エンタープライズ:レビュー | 2003/09/29 09:00:00 更新 |
レビュー:IEEE802.11a/b/g デュアルバンド無線LANアクセスポイント「LD-WLS54AG/AP」
IEEE802.11g対応機器が多数登場する中、従来までの周波数帯もカバーするデュアルバンドタイプも人気だ。エレコムの無線LANアクセスポイント「LD-WLS54AG/AP」は、SNMP、PoE対応など付加機能が充実する製品。
エレコムの「LD-WLS54AG/AP」は、IEEE802.11a/b/gの3規格が利用できる無線LANアクセスポイントだ。オフィスでの利用を前提とした、SNMPによるモニタリングや802.1x認証など多彩な管理機能を持つ。なお、製品仕様は最後にまとめた。
2003年9月現在、2.4GHz帯(IEEE802.11b/g)と5.2GHz帯(IEEE802.11a)の両方に対応する無線LANアクセスポイントは、新製品が続々と登場している。しかし、どちらかの周波数帯のみが利用できるタイプの物も依然と多い。このような中、LD-WLS54AG/APは1台で複数の周波数帯をカバーできるほか、異なる規格のクライアント間の橋渡し役としても注目される。
本体周りの外観はシンプル
本機はアクセスポイント機能だけを持つ製品であり、シンプルな構造になっている。裏側にはイーサネットコネクタ、リセットボタン、DCコネクタ、そしてアンテナコネクタが2つ。アンテナは、下写真向かって左側が5.2GHz帯、右側が2.4GHz帯と対応されている。
初期出荷状態のまま本格使用してはならない
筆者が評価を始めて最初に気になった点は、アクセスポイントの初期設定だった。まず最初に有線ネットワークに接続しない状態で電源をオンにし、アクセスポイントを起動する。しばらく電源LEDが点滅して1分も待たないうちに常時点灯となり起動完了となる。
早速クライアントPCからアクセスポイントを検索してみたところ、ESSID「Laneed54a」「Laneed54g」が見つかった。文字列の内容から、前者が5.2GHz帯(IEEE802.11a)、後者が2.4GHz帯(IEEE802.11g/b)のESSIDであることが分かる。
初期設定では、両方とも、WEPなどのセキュリティ設定はいっさいオフの状態であり、誰でもアクセスポイントに接続できてしまう。このため、初期設定のままでも、無線LAN側から有線の192.168.1.0/24にアクセスできる。アクセスポイントの設定を行いやすいようあえてセキュリティが甘い設定にしてあるのだと思われるが、企業ユーザ向けのモデルとしては、もう少し気を利かせてほしいところだ。初期状態では無線LAN側がオフになっているか、もしくはESSIDやWEPキーにシリアルナンバーなどが含まれているだけでも、随分と安全になるはずである。
設定の変更は、一般的なHTTPベースのインタフェースから行う。初期設定では、本機のIPアドレスは192.168.1.240に設定されているので、「http://192.168.1.240/」にアクセスすると、ログイン画面が表示された。この画面では、管理者モードとしてログインする場合のユーザ名が「admin」となっており、また初期設定ではパスワード設定されていないことも分かる。管理ページにログインしたら、まずは管理者パスワードを設定する必要があった。
通信パフォーマンスは並、ただし指向性の強いアンテナに注意
ひと通りの設定を行ったところで、アクセスポイントから約1メートルの場所にノートPCを置き、有線ネットワーク上のFTPサーバとファイルを転送してスループットを測定した。なお、この計測はWEP(64ビット)を有効化した状態で行ったものだ。
計測の結果、2.4MHz帯(IEEE802.11g)では平均19.1Mbpsで、繰り返し試験したものの今回のテストで20Mbpsに達することはなかった。これに対し、5.2MHz帯(IEEE802.11a)では平均21.6Mbpsを記録した。ところで、テスト開始直後は2.4MHz帯で13Mbps、5.2GHz帯で11Mbpsと結果がふるわず、しばらく悩んでしまった。いろいろと条件を変えて試していると、アクセスポイントのアンテナロッドの状態(向き、角度)が転送速度に著しく影響していることが分かり、いろいろと試してみた結果が上記のものである。このため、アンテナの向きには注意すべきであり、ベストポジションにさえセットできれば、十分なスループットが実現できることも分かった。
本体へは電源ケーブルレスのPower over Ethernet対応
本機はPoE(Power over Ethernet)に対応しており、イーサネットケーブルで電力供給ができる。無線LANアクセスポイントという性質上、壁掛けや天井付近に設置されるケースも多いだろう。しかし、電源ケーブルを本体まで引き回わすのは意外と大変であり、また、どうしても目障りになりがちだ。PoEによって配線をイーサネットケーブル1本で済ませられる点は、便利だろう。
PoEで電源を供給する場合は、付属のPoEユニットを使用する。PoEユニットはひと口おにぎり程度の大きさであり、RJ45コネクタが2つとDCコネクタが1つ付いている。PoEの利用方法は容易だ。「DATA IN」コネクタをスイッチやハブと接続し、「P+ DATA OUT」コネクタはアクセスポイント本体と接続すればよい。
IEEE802.1xによる認証使用
本機はIEEE802.1xによる認証に対応している。認証方式としてはMD5チャレンジのほか、RADIUSサーバを使用した認証が可能だ。
ところで、本機のみでIEEE802.1x認証を行う場合は、MD5の方式は、MD5チャレンジしか使用できない。また、仕様上は最大128のユーザ情報を登録できるが、Webインタフェースが扱いにくく大変だろう。IEEE802.1x認証の設定もMACアドレスフィルタリング設定と同様に、CSV形式からインポートできるとよかったのではないだろうか。また、本格的なIEEE802.1x認証を行いたい場合には、別途RADIUSサーバを用意する必要があるだろう。
結論からいえば、よくまとめられている無線LANアクセスポイント製品であると感じた。性能的にも、条件によっては20Mbpsを超える速度が実現でき、十分だといえるだろう。ただし不満を挙げるとすれば、全体的に設定用Webページが荒削りであるように思える。ある程度の知識を持つユーザー向けと感じる。これは今後に期待をしたい。
また、本機が抱えるもうひとつの問題点は、やはりイニシャルコストだろう。本機は高機能なゆえ価格が高めとなっている。単に2.4GHz帯と5.2GHz帯の両方のアクセスポイントがほしいのであれば、廉価なアクセスポイントを2台並べたほうがコスト的に安くなってしまう。最近ではIEEE802.11a/b/gを同時に使いたい個人ユーザーが多くなりつつあるのではないだろうか。SNMPやIEEE802.1x認証の代わりに、ルータ機能、ファイアウォール機能を搭載して価格を抑えられれば、個人ユーザにも魅力的な製品になるだろう。本製品を検討する際には、付加機能に価値を見い出す必要がある。
■製品仕様一覧
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[長谷川 猛,ITmedia]