エンタープライズ:ケーススタディ 2003/10/06 20:26:00 更新


少人数の組織管理に根強い人気の弥生シリーズ

50人程度の組織において、給与の管理や会計の処理を体系化したい、担当者の作業を楽にしてコストもかけたくないといったニーズを持つ企業にとって、比較的安価な業務パッケージも選択肢として視野に入ることになる。

 いわゆるERPと言った場合、ほとんどは多数の従業員が利用する大企業向けの話になる。しかし、全事業所の99%を中小企業が占める日本には、必ずしも「ハイエンド」のアプリケーションは必要ないケースも多い。

 50人程度の組織において、給与の管理や会計の処理を体系化したい、担当者の作業を楽にし、さらにはあまりコストをかけたくないといったニーズを持つ企業は少なくない。そこでは、箱を買ってすぐに導入するタイプの比較的安価な業務アプリケーションも、十分に選択肢として視野に入ることになる。

 例えば、中堅の旅館やホテルなども、そうしたニーズを持つことが多い。札幌から西に30分ほど、支笏湖畔に立つ丸駒温泉旅館も、弥生会計の以前からのユーザーだ。現在は会計のほか、メイドを中心とする70人ほどの従業員の給与管理に同シリーズを利用している。また、今後は販売管理も同シリーズで行っていく計画としている。

 弥生は、今年の春に米Intuitから分離独立し、現在の社名になっている。主な製品ラインは、「弥生会計」「弥生販売」「弥生給与」の各シリーズ。

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システム管理を1人でやっているという高畠氏(左)と佐々木氏

 丸駒は大正4年に創業した老舗の温泉旅館。開拓からそれほど歴史のない北海道で、90年近い歴史がある旅館は少ないという。

 同旅館のシステム管理を行う高畠珠紀氏は、「以前は従業員の給与管理や勤怠管理をすべて手作業で行っていたため時間がかかっていた」と話す。現在、給与明細の発行や振替伝票や会議資料の作成、タイムレコーダーなども、弥生給与で行っている。今後は販売管理にも拡張していきたいという。

 販売管理に拡張する上では、おみやげ屋関連の業者やカード会社、旅行会社など、利害関係者が多く存在しており、うまく管理するためにうまくデータを設計することが課題になるという。

 「複雑だった作業の多くが自動化され、使い勝手もいい」と言う高畠氏。データの2重打ちをしなくて済むようになったことが、担当者レベルでの最も大きな効果という。その結果、以前は決算期には、締めに丸1カ月かかっていた作業が、5〜6日で行えるようになった。最終的に、会計と給与のほか販売管理のシステムが稼動し、3つが相互に連携した場合、預かり金や給与などそれぞれのシステムが吐き出す情報が自動的に吸い上げられるため、2重打ちがさらに減り、決算処理もさらに早くできる。高畠氏によると「担当の会計士も弥生を使えるとさらに楽」という。

 一方、同旅館の専務取締役総支配人の佐々木義朗氏は、「帳票が見やすい。今後はソフトが算出するデータをもっと経営判断に生かしたい」と話す。対前年とのデータ比較などが可能になることで、パートの採用人数などを調整し、従業員の比率を最適化させることもできるという。

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丸駒旅館が利用する弥生会計のクイックナビゲータ。

 ただし、旅館ビジネスの特性上、忙しさは宿泊客の数によるところが大きいため、ソフト側の決まった要件に「ビジネスを合わせる」ことには限界もあるとしている。

 また、例外処理の作業も残している。メイドの勤務体系は、遅番や早番など、1つの部門でも10通り以上あり、弥生側ですべての組み合わせに対応することはできない。メイドの時給は昼と夜で異なるが、ソフトは昼の分しか計算しないため、夜の分は手作業で対応しており、高畠氏はこれを今後ソフトウェア側に要望するポイントとして挙げている。

 佐々木氏は、業務処理などの作業をコンピュータに行わせること自体については、必ずしも手離しでは賛成していないという。これは、もしPCのトラブルやソフトウェアにバグが発見された場合に、手作業で対応できる従業員がいなくなってしまうことを懸念しているからだ。1989年に導入された消費税に対応したときのことを一例として挙げながら、「手作業でも対応できる状況を作ってからソフトを導入したので安心している」とした。

 導入にかかった費用は、計5クライアントのライセンス費用を合わせて全体で200万円程度。Windows 2000ベースの一般的なデスクトップパソコンで運用している。

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支笏湖。周辺の土地は全て国有財産となっており、ゴミを捨てても何かを植えても罰せられるという。湖水は透明度が高く、湖底から温泉が沸いているため、真冬でも凍らない。周囲にはきつね、たぬき、蝦夷鹿が見られるという。

関連リンク
▼弥生
▼丸駒旅館

[怒賀新也,ITmedia]