エンタープライズ:ニュース 2002/12/05 00:13:00 更新


ダイヤモンドリングの輝きを支えたネットワーク技術

12月4日、アフリカ南部からオーストラリアにかけて皆既日食が観察された。ライブ! ユニバースではさまざまなネットワーク技術を駆使し、この模様のインターネット中継を行った。

 日本で観測するにはあと数年待たねばならない皆既日食――12月4日、アフリカ南部からインド洋、オーストラリアにかけて、この珍しい天文現象が観察された。非営利団体のライブ! ユニバースでは、アフリカ・ボツワナのチョベとオーストラリアのセデュナの2カ所から、皆既日食の映像をインターネット経由でリアルタイムに配信。この試みを成功させるため、数多くの企業、団体、それに個人が協力を行った。

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チョベから配信された皆既中の画像。きれいにコロナが映し出されている

 ライブ! ユニバースはこれまでも、昨年のしし座流星群の大出現や皆既日食といった天文現象のインターネット中継に取り組んできた。前身となるボランティアグループ、「ライブ! エクリプス実行委員会」と「ライブ! レオニズ実行委員会」から数えれば、足掛け5年の活動暦である。

 ブロードバンド接続などというものが影も形も無かった活動初期には、インターネット経由での映像配信自体がチャレンジングな試みだった。だからといって、2002年のいま行われるビデオ配信が簡単なのかというと、まったくそんなことはない。帯域に応じた、さまざまなフォーマットでのストリーミングの実現、アクセス数に応じた適切な負荷分散とユーザー誘導、IPv6経由のDV over IPなど、さまざまな新しいネットワーク技術が用いられている。

 ストリーミング中継に当たっては、東京・お台場の日本科学未来館にENOC(Encoding & Network Operations Center)を設置。チョベとセデュナで撮影された画像は、それぞれRealVideo(Helix Producerによる)、MPEG2形式で、衛星回線を経由してENOCまで届けられる。ENOCではこの画像を、Helix、Windows Media Technology 8、QuickTime 6という3つの方式にエンコードし、インターネットに配信した。ENOCでは各社からの協力を得て、全9台のエンコーダを活用したが、やはり中継開始直前までチューニングが続けられたという。また、これだけの機器が集まった以上、安定した電源の確保にも苦労があったということだ。

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ENOC風景。中継画面を写すスクリーンの下にエンコーダが並んでいる。中継に携わったボランティアのメンバーは、電話のほかPolycomのテレビ会議システムやチャットを用いてコミュニケーションしていた

 インターネット配信に当たっては、アイアイジェイメディアコミュニケーションズやアクセリア、NTTコミュニケーションズ、NTTスマートコネクトなど、多数のプロバイダーが協力。大規模なストリーム配信を実現した。

 ここでは、アクセスしてくるユーザーが集中することのないよう、Webとストリーミングそれぞれについて負荷分散システムが活用された。Webについては、TenbinとRADIXを活用することで、最適なサーバにユーザーを導く仕組みだ。一方ストリームでは、上記のRADIXやZebraに加え、NTTスマートコネクトのナビゲーションシステム、ネクストコムの「SSLB(Streaming Media Server Load Balancer)」、それから九州大学情報基盤センター岡村研究室が開発した「R-Cube」という3タイプの負荷分散システムが稼働し、負荷の過度な集中を防いだ。

 さらにIPv6ネットワーク向けには、Windows Media Technology 9(奇しくもコードネームは“Corona”だ)でのストリーミング配信を行った。同時に、IPv6網経由でDVデータを大手町中継センターまで送信。ここでコンバートを行い、30Mbpsフルレートという高品質な映像をDV over IP(DVTS)で配信した。このライブ映像は複数のテレビ局に提供され、一部はそのままテレビに放映されたという。

 ライブ! ユニバースによると、当日14時から19時にかけての総アクセス数は610万に上ったという。なお映像は引き続き、Webサイトでオンデマンド方式で再生できるようになっている。

  ライブ! ユニバースでは、引き続き2003年の金環日食(5月31日、アイスランド)、皆既日食(11月23日、南極)のインターネット中継に挑戦する。2009年、日本で皆既日食が見られるそのときには、万全の体制を整え、全世界に向けて配信していく考えだ。

関連リンク
▼ライブ! ユニバース

[高橋睦美,ITmedia]