エンタープライズ:ニュース 2003/09/13 06:48:00 更新


基調講演:ドクターDBAが語るOracle 10gのデータベース管理

OracleWorld 2003 SanFranciscoの最終日となった9月11日、基調講演に同社の「ドクターDBA」こと、ケン・ジェイコブス氏が登場した。

 OracleWorld 2003 SanFranciscoの最終日となった9月11日、基調講演に同社の「ドクターDBA」こと、ケン・ジェイコブス氏が登場、米国では日本と比較してDBA(Data Base Administrator)という職業自体が認知されていることもあってか、最後の講演にも関わらず会場には多くの来場者が訪れた。

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自他ともに呼ぶ「ドクターDBA」。データベース技術知識の柱としてOracle内でも信頼を集めている。

 同氏は、米Oracleのサーバテクノロジー部門の製品戦略担当バイスプレジデントを務める。最近では、RAC(Real Application Clusters)のリリースに関わる社内の全活動を調整するなど、同社データベース製品の技術計画責任者だ。

 冒頭、ジェイコブス氏は「マイノリティレポートという映画を見た人も多いでしょう。グリッドもあのように、どこからでも未来を予測できたらすばらしい」と切り出した。マイノリティレポートは、未来社会において、犯罪予知の能力を持つ特別な人間を中心に、彼らが予知した事件の犯罪者を警察組織が未然に逮捕するというストーリーだ。

データベース管理と予知能力

 データベース管理の領域で、「危険を回避するための予知」がキーワードになるとすれば、具体的な機能も幾つかは想像することができる。

 例えば、これまでデータベース管理者が悩まされていた問題に、SQLメモリや共有メモリ、テーブルリソースのバランスがいつの間にか崩れてしまうことなどがあった。また、運用していく上で必要になったパッチを導入するために、本番として実行中のシステムを止めなくてはならないことなども挙げられる。

 こうした数々の問題を、常に監視し、ポリシーベース管理を行いながら、パフォーマンスやセキュリティレベルを維持したり、ユーザー権限やOS、ハードウェアのバージョンをはじめとしたシステム構成を管理するのがDBAが果たす役割だ。

RACの優位性

 そして、「DBAの多くは職を失うのではないか」という懸念が出るほど、管理に人の手を掛けず、自動化できる製品として、Oracle 10gがリリースされた。システム管理の自動化というテーマは、10gだけが目指すものではなく、IBMのオートノミック・コンピューティングや、Hewllet-Packerd(HP)のUtility Data Centerなど、現在のIT業界における最大のテーマになっている。

 ただ、Oracle 10gには、RACという技術的なアドバンテージがあるのは事実。例えば、RACの特徴の1つは、複数のデータベースやストレージを仮想化して1つのプールとして利用できることであり、この機能によって、複数のデータベースにまたがるリソース管理の最適化という作業負担が劇的に軽減する可能性がある。

 同日、基調講演に登場したHPのカーリー・フィオリーナCEOも、「UDCを展開していく上でRACの技術は欠かせない」と話し、Oracleとのパートナーシップを強調している。

 この講演では、武器であるRACをベースにした、Oracle 10gの各種管理ツールのデモンストレーションにも時間が割かれた。

グリッドコントロール

 前半に紹介されたのが「Oracle Enterprise Manager 10g(OEM 10g)」のグリッドコントロール機能。これは、グリッドコンピューティング環境の始めから終わりまで、現場のユーザーレベルでシステムを監視するための製品。GUIによるインジケータが、システムの状況を管理者に継続的に報告しており、アラートに関するしきい値が基準を超えた場合は、メッセージング機能により、DBAにメールが飛ぶ。講演中に、突然ジェイコブス氏のハンドヘルドデバイスにメールが入り、「システム障害のメールです。見てみましょう」といったタイミングのいい演出も見られた。

 続いて、「Service Level Management」のデモは、請求書の支払いをスケジューリングしたシステムのレスポンスが悪くなったという想定で行われた。

 システムの問題点を報告する機能である「クリティカルパス」を見ると、すべての項目にアラートが表示されていた。そこで、グリッドコントロールの「再生機能」を使うことで、問題点がデータベースサーバと、EJB(Enterprise Java Beans)にあることが分かった。

 さらに、75を超える項目について、問題発見や対応方法の推奨を行うAutomatic Data Diagnostic Monitor(ADDM)も紹介された。これは、アプリケーションやSQL、スペース、バックアップ&リカバリ、ストレージなどについて、自動的に診断できる機能だ。

 加えて、テーブルスペースアラートや、シェアドメモリチューニングなどを自動で行う「Automatic Resource Management」、SQLの効率性を高める「Self-Manegement SQL」なども紹介されている。

 講演後行われたQ&Aセッションで、「DBAは仕事を失うことになるのか」という質問に対し、ジェイコブス氏は、「常に新しいことを学ぶことが大切。ネガティブな考えは持っていない」と話すに留まった。

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[怒賀新也,ITmedia]