エンタープライズ:ニュース 2003/06/12 07:21:00 更新


基調講演:ベールを脱ぐ「Project Rave」、Javaデベロッパーを1000万人へ

2日目を迎えたJavaOneカンファレンスで、Sunの開発ツール、「Project Rave」がベールを脱いだ。J2EEの専門知識を持たないコーポレートデベロッパーを対象にした同ツールは、Javaデベロッパーのすそ野を拡大し、1000万人に引き上げる役割を担っている。

 カリフォルニア州サンフランシスコで開催中の「2003 JavaOne Conference in San Francisco」は米国6月11日、2日目を迎えた。初日と同様、早朝から基調講演が行われ、「JavaOne最大の目玉」とジョナサン・シュワルツ執行副社長が言う開発ツール。ヨProject Rave」◆が披露された。

 Sunでデベロッパープラットフォームを担当するリッチ・グリーン副社長は、会場の最前列に座るJavaの生みの親、ジェームズ・ゴスリング氏に敬意を表し、「Javaは素晴らしい発明」としながらも、現在300万人といわれるJavaデベロッパーのすそ野を拡大し、1000万人に引き上げるために、スクリプティングのサポートやProject Raveのようなドラッグ&ドロップで簡単にアプリケーションを開発できるツールが必要だと話す。

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かつてはJavaソフトウェア開発を担当したグリーン氏


 Javaは技術者たちのコミュニティーによって標準がつくられてきた。グリーン氏は、彼らを「リーディングテクノロジスト」として、その役割を高く評価している。スクリプティングのサポートは現在、JCP(Java Community Process)のエキスパートグループ(JSR-223)で討議されている。Apache Software FoundationのPHPやECMAScript、あるいはActive Server Pagesといったスクリプト言語がダイナミックなWebページの作成のために広く使われているが、JSR-223ではこれらからJavaクラスを呼び出す標準メカニズムを策定していくという。

 グリーン氏が壇上に引き上げたO'Reilly and Associatesのティム・オライリー創設者兼CEOは、「スクリプトは何をしてほしいのかコンピュータに伝える最も簡単な手段。バリアを引き下げるのに極めて重要だ」と話した。

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出版やセミナーで影響力を持つオライリー氏


 O'Reillyは、Sunが昨日、開設を発表した「java.net」サイトで「Java Today」というデイリーニュースも提供していくことになっている。「java.netは、サンのコミュニティーのパワーをさらに拡大していくものだ」ともオライリー氏は話す。

 グリーン氏は、J2EEに精通し、エンタープライズクラスのアプリケーションを構築するデベロッパーらを「エンタープライズアーキテクト」と呼び、引き続きその機能拡充を約束する。JavaOneカンファレンス参加者の大半は、J2EEのエンタープライズアーキテクトか、Javaコミュニティーを牽引するテクノロジストだからだ。

 しかし、グリーン氏は、Javaがこれから働き掛けるべき最大のセグメントは「コーポレートデベロッパー」だとする。

 グリーン氏によれば、将来のJ2SE 1.5は彼らに的を絞って機能強化が図られているという。また、開発ツールの分野でも、サーバサイドアプリケーションのGUIを簡単に作成できる仕様、「JavaServer Faces」がJSR-127として提出され、討議されている。初日の基調講演では、OracleがこのJavaServer Facesの機能を取り込んだ次期JDeveloperをスニークプレビューしたが、いよいよこの日、Sun自身のProject Raveがベールを脱いだ。

インスタントプログラミング

 ステージのデモでは、MacromediaのDreamweaverで作成したHTMLページにコントロールをドラッグ&ドロップすることでサーバサイドアプリケーションのGUIをいとも簡単に開発していった。データベース接続の機能やSQL文をビジュアルに編集する機能も備えている。また、WebサービスでラッピングされたJ2EEアプリケーションを組み合わせていくことができ、「インスタントJ2EEプログラミング」(グリーン氏)も可能だ。

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Project Raveのビジュアル開発インタフェース


 データベースから旅行の予約情報を引き出して表示するデモでは不幸にもエラーが発生したが、それが逆にProject Raveによる開発の手早さを印象付けた。あっと言う間にすべての作業をもう一度やり直し、デベロッパーらから喝采を浴びた。

 グリーン氏によれば、Project Raveによって生成されるコードは、100% Pure Javaであり、どのWebアプリケーションサーバでも動作するし、どの開発ツールからでもインポートできるという。

「部門が作成したコードにエンタープライズのITスタッフがよりリッチな機能を追加することもできる」とグリーン氏。

 Project Raveのアーリーアクセス版は今年秋にも登場する。

 Sunでは、モバイルデバイス向けアプリケーションのGUIを簡単に開発するツール、「Project Relator」も開発中だ。Adobe Illustratorで描いたPDA向けのユーザーインタフェースをProject Relator上でドラッグ&ドロップで配置し、そのデータ表示領域とWebサービスとしてラッピングされたJavaアプリケーションの機能をマウスで結びつけてやるだけで済む。

 ステージのデモでは、Project Raveで作成したアプリケーションにPDAや携帯電話からアクセスして、旅行の予約情報を表示してみせた。

 Project Relatorのアーリーアクセス版は2004年初めのリリースが予定されている。

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PDA向けアプリケーション開発も簡単に


 なお、JavaOneのプラチナスポンサーを務めるSAPは、今年1月に発表した「NetWeaver」をデモした。同社が「Javaビジネスプラットフォーム」と呼ぶNetweaverは、従来からある同社の4GLであるABAPと並んでJ2EEをプラットフォームとして採用している。その上にプロセス、インフォメーション、そして人を統合するためのレイヤを重ね、OSやデータベースの抽象化やモデルドリブンのユーザーインタフェース開発など、SAPが培った技術をJavaの世界に持ち込んでいる。

 同社のエグゼクティブボードメンバーであるシャイ・アガシ氏は、「NetWeaverを使えば、SAPの2万社の顧客企業がビジネスの対象となる」と、そのビジネスチャンスの大きさをアピールした。

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[浅井英二,ITmedia]