エンタープライズ:ニュース 2003/10/13 19:12:00 更新


Telecom World 2003開催――「失われた4年間」か、それとも……

10月11日から18日にかけて、スイス・ジュネーブにて、通信業界のオリンピックと称される世界最大規模のカンファレンス「Telecom World 2003」が開催されている。

 たった4年のうちにこれほど激変し、極端な浮き沈みを経験した市場は、通信業界のほかにはまずないだろう。10月11日、その通信業界のオリンピックと称される、世界最大規模のカンファレンス「Telecom World 2003」(TELECOM 2003)が開幕した。ITU(国際電気通信連合)の主催で、スイス・ジュネーブのPal Expoを会場に10月18日まで開催される。

 Telecom Worldは、4年に1度開催される通信業界のカンファレンスだ。伝統的なキャリアや携帯電話事業者といった通信事業者はもちろん、それら事業者に機器を提供するベンダー、ハード、ソフト双方に渡るコンピュータ/IT関連企業のトップが集まるフォーラムでは、技術やポリシー、ビジネスなど多岐にわたるテーマの下、講演やパネルディスカッションが行われる。また世界50カ国以上の国・地域から915社が参加しての展示も行われる。

 この展示会場では、無線通信機器や第3世代携帯電話、音声統合、家電も含めたユビキタスネットワークなど、さまざまな最新の技術が披露されている。ただ、前回のTelecom 99が1200の出展社、20万人以上の来場者を集めたのに比べると、やや寂しさを感じるのは否めない。ぱっと出展社リストを眺めただけでも、幾つか重要なプレイヤーが欠けていることに気付く。改めて、過熱の果ての通信バブル崩壊がもたらした影響の大きさを思い知らされる。

 それでも、4年前の環境がいったいどんな風だったかを思い起こせば、技術の進展ぶりには目を見張るばかりだ。

 当時はダイヤルアップによるインターネット接続は珍しくもなく、国内でようやくADSLの萌芽が見え始めた段階だった。無線LANも、技術としては存在したものの、低速なうえに機器が高額なことから普及にはほど遠い状態。携帯電話はさすがに徐々に普及していたが、そのころの画面はモノクロが主流。携帯電話に対する期待は膨らみつつあったものの、画像や動画の送受信などはプレゼンテーションの中の世界にしか存在しなかった。

 あの当時、青写真として語られていた事柄が、今ではどんどん現実のものになっている。無論、一部には外れた予想もあるのだが。

 4年前、通信業界に注がれていた期待はあまりにも大きかった。それが過剰な期待だったことは、投資の果てにバブルがはじけ、いくつかの企業が厳しいリストラを余儀なくされた結果が示している。しかし、通信といううものの役割の重要性については、異議はないはずだ。

 またTelecom Worldは、こうした技術のデモンストレーションだけでなく、通信業界が全体としてどうった方向を目指すべきか、技術的な観点だけでなく政治やビジネス、時には倫理的な観点から議論し、大まかなコンセンサスを得ようとするところにも意味があるイベントだ。いまや必須のツールとなりつつある「通信」「コミュニケーション」がどこへ向かうのか、厳しい状況を経た今だからこそ、改めて業界の役割が問われることになりそうだ。

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▼ITU Telecom World 2003レポート

関連リンク
▼ITU Telecom World 2003

[高橋睦美,ITmedia]