エンタープライズ:コラム 2002/09/19 20:15:00 更新


Gartner Column:第63回 「プロビジョニング」という言葉が流行りだした理由

元々は通信事業者の用語であったプロビジョニングという言葉が他のIT分野でも使用されるようになっている。この言葉の意味を追求してみると、今、ITインフラ管理の世界で起きている長期的なパラダイムシフトが見えてくる。

 最近、プロビジョニングという言葉をよく目にするようになった(ちなみに、googleで検索してみると1820件ヒットした)。「provisioning」を英和辞典で引いても載っていないようだ。provide(供給する)の名詞形であるprovisionに-ingを付けたちょっと変な語感の言葉でもある。

 プロビジョニングという言葉の定義は、人により多少の相違はあるが、通信事業者においては、顧客の需要を予想して計画的に準備したネットワーク施設を顧客の要求に対して迅速に提供するプロセスを言うことが多い。「収容設計」や「事前設定」などと訳される場合もあるが、必ずしもしっくりこないので、カタカナ書きのままで使用されることも多いようだ。

 注目すべき点は、最近、ネットワークの分野だけではなく、システム管理やストレージ管理の分野でも、この言葉が使用されることが多くなってきたことだ。この場合も言葉の基本的な意味は同じで、サービスプロバイダーや情報システム部門がサーバやストレージなどのコンピューティング資源の事前準備を行っておき、ユーザーの要求に迅速に対応するプロセスを言う。

 プロビジョニングという場合と単にアロケーション(割り当て)やコンフィギュレーション(設定)という場合の相違はどこにあるのだろうか? プロビジョニングを実現するためには、どのような機能が必要なのか? サーバやストレージの世界でもプロビジョニングという言葉が頻繁に使用されるようになってきたのかのはなぜか? これらの質問の答を追及してみると、今、ITの世界、特にインフラ管理の世界で起きているパラダイムシフトが見えてくるだろう。

そもそもプロビジョニングとは何か?

 プロビジョニングの概念では、事前に用意され、プールされている資源を迅速にユーザーに割り当てられる点が重要だ。つまり、ユーザーの要求があってから、サーバやストレージを購入したりインストールしたりするのではないということである。また、プロビジョニングと言った場合には、単にシステム的な設定作業だけではなく、セキュリティや課金に関する事務的なプロセスも含まれることが多い。

プロビジョニング実現に必要な機能

 まず、システムの稼動中にプロセッサやメモリなどを追加できる機能、いわゆる、ホットプラグなどと呼ばれる機能が必要である。そして、ユーザーは、使用していない予備の資源に対して対価を払うのを嫌がるため、資源を使用して初めて対価が発生するような従量制の料金体系がベンダーから提供されることが望ましい。これは、キャパシティオンデマンド、すなわち、第59回で解説した「置き薬」コンピューティングの考え方に他ならない。

 また、必要なコンピューティング資源の追加タイミングを予測するためにはパフォーマンス管理や容量計画の機能が重要となる。さらに、ユーザーやアプリケーションを動的に追加することで、既存のユーザーのサービスレベル(例えばレスポンスタイム)が維持できなくなることを防ぐためにはワークロード管理機能が必要となる(第60回参照)。つまり、サーバやストレージの世界でプロビジョニングを実現するためには、システム管理の面でも強化が必要ということだ。

 人的管理面で言えば、ユーザーに提供されるサービスの内容がある程度メニュー化されているということが必要となるだろう。例えば、99.99%の可用性保証、日次バックアップのサーバディスクスペース50Gバイトを月額いくらで提供するといったようにである。このようなメニュー化なくしては、ユーザーの多様な要求にこたえることは難しいだろう。

なぜ、今プロビジョニングなのか?

 今、プロビジョニングが必要とされる最大の理由は、ITにいままで以上の変化への対応力が求められているということだ。インフラの追加変更に要する時間が足かせになって、新規アプリケーションの展開が遅れるというような状況が許容されなくなりつつある。もうひとつの理由は、インフラ管理に要するコストをできるだけ下げたいという要求である。そのためには、前述のメニュー化による標準化が欠かせない。

 かいつまんで言えば、プロビジョニングの実現とは、ITインフラとその管理の提供形態を通信事業者(ネットワークサービスプロバイダ)的にするということだ。プロビジョニングという言葉が、ネットワーク以外の分野でも使用されるようになってきたということは、まさに、IT全体のサービスプロバイダーモデルへの移行というメガトレンドを表していると言えるだろう。

 ASPやSSPなどの、いわゆるサービスプロバイダーではない一般企業の情報システム部門においても、エンドユーザーに対するサービスプロバイダーモデルによるサービス提供、つまり、ある程度標準化されたメニューで、従量制の課金に基づき、迅速なインフラ提供と事務手続きプロセスを行うという考え方が重要になってきているのである。

 プロビジョニングの考え方は、ビジネスの俊敏性を高め、ITコストを下げるための重要なステップと言えるだろう。

[栗原 潔,ガートナージャパン]



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