インタビュー
2003/11/04 04:16 更新


Interview:64ビットを知りつくしたビジュアルテクノロジーに聞くOpteron搭載システム (1/2)

64ビットプロセッサシステムを多く手がけたハードウェアベンダーであるビジュアルテクノロジーに、AMDのOpteronを搭載した新製品の特長を聞いた。

 ビジュアルテクノロジーは、Alpha、Opteron、POWER4、Itanium 2と、数々の64ビットプロセッサ搭載システムを手がける“64ビットを知りつくした”ハードウェアベンダーである。今回は、Opteronを搭載したワークステーションとサーバ製品の特長、同社の得意とする科学技術計算分野での利点などについて、技術本部 副本部長の舟窪辰也氏とマーケティング部 部長の小林信久氏にお話を伺った。また、アスキーの設立者・元社長として知られる技術本部長の西和彦氏にもご同席いただいた。

高性能、静粛動作、低コストを兼ね備えたVT64 Opteronシリーズ

 現在、ビジュアルテクノロジーが発売しているOpteron搭載システムには、タワー型筐体のワークステーション「VT64 Opteron Workstation」、2Uラックマウント型のサーバ「VT64 Opteron Server」とこれを大型の38Uラックにフル搭載したクラスタシステム「VT System 76」、省スペースと静粛性を兼ね備えたクラスタシステム「VT Hyper Office Series」などがある。

 「VT64 Opteron Workstation(以下、VT64-OW)には、Opteronを1個搭載したVT64-OW 1000と2個搭載したVT64-OW 2000があります。年内にはOpteronを4個搭載したVT64-OW 4000も発表予定です。現行製品は、グラフィックスがATI RageXL 8Mバイトのオンボード搭載のみですが、近い将来にはAGPスロットを装備した新しいマザーボードを採用した製品がラインナップされます。AGPスロットが装備されれば、高性能なグラフィックスカードも装着できますので、科学技術計算分野だけでなく、CAD、CAM、CG向けの高性能グラフィックスワークステーションとしてもお使いいただけるようになります(小林氏)」

 「VT64 Opteron Server(以下、VT64-OS)には、Opteronを2個搭載したVT64-OS 2000と4個搭載したVT64-OS 2000X2があります。多くのラックマウントサーバは、1Uの高さでマザーボードを1枚、その上にCPUを1〜2個搭載というパターンが一般的ですが、VT64-OSは高さを2Uとする代わりにマザーボードを2枚内蔵できるようにしてあります。こうすることで、単位体積あたりのCPU密度を1Uタイプと同等にできます(小林氏)」。

小林信久氏

マーケティング部 部長の小林信久氏


 「2Uを採用した理由は、静粛性と低コストを両立するためです。1Uにすると口径の小さな冷却ファンを使用しなければならず、動作音が大きくなってしまいます。これを2Uにすれば、口径の大きな冷却ファンを利用できますので、十分な冷却性能を確保しながら静粛性も追求できます。また、1U向けの特殊なパーツを使用しないで済むため、コストも同時に抑えられます。off-the-shelf componentを組み合わせて、いかに効率よくモノを作るかが重要なのです(舟窪氏)」

省スペース、静粛性を追求したVT Hyper Office Series

 VT Hyper Office Seriesは、HPC(High Performance Computing)分野での使用環境を考慮し、研究室、実験室、講義室などに設置しても違和感のない、新しいタイプのクラスタシステムだ。舟窪氏は、VT Hyper Office Seriesを開発するに至った背景を次のように説明する。

 「通常、クラスタ構成をとるには、ラックマウント型のサーバを複数配備することになりますが、ラックマウント型は台数が増えてくると場所をとりますし、動作音もかなり大きくなります。しかし、お客様の中には研究室や実験室でも手軽にクラスタシステムを使用したいというご要望が多く、このたび省スペースかつ静粛なクラスタシステムを開発することになりました」

 VT Hyper Office Seriesには、最大38ノード(38CPU)を搭載可能なFile Cabinet Server Modelと、机の下に収納できる省スペースのDesk Cabinet Server Modelがある。Desk Cabinet Server Modelは、1CPU搭載の1Uサイズ・ノードを8台内蔵できるタイプと2CPU搭載の2Uサイズ・ノードを4台内蔵できるタイプが用意されているが、いずれもCPUの搭載数は最大8個ということになる。ここで注目したいのは、やはり研究室の予算でも購入可能なDesk Cabinet Server Modelである。小林氏は、Desk Cabinet Server Modelの特長を次のように付け加える。

 「Desk Cabinet Server Modelは、机の下に収納できるコンパクトサイズでありながら、8ノードものクラスタ構成を実現しています。CPUにはOpteron 246/2GHzまで搭載できますので、計算速度が命となる科学技術計算に最適です。冷却機構には、空気の流量が多く、動作音も静粛なクロスフローファンを採用しています。ノード自体には冷却機構を設けず、キャビネット全体で共通のクロスフローファンを利用する形となります。本体下の面(床側)から吸気を行い、本体前面のクロスフローファンで排気を行いますので、キャビネット本体の背面や両側面を壁にピッタリ付けて配置できるのが大きな特長です」

Opteronはコストパフォーマンスに優れた64ビットの新しいラインナップ

 これまで数々の64ビットプロセッサを手がけてきたビジュアルテクノロジーがOpteronを採用しない理由は考えられないが、念のためOpteronを採用するまでの経緯をもう少し詳しくお聞きした。

 「いわゆるパソコンの分野では“64ビットなんて本当に使うのか?”という意見も多いのですが、弊社のお客様はすでに64ビットが当たり前という方がかなり多くいらっしゃいます。例えば、32ビットでは1プロセスあたり2Gバイトのメモリしか使用できませんが、64ビットならばその辺の制限が一気に取り払われます。大規模な科学技術計算を日々手がけているお客様にとって、もはや64ビット以外は考えられないのです(舟窪氏)」。

 「弊社は、旧DEC(米Digital Equipment Corp.)のAlphaという64ビットプロセッサを1万5000個も販売してきました。DECは米Compaq Computerに吸収され、Compaq Computerは米HP(Hewlette-Packard)と合併したため、現在はDECという名が完全に消えてしまいましたが、Alphaのエンジニアリングチームの大半はAMDに移っており、Alphaの思想はOpteronに今もなお生き続けています。Alphaを売ってきた会社としては、当然Opteronを選択しやすかったですし、お客様もそれに付いてきてくれました。一般に高価とされる64ビットシステムが安価に提供されるのであればぜひとも購入したいというお客様も多く、弊社はこれに応えるべくコストパフォーマンスの高いOpteron搭載マシンを発売しました(西氏)」

32ビットから64ビットへと緩やかに移行できるOpteron

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[構成:伊勢雅英,ITmedia]

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