エンタープライズ:ニュース 2003/09/17 08:27:00 更新


SunNetwork 2003開幕、「Sun Java System」はソフトウェア業界を揺るがすか?

「SunNetwork 2003」カンファレンスが開幕した。Sunは、ソフトウェア業界を再定義すべく、6つの「Sun Java System」を発表した。来るべきユーティリティーコンピューティングモデル実現に向けた地殻変動となるのか?

 米国時間9月16日、東海岸がハリケーン イザベルの接近に備える中、西海岸のサンフランシスコでは、Sun Microsystemsがソフトウェア業界に激震を起こそうとしている。

 この日、ダウンタウンのモスコーニセンターで開幕した「SunNetwork 2003」カンファレンスでSunは、Sun ONEサーバソフトウェアなど複雑多岐にわたる同社のソフトウェア製品群200以上を6つの「Sun Java System」に統合し、例えば、サーバ向けの「Sun Java Enterprise System」であれば、従業員一人当たり年間100ドルといった明快かつ低価格で提供することを明らかにした。これまで「Orion」のコードネームの下、SolarisとSun ONEサーバソフトウェアを四半期ごとに統合された形で提供するプロジェクトを進めてきたが、どうやらSunは同じ考え方をすべてのソフトウェア製品ラインに拡大しようとしているようだ。

pressqa.jpg

Sunの新しい顔、シュワルツ氏(左)とマクニーリーCEO


 こうした同社の一連の取り組みをSunでソフトウェア事業を統括する執行副社長のジョナサン・シュワルツ氏は、来るべきユーティリティーコンピューティングモデル実現に向けた「ソフトウェア産業の再定義」と表現する。

 昨年のSunNetworkカンファレンスでベールを脱いだ「Project Mad Hatter」も「Sun Java Desktop System」として正式発表された。今年第4四半期に出荷が予定されている同システムは、GNOMEデスクトップ環境、StarOffice 7スイート、Mozillaブラウザ、Evolutionの電子メールおよびカレンダークライアント、J2SE、そしてLinux OSから構成される。JavaCardを利用した認証システムと組み合わせることで、セキュアでウイルスに振り回されないデスクトップ環境を企業にもたらすとし、「この15年間で初めて登場したWindowsデスクトップの代替案」とSunは売り込む。

 価格もデスクトップ1台当たり年間100ドルに設定された。Sunでは、Microsoft OfficeとWindowsの組み合わせでは719ドルもかかると試算しており、Java Desktop Systemが劇的にコストを引き下げることができると主張する。折りしもMicrosoftは、Office新バージョンのリリースを開始したばかりだ。

 この100ドルには、移行のためのサービスやトレーニングも含まれているほか、Java Enterprise Systemを「従業員当たり」のモデルで導入している企業は、デスクトップ1台当たり年間100ドルではなく、従業員一人当たり年間50ドルの追加で済ませることもできるという。

顧客へのサービス提供で追加課金なし

 シュワルツ氏は「単に価格ではなくセキュリティ」と、Java Desktop Systemの優位点を強調するが、企業のトップにとって余分な代金は支払いたくないもの。しかも、これはデスクトップというよりは、旧Sun ONEサーバソフトウェア製品群をお買い得にするものだが、企業が彼らの顧客にサービスを提供しても追加のライセンス料金は課されないというから驚きだ。

 もちろん、サービスを提供する顧客が増えれば、ハードウェアに対する投資も増えるものの、Sun Java Systemを従業員当たりのモデルで導入していれば、追加は不要だ。多くのソフトウェアベンダーが適用するプロセッサ当たりのライセンスでは、こうはいかない。サーバを増強すれば、ライセンス料金もかさむからだ。

 劇的な価格引き下げだが、Sunはソフトウェア分野においてはチャレンジャーだ。基調講演後のプレス向けQ&Aセッションでシュワルツ氏は、われわれの主要顧客65社だけでも従業員数は1000万人に上るとし、100ドルを掛ければ「10億ドル」という大きな市場機会があることを強調した。

 「Sunのターゲットは全地球。どれだけの従業員がいることか……」(シュワルツ氏)

 この日の基調講演やプレス向けQ&Aで「システム」を幾度となく強調したスコット・マクニーリーCEOは、今回打ち出された積極的なソフトウェア戦略がハードウェアを含むシステム事業全体にプラスの効果をもたらすことを確信している。

 「われわれは、Sun Micro"Systems"だ」(マクニーリー氏)

 Sun Java Systemは、Java Enterprise System、Java Desktop Systemのほかに、開発ツールセットの「Java Studio Enterprise」、運用ツールの「N1」、携帯デバイス向けの「Java Mobility System」、個人認証サービス向けの「Java Card System」という合計6つ。Java Studio Enterpriseも年間5ドルという従業員当たりのモデルが用意される。

 なお、今回の発表に伴い、Sun ONE Application ServerやSun ONE Portal Serverといった名称も「Java System Application Server」や「Java System Portal Server」に変更される。

関連記事
▼基調講演:「コストと複雑さにリコール」──IT業界の未成熟さを皮肉るSunのCEO
▼基調講演:Sun Java Systemでソフトウェア産業のリセットを仕掛けるシュワルツ氏
▼SunNetwork 2003で総合主義路線を打ち出すSun
▼「Orion Developer」で開発者獲得に再度乗り出すSun
▼マイクロソフトにプレッシャーをかけるOrionの価格
▼SunNetwork 2003 Report

[浅井英二,ITmedia]