エンタープライズ:ニュース 2003/09/17 12:03:00 更新


基調講演:「コストと複雑さにリコール」──IT業界の未成熟さを皮肉るSunのCEO

SunNetwork 2003が開幕した。オープニングの基調講演には、マクニーリーCEOが登場し、恒例の「トップ10リスト」でIT業界の未成熟さを痛烈に皮肉った。

 米国時間9月16日、「SunNetwork 2003」カンファレンスが開幕した。昨年、7年ぶりのプライベートカンファレンスとして新たにスタートしたSunNetworkは、8500人の顧客やパートナーらを集め、18日までの3日間で約200のセッションを行う。オンラインを含んだ参加者数ということで、会場となったカリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニセンターはJavaOneカンファレンスのような喧騒はないものの、コストを引き下げ、複雑性を排除すべくデザインされた「Sun Java System」が鮮烈なデビューを飾った。

 オープニングの基調講演には、Sunの共同創設者であり、現在は会長と社長を兼任するスコット・マクニーリーCEOが登場し、恒例の「トップ10リスト」でIT業界の現状を皮肉った。

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「今のIT業界はクレージーだ」とマクニーリー氏


 「ベンダーやコンサルタントの方が顧客である自分よりも、ずっと大きなクルマに乗っている……」とマクニーリー氏。彼がネタの書かれたカードを一つひとつ読み上げては投げ捨てると、会場の聴衆は大笑いしたり、身につまされたり……。この日のお題は、「ITのコストと複雑性がクレージーな理由 トップ10」だ。カリフォルニア州がリコールによる知事選挙の最中だということに引っ掛け、ステージのスクリーンには「Recall Cost & Complexity」(コストと複雑性をリコール)の文字が大きく映し出されている。

 マクニーリー氏は、.NETに対するJavaの地滑り的な勝利を「人類の勝利」と称えるが、Sunの株価はドットコムバブル消失に伴い、大幅に下落したまま。6月には5ドル台を回復したものの、再び4ドルを挟んで行ったり来たり。戦略に誤りはないとの確信を持ちながらも、「多くの時間を顧客らが何を求めているのかを聞くために充てている」と彼は明かす。

 「CEOはTCOを削減したいと考え、CIOはコストと複雑性という問題に取り組んでいる。しかも、セキュリティと可用性は高めたいのだ」(マクニーリー氏)

 こうした声にこたえるべく、彼がしばしば話すのが「リファレンスアーキテクチャ」だ。

 「Sunがわれわれとパートナーのパーツを組み合わせ、動作を検証し、認証されたシステムとして顧客に納入する。パートナーらと共同開発したリファレンスアーキテクチャを活用することで、極めて短期間で運用を始められる」とマクニーリー氏。

 しばしば彼は、成熟した自動車産業や航空機産業を引き合いに出し、IT業界の異常ともいえる未成熟さを印象づける。

 「いまどきのクルマは、利用者がボンネットを空けて、いちいち調整しなくとも何万マイルも問題なく走ってくれる」(マクニーリー氏)

 「株価に影響を与えるような将来の予測は一切しない」といつも不機嫌そうに話す彼だが、IT業界が成熟していく過程についての見通しは示す。彼によれば、IT業界は「自分ですべてつくる」から始まったが、「IBM Global Servicesに頼む」、あるいは「Sunのリファレンスアーキテクチャを活用する」という段階を経て、「サービスプロバイダーを利用する」という成熟の域に達するというのだ。ライバルであるIBMを前近代的な範疇に入れ、いわゆるユーティリティーコンピューティングのモデルに到達する過渡期として自らのリファレンスアーキテクチャを位置付ける。

 「もはや自分だけの飛行機をつくる時代ではない。(IBM Global Servicesに頼むように)自分専用の飛行機のためにメカニックを頼む時代でもない。飛行機は買って、自分の好きな色に塗ればいい」とマクニーリー氏。

 もちろん、彼は「コモディティ」という言葉を嫌う。Dellのマイケル・デルCEOが先週のOracleWorld 2003 San Franciscoで、「業界はR&Dにお金を使い過ぎだ」と発言したことに対し、「われわれは全く違う考えだ」と反発する。

 「新しいコカコーラが売れなければ“クラシック”を出せばいいというわけじゃない。コモディティではないのだ」(マクニーリー氏)

 Sunは、ハードウェアとOSというかつてのシステムから脱皮し、それらにSun Java System(旧Sun ONE)、N1という2つの種類のレイヤを重ね、デベロッパーや運用管理者から見た複雑性を隠そうと試みている。しかし、その内側では絶えず革新的で高度なコンポーネントを開発し、新たな機能を提供するシステムとして顧客に提供しようとしている。例えば、エンジンをさらに高性能なものに改良すべく、同社は「スループットコンピューティング」に取り組んでいる。

 「ITはSunが担い、顧客らは情報管理(IM:Infomation Management)にフォーカスすればいい。われわれがあなたのためにシステムを構築する。これは政教分離のようなものだ」とマクニーリー氏は自らの哲学を聴衆に訴えた。

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[浅井英二,ITmedia]