エンタープライズ:ニュース | 2002/12/20 12:41:00 更新 |
XML/Webサービスを推進し「Web 2.0」をつくりあげるBEAシステムズ
J2EEアプリケーションサーバのリーダーであるBEAシステムズが、IBMやマイクロソフトらと協力し、次世代の「Web 2.0」をつくりあげようとしている。来日したディッゼンCTOは、2003年前半に登場する「BEA WebLogic Platform 8.0」では、WebLogic Workshopツールをインテグレーション分野もカバーできるよう強化すると話す。
日本BEAは12月19日、都内のオフィスでプレス向けブリーフィングを行った。J2EEアプリケーションサーバのリーダーであり、ガートナーが「アプリケーションプラットフォームスイート」と呼ぶ新しい市場においてもビジョナリーとして位置付けられる同社は、Webサービスを推進し、「次世代のWeb」をつくりあげようとしている。
来日したCTO(最高技術責任者)のスコット・ディッゼン氏は、「XML/Webサービスが進展し、Webはアプリケーションインテグレーションのプラットフォームになる」と話す。
TCO削減には絶対の自信を見せるディッゼンCTO
ディッゼン氏は、ブラウザを介してユーザーがアプリケーションにリクエストを出す現在のWeb(1.0)に対して、XML/Webサービスによってアプリケーションとアプリケーションがコミュニケーションできる世界を「Web 2.0」と呼ぶ。そこでは、EAI(Enterprise Application Integration)やB2Bのサーバ間はもちろん、J2SE、J2ME、あるいは.NETの各種クライアント/サーバ間のアプリケーション同士のコミュニケーションもWebサービスによって可能になる。
「これまでの“インテグレーション”は、あまりにもずさんだった。Webサービスは解毒剤だ」とディッゼン氏。
ディッゼン氏は、多くのコーディング作業を必要とするポイントツーポイント型のインテグレーションを念頭に置いたものだろうが、ティブコやウェブメソッド、シービヨンドのインテグレーションミドルウェアベンダーに対しても、「彼らのインフラはプロプライエタリ。別のベンダーに移行しようと思えば、すべての投資を捨て去るしかない」と手厳しい。
「彼らも標準採用? Java/XMLのベニヤ板を表面に張っただけ。標準化策定に深く関わっていないし、製品の相互運用性を検証するWS-I(Web Services Interoperability Organization)にもボードメンバーとして参画していない」(ディッゼン氏)
Webサービスの標準化作業を行っている団体としてW3CやOASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)などがあるが、BEAは、IBMやマイクロソフトらと協力し、標準化団体に先駆けて多くの標準提案を発表している。
それでも、Webサービス普及のためには、まだ多くの「穴」があることをディッゼン氏も認めている。Webサービスのセキュリティやリライアビリティに関する標準化であり、またWebサービスの構築をさらに簡単にする必要もあるという。
例えば、セキュリティ分野では、6月にOASISに提出された、情報暗号化のための「WS-Security」仕様があるが、相互運用性のテストがまだ済んでいない。12月10日には、W3CがXML暗号化仕様を承認するなど、「穴」を埋めていく作業が続いている。IBM、マイクロソフト、サン・マイクロシステムズらとともにBEAが参加した暗号作業部会で策定されたXML暗号化仕様では、例えば、XML文書のクレジットカード番号だけを暗号化する、といったことも可能になるという。
また、BEAは12月18日、IBMやマイクロソフトらとともに、アプリケーション間や企業間で情報をセキュアに共有することを目的としたWebサービスの新標準仕様を追加提案したばかりだ。
「さらに来週、新しい標準提案を行う予定だ」とディッゼン氏は明かす。同氏は、「市場を速く動かしたいからだ。標準化団体では時間がかかってしまう」と、そうした背景を話す。
2003年前半に新バージョン
BEAは、Webサービスアプリケーションの作成を簡単にするWebLogic Workshopを今年3月に発表し、9月から出荷が始まった「BEA WebLogic Platform 7.0」に統合している。2003年前半に登場する次期バージョンの8.0では、インテグレーション機能やポータル機能が強化されるとともに、このWebLogic Workshopがこうした機能とさらに緊密に統合されるという。
WebLogic Workshopのアップグレードでは「BPEL4WS」(Business Process Execution Language for Web Services)や「SAML」(Security Assertion Markup Language)、そして正式に規格化されれば、WS-Securityなど、最新のWebサービス標準もサポートすることになる。
ディッゼン氏は、新バージョンについては多くを話せないとしながらも、「BEA WebLogic Platform 8.0では、WebLogic Workshopが、ビジネスプロセス、メッセージングルール、アダプタ、トランスフォーミングなど、インテグレーションに必要なエンドツーエンドのタスクのためのツールセットになる」と明かした。
また、最大のライバルであるIBMとの戦いについても、「IBMは、WebSphereやXML、Linuxといった新しい技術ではCICSに匹敵するようなTCO削減や高品質を提供できていない。また彼らは、新技術をメインフレームとオープンな分散環境のどちらにも対応させていかなければならず、一度で済ませられるわれわれが有利だ」と話す。
「メインフレームやAS/400の既存顧客ベースの大半をうまくWebSphereに移行させることはできるだろうが、われわれにはそれ以外のプラットフォームがある。そちらの方がマジョリティなのだ」(ディッゼン氏)
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関連リンク
BEA WebLogic Platform 7.0Jサイト(BEA/ZDNet共同企画)
日本BEAシステムズ
[浅井英二,ITmedia]