エンタープライズ:ニュース 2003/07/10 21:34:00 更新


エリソン氏、「未来の買収」を語り「犬論争」で返礼

アナリストミーティングで買収戦略の説明に当たったOracleの幹部らは、「本来は友好的買収を望んでいる」と強調。だがメディアを介したエリソン氏とPeopleSoft CEOの舌戦は一段と激しさを増しているようだ。(IDG)

 Oracleの幹部らは7月9日、PeopleSoft以外の企業にも買収を仕掛けていく可能性があると繰り返した。また自社を「全体として友好的な会社」と呼ぶ一方で、PeopleSoftとの中傷合戦を続けている。

 米カリフォルニア州レッドウッドショアーズのOracle本社で開かれた金融アナリスト向け説明会で、同社会長兼CEOのラリー・エリソン氏は、「当社はほとんどすべての買収に興味がある」と語った。

 ただしそれは価格が適正で、それら「ほとんどすべて」に排他性があるならばという条件付きだという。Oracleに、AribaやCommerceOneなどのオンラインマーケットプレースベンダーを買収する気はない。一方、Legato Systemsの買収は考えたことはあるが、Legatoがストレージ管理ソフトウェアの市場でVeritas Softwareを追い抜くことはできないだろうと考え、買収提案をしなかったのだとエリソン氏。

 データストレージベンダーのEMCは8日、13億ドル相当の株式交換でLegatoを買収する計画を発表している。

 Oracleがどこを標的にするか、そのヒントを与えたのはサフラ・キャッツとチャック・フィリップスの両副社長。両氏はエリソン氏に先だってアナリストの前で話をした。フィリップス氏は2週間前、OracleがPeopleSoft以外の会社にも買収を仕掛ける可能性をほのめかしている。

 キャッツ氏は、Oracleはデータベース事業面では、ユーザーのコスト削減につながり、一つのデータベースにより多くの情報を集めるという同社の戦略にフィットする技術に興味があると述べた。アプリケーションサイドでは、医療や小売りなどの垂直市場により深く侵攻することを望んでいるという。

 フィリップス氏は、Oracleが参入を希望する新市場が存在していると語ったが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。フィリップス氏は長年、ウォール街でエンタープライズソフトウェア企業対象のアナリストを務め、最近Oracleに引き抜かれた。OracleのPeopleSoft買収提案を後押ししている人物の1人と見られている。

 「われわれは巨額の現金を生み出し、自社株買い戻しのためにその現金を使ってきたが、その金を買収に使うこともできたろう」とエリソン氏は語った。

 Oracleは、買収ターゲットが抵抗するのではなく売却に同意する、友好的な買収を望んでいるとキャッツ氏。「当社が好んでいるのは友好的取引だが、今回は、友好的な取引は望めそうになかった。当社の希望はすべての取引が友好的なものであることだ」とキャッツ氏が述べ、フィリップス氏が次のように加えた。「われわれは全体として友好的な人間だ」

 エリソン氏は、たとえ取引完了に1年かかってもPeopleSoft買収に向けた取り組みを続けることを誓い、エンタープライズソフトウェア市場が統合されていく中、PeopleSoftが生き残ることはできないと述べた。

 「状況はどんどん厳しくなっていく。彼らは企業規模が十分大きくないし競争力を保てるほど強くもない」(エリソン氏)

 Oracleは6月初旬、PeopleSoftに対する51億ドルの敵対的買収提案を行った。それはPeopleSoftがJ.D. Edwards買収計画を発表した数日後のことだった。Oracleはその後、買収提示額を総額63億ドルに引き上げている。

 エリソン、フィリップス、キャッツの3氏は金融アナリストからの質問に、ほとんどの場合、「OracleはPeopleSoft買収計画に前向きだ」という主張を繰り返したが、エリソン氏は今回も、PeopleSoftのクレイグ・コンウェイCEOがOracleの提案に防御の姿勢を採っていることを強く批判した。

 「クレイギー(コンウェイ氏)は一時期、私が彼の犬を撃ち殺そうとしていると考えていた。私は動物好きだ。もしクレイギー(とその犬)が並んで立ち、私の手元に弾丸が一つあったなら、その弾丸は犬を撃つためではない」(エリソン氏)

 エリソン氏のこの発言は、Oracleから買収提案を受けた直後のコンウェイ氏の発言への返礼と思われる。コンウェイ氏は次のように語ったとされる。「私にはまるで『君の犬を譲ってくれないか。家に連れて帰って撃ち殺すから』と言われているように思える」

 プレスを介したCEO同士のこの手の舌戦以外に、両社は法廷や宣伝活動の上でも戦いを繰り広げている。

 Oracleは、買収に成功した後、PeopleSoft製品を積極的に販売していく計画はないがアプリケーションのサポートは続ける、としている。PeopleSoftは、Oracleに買収されたらPeopleSoft製品は終わりだとし、Oracleの買収提案に猛反発している。

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[Joris Evers,IDG News Service]

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