エンタープライズ:ニュース 2003/06/10 08:08:00 更新


BEAが先制パンチ、J2EE開発を簡素化するWebLogic Workshopの実績をアピール

JavaOneカンファレンスを翌日に控えた6月9日、BEAがBEA WebLogic Workshop 8.1の実績をアピールするプレス向けラウンドテーブルを行った。10日から始まるJavaOneでは、Sun Microsystemsが開発ツール「Project Raven」を披露するという。BEAが先制パンチを放った格好だ。

 米BEA Systemsは米国時間6月9日、JavaOneカンファレンスの開幕に先立ち、BEA WebLogic Workshop 8.1に関するプレス向けのラウンドテーブルを行った。

 J2EEアプリケーションサーバとその関連製品の分野で激しく争うIBMがオープンソースのEclipseをうまく活用し、デベロッパーらを引き付けようとしているほか、Sun Microsystemsも明日10日に開幕するJavaOneカンファレンスで開発ツール「Project Raven」を披露する。Project Ravenは、WebLogic Workshopと同様、Visual Studio(Visual Basic)のユーザーもターゲットにしているという。今回のJavaOneカンファレンスでホットな話題の一つとしてツールが注目されそうだ。

 この日、カリフォルニア州サンフランシスコの金融街にある同社オフィスに集まったのは、既にWebLogic Workshopを採用している顧客企業やシステムインテグレーターたち。IBMをはじめとするライバルらに先んじていることを印象付けるのがBEAの狙いだ。

「J2EEはさまざまな仕様が整備され、企業コンピューティングの基盤となったが、それに伴い、J2EEのAPIを利用した開発が高度なスキルを要求することも分かってきた」と話すのは、BEAでエンタープライズ製品のマーケティングを担当するリック・ジャクソン副社長。彼によれば、ある企業を調査したところ、デベロッパーリソースを現在の10倍に増やさなければ、求められているJ2EEプロジェクトをこなせないことが分かったという。

「WebLogic Workshopは、J2EEのエキスパートでなくとも、WebLogic Platformの機能を活用できるようにデザインされた。シンプル化によってJ2EE開発効率の水準を引き上げるもの」とラウンドテーブルでジャクソン氏は話した。

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ラウンドテーブルの司会を務めたジャクソン副社長


 WebLogic Workshopは、同社が2001年7月に買収した米CrossGainの技術をベースに開発されたもの。かつてMicrosoftで開発ツールを担当し、CrossGainを共同で設立したアダム・ボスワース氏らもそのままBEAに移籍している。

 「Javaコントロール」をドラッグ&ドロップで配置し、プロパティを設定するWebLogic Workshopのアプローチは、Visual Basicに似ている。コンシューマーや企業向けに預金や債務を管理する製品やサービスを提供している米TrueLinkは、WebLogic Workshopを採用する顧客企業の1社。ラウンドテーブルに招かれたスコット・メッツガーCTOは、「コントロールモデルは、高い水準の生産性をもたらしてくれる。“Do more with less”だ」と話す。

ISVらが「Javaコントロール」提供

 しかし、BEAのジャクソン氏は、WebLogic Workshopの強みが単にJ2EEアプリケーション(ロジック)の開発にとどまらないことを強調する。BEAは、WebLogic Server上にWebLogic IntegrationとWebLogic Portalを統合し、さらにWebLogic Workshopによって開発環境も統合した「BEA WebLogic Platform 8.1」を今年3月の「BEA eWorld 2003」カンファレンスで発表したばかり。カスタムロジックだけでなく、インテグレーションやポータルの開発も同じマナーで開発できるのが特徴だ。

 Deloitte Consultingの傘下でCRMを特に専門とするコンサルティング会社、RoundArchもWebLogic Workshopをいち早く採用する1社だ。WebLogic Portalによって、SiebelやSAPのCRMソフトウェアを統合してユーザーに見せているという。

 同コンサルティング会社でソリューションを担当するディレクター、マイク・コマディーナ氏によれば、企業は顧客に関する単一のビューを何よりも求めているという。さまざまなチャンネルで発生する顧客の取引情報を一元的に見ることができれば、迅速かつ適切な対応が可能となる。また、経済が低迷する中、経営環境の変化に素早く対処する必要があり、ITの投資効率にも厳しい目が向けられている。

「WebLogic Platform 8.1は、J2EEのコードをWebサービスでラッピングするだけでなく、メインフレームのレガシーコードやSAP R/3のようなパッケージアプリケーションも併せてラッピングでき、“サービス志向アーキテクチャ”への移行を加速させてくれる唯一のツールだ」とコマディーナ氏。もちろん、マイクロソフトが推進する.NETもWebサービス標準によって統合できる。

 サービス志向のアーキテクチャでは、ビジネスロジックとデータが共有可能なリソースとして、すべてのアプリケーションから活用できる。

 今回のJavaOneカンファレンスでは、こうした再利用可能なサービス志向のビルディングブロックであるJavaコントロールが多くのISVから発表されるという。Yahoo! Enterprise SolutionsもそうしたISVの1社。Yahoo!サイトで培ったコンテントアグリゲーションやコミュニケーションの機能を企業向けに提供している同社では、例えば、インスタントメッセージングの機能を企業が簡単にカスタムアプリケーションに組み込めるようWebLogic Workshop向けにJavaコントロールを提供する。

 ラウンドテーブルに出席した同社ディレクターのジェフ・ペディゴ氏は、「Yahoo!のデータセンターが提供するサービスを抽象化したJavaコントロールを使えば、企業はバーチカルアプリケーションにもメッセージングの機能を簡単に統合できる。ユーザーはそれがどのデータセンターで処理されているのかを気づくこともないだろう」と話す。

 同じような形態では、セールスフォースオートメーション(SFA)のASPである米salesforce.comもJavaコントロールを提供する。企業がカスタムアプリケーションを構築する際に簡単に同社のsforceと呼ばれるSFA機能を組み込めるようにするのが狙いだ。

 ホスト端末エミュレータで知られるアタッチメイトもJavaコントロールパートナーの1社として名を連ねている。「Attachmate myEXTRA! Smart Connectors」と呼ばれるJavaコントロールを使えば、レガシーコードをWebLogic Platform上でサービスとして素早く活用できるという。

 このほか、WebLogic Workshop向けにJavaコントロールを提供するのは、Blue Titan、Confluent Software、Cyclone Commerce、Documentum、およびInformaticaだ。

 なお、今年で8回を数えるJavaOneカンファレンスは、サンフランシスコのモスコーニセンターで明日10日に初日を迎える。

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[浅井英二,ITmedia]