC「FLORA 270W サイレントモデル」を紹介するコーナーも設けられた。

 水冷PCは、パソコン内部で発生する熱を放出するための仕組みに、ファンではなく、水を利用しているもの。ノートPCのディスプレイの裏側に搭載された冷却液タンクの水は、ポンプの力を借り、PC内部に張り巡らされた冷却液循環チューブを流れる。それにより、CPUを冷却する仕組みだ。ファンを回す必要がないため、騒音は30db以下となり、図書館や病院でも音を気にすることがなくなるという。

「水冷式冷却技術を次世代PCのスタンダードにしたい」と話す同社のブース担当者。今後は、各分野のグループ企業を通じて冷却技術を紹介して、他のメーカーのパソコンにも搭載したいとしている。

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パソコン内部に管を張り巡らして、水を流すことでCPUの熱を下げる。

 また、プロセッサ自体の性能向上に関しても、熱冷却の問題がボトルネックの1つになっており、「空気の10倍の冷却効果を持つ」という水冷却の技術がCPUの性能向上につながる可能性もある。各プロセッサメーカーも、水冷技術に注目をしているという。

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関連リンク
▼日立製作所
▼日立ITコンベンション 2002

[怒賀新也,ITmedia]