エンタープライズ:ニュース 2003/10/15 16:56:00 更新


100Mbps超の世界を目指す無線LAN、東芝が次世代システムを展示

東芝はTelecom World 2003の展示会場で、802.11nとして策定作業が進む、100Mbps以上のスループットを実現する次世代無線LAN技術を紹介した。

 IEEE802.16に基づく無線MAN技術の実現に向けた取り組みが進む一方、無線LANの分野でもさらなる高速化を目指しており、今まさに、次世代無線LAN技術の開発が行われている。東芝はTelecom World 2003の展示会場で、802.11nとして策定作業が進む次世代無線LAN技術のデモンストレーションを行った。

 この技術は、イギリス・ブリストルに置かれた同社テレコミュニケーションズ・リサーチ・ラボラトリ(TRL)で開発が進められているものだ。現在の無線LANのように1本のアンテナでデータを送受信する代わりに、送信側、受信側ともに複数のアンテナを用意することによって伝送速度を高める「MIMO(Multipul-Input and Multipul-Output)」と呼ばれる仕組みをPHYおよびMAC層の両方で採用している。それも、単に複数のアンテナで送受信するだけでなく、状況に応じて適切な周波数帯を選ぶことが可能な「アダプティブ MIMO」を実現する点が特徴だ。

アンテナ

いかにもプロトタイプといった趣のアンテナ


 今回の展示では、送信側、受信側ともに1本だけでなく2本ずつアンテナを用意して通信を行う模様が紹介された。ソフトウェアで実装されたシミュレータでは6本ずつでの送受信が可能といいい、その場合、現行の802.11aに比べ4倍高速な216Mbpsのスループットが可能だ。MPEG-2の画像など、さまざまなマルチメディアファイルの送受信にも十分なレベルという。今回の展示はあくまでプロトタイプだが、実効スループットでも100Mbps超を目指す。

説明

100Mbps超の次世代無線LAN環境では、動画の送受信も容易という


 同社はこの次世代無線LANのメリットとして、802.11a/gと同じ周波数帯を利用しながら、MIMOの採用により電波の干渉・規制をかいくぐってパフォーマンスを向上できることに加え、消費電力が少ないことなどを挙げている。またUWB(Ultrawideband)と比較すると通信範囲に大きな差があり、UWBが10メートル程度の範囲を想定しているのに対し、次世代無線LANでは最大100メートルの距離でも通信が可能になるという。

 同社は「今回の展示はまだまだラボレベルのもの」とし、今後も引き続き研究開発を進める計画という。具体的には、ギガビットクラスのスループットを目指してさらなる高速化に取り組むほか、接続にまつわる複雑さを減らし、ハードウェアの簡素化を進める。また、実際の利用シーンを想定して、機器の自動検出や環境に応じた動的なスループットの最適化、アプリケーションに応じたセキュリティ機能の実現などに取り組むということだ。

 IEEE802.11nのタスクグループでは次世代無線LANの要件として、既存の無線LAN仕様との互換性を保ちながら、100Mbps超のスループットを求めている。東芝では、この仕様策定作業にも積極的に参加しているということだ。また、次世代無線LAN開発に関してブリストル大学と連携し、測定・評価システムやシミュレータを共同で開発しているという。

関連記事
▼ITU Telecom World 2003レポート

関連リンク
▼ITU Telecom World 2003
▼東芝

[高橋睦美,ITmedia]