エンタープライズ:ニュース 2003/07/17 16:08:00 更新


40年を生きた「ムーアの法則」、その終焉をゴードン・ムーア氏が予言

ムーアの法則で知られるIntel創設者の1人、ゴードン・ムーア氏がインタビューに答えて、コンピュータ業界を支配するこの法則の終焉について語る。(IDG)

 Intelは7月18日に35歳の誕生日を迎えるが、その3日前の15日、同社の従業員200人が米カリフォルニア州サンタクララのキャンパスの芝生の上に集まり、記念式典を行った。この式典では、Itanium 2プロセッサ、マレーシアの支社から寄贈された箸、Intel共同創設者のアンディー・グローブ会長が表紙におさまったTIME誌がタイムカプセルに詰められて、埋められた。

 この式典にはIntelのもう1人の創設者であるゴードン・ムーア氏も参加した。ムーア氏は同社のCEOを1975年から1987年まで務め、ムーアの法則の考案者としても知られている。この法則は、コンピュータチップのトランジスタ数は2年ごとに2倍になるというものだ。ムーア氏は自分の考えを「ムーアの法則」として呼ぶことができるまでに何年もかかったと述べているが、この法則は1965年に打ち立てられて以来、コンピュータ業界の進化をおそろしく正確に予測してきた。

 このインタビューの中でムーア氏は、同氏の有名な法則はいつまで有効なのか、IntelはMicrosoftに倣って従業員のストックオプションを廃止すべきなのか、15年後にこのタイムカプセルを掘り出したときにIntelのx86プロセッサは生き永らえているのか、といった質問に答えてくれた。

――ムーアの法則はいつまで有効なのですか?

ムーア (1965年に考案されてから)この法則を推進しているのは、物を小さく小さくしていくことですが、素材が原子そのものになったときが本当の限界でしょう。今作っているものですら量子力学的効果が出てきているのです。2世代か3世代はいまの方向性で進めることができると思います。そしたら別の道を選ばなければなりません。

 さらに大きなチップを作るのです。これまでのように息をのむようなペースではないかもしれません。2年で2倍ではなく、4年で2倍くらいのスピードでも、ほとんど先例のないレベルです。ペースは遅くなるでしょう。これは、非常に予測困難な多くの要素に依存しています。多額の投資が必要です。多額の投資は成長が鈍化している市場よりも成長している市場のほうがやりやすいのです。市場は成長を続けるとは見ていますが、これらの要素がすべて連携しているのです。

――つまり、トランジスタ数は4年ごとに2倍になるというわけですが、それはどうやって実現するのですか?

ムーア さらに大きなチップを作ることだと思います。チップが大きくなれば、より多くのトランジスタを詰め込むことができます。チャンスはそこから続いていきます。10億個のトランジスタを使う予算をエンジニアに与えて、何か役に立つものを作るように指示すれば、彼らには大きな自由が与えられたことになります。

――Microsoftは最近、従業員向けのストックオプションを廃止する決定をしました。これは一つの時代の終わりを告げるものだと思います。あなたはこれが業界が根底から変わりつつある予兆だと思いますか?

ムーア その意見には賛成できません。それはMicrosoftの問題をある程度解決するかもしれませんが、業界全体がそちらに向かうとは考えていません。

――Intelも同様の変更を行うと思いますか?

ムーア 全く同じことはしないでしょう。

――会社がある規模になったらストックオプションは無意味になるという考えは?

ムーア そうは考えません。ストックオプションと制限付き株式はトレードオフの関係にあります。一つのやり方だけでいきたくはありません。Microsoftは非常に特殊な理由のために、別のやり方でいこうと決めたのです。

――つまり、1990年代のことを振り返って、あれは一時的な流行だったね、とストックオプションのことを思い出すことはない、と。

ムーア 私の意見では、ストックオプションは非常にまずい使い方をされてきたと思います。Intelがそうであったとは思いません。そのような悪用はなくなってほしいと思います。ストックオプションは従業員にやる気を起こさせるための、とても理にかなった方法です。会社の業績に従って報酬を得るわけですから。

――x86アーキテクチャはもう25歳です。これほど長生きすると思っていましたか?

ムーア 25年ということを考えると、実に進化していますね。たくさんのものを付け加えました。コンピュータアーキテクトや研究機関が考えついた新しいことは、基本的にすべて利用しました。いくつかの歴史的負担はありましたが、それは悪いものではなかった。その歴史的負担によって、すべての歴史的アプリケーションを動かすことができたわけで、非常に重要なことです。

 x86はとてもとても長い間存在することになると考えます。いま捨て去るべきだという状況を考えるのは非常に困難です。例えば、誰かが完全にハードウェア依存型のソフトウェアを作ったとしたら、そうなるかもしれません。しかし、それでも数万ものプログラムを変換しなければなりません。そのようなことが起きるとは思えません。普通のユーザーにとって、互換性は非常に強力な資産なのです。見通せる限りの将来においては、Intelアーキテクチャは存在し続けるでしょう。

――その成功がある意味ではIntel自身のItaniumの成功を妨げているわけですが。

ムーア Itaniumは異なる市場に向けられたものです。Itaniumはレガシーソフトウェアには依存しておらず、大規模マシンに由来したアーキテクチャなのです。もしも人々が望むならばデスクトップで使われるようになるかもしれませんが、私はちょっと懐疑的です。結果が出るのを待たなくてはいけません。

――x86はいつまで続くと思います? この先25年は続きますか?

ムーア タイムカプセルを掘り出すときまでは続いていると思います。

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[Robert McMillan,IDG News Service]

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