エンタープライズ:ニュース 2003/11/17 19:31:00 更新


MSバルマーCEO、早大で「コンピュータが実現する10年後はエキサイティングだ」

MicrosoftのバルマーCEOは11月17日、早稲田大学の大隈講堂で学生に向けた講演を行った。コンピュータが実現する10年後は「素晴らしい世界になる」と熱く語り、大学の基礎研究で世界に貢献できるチャンスだと学生にエールを送った。

 来日しているMicrosoftのスティーブ・バルマーCEOは11月17日、東京・早稲田大学の大隈講堂で学生に向けた講演に臨んだ。マイクロソフト、ひいてはコンピュータが描く10年後は「素晴らしい世界になる」と熱く語り、大学の基礎研究で世界に貢献できるチャンスだと学生にエールを送った。早大とマイクロソフトは同時に、コンピュータセキュリティ分野での人材育成に向けて協力していく包括提携も発表した。

 「この先の10年後は? エキサイティングだ」

 学生の前で講演するのが最も楽しいというバルマーCEO。コンピュータが実現する10年先の未来を学生に向かって熱く説明した。今後10年で人々は、コンピュータを使って、いつでも、どこでも、どのデバイスからでも必要な情報にアクセスでき、いまとは別次元のリアルタイムコミュニケーションが行えるようになるという。

 バルマーCEOにとって、10年前のコンピュータを振り返ると、それは「太古の歴史」に映る。

 「10年前、PCも携帯電話も持っている人はほとんどいなかった。ましてやインターネットなど理解していなかったが、PC、携帯と革命が起こった。そのころ、インテルのアンディ・グローブが今後10年で1億台のPCが普及すると言って、ビル(・ゲイツ会長)と私は笑ったものだ。私は今後の10年は? とよく聞かれる、ダイナミックか? エキサイティングか?……と」

 「答えはYes、Yes、Yes、Yesだ!」

スティーブ・バルマー氏

学生の前で熱く語ったMicrosoftのバルマーCEO


 テクノロジーの追い風を受け今後の10年は期待できると語るバルマーCEOは、最も重要な革新としてXMLを紹介。業界にとってパワフルなイノベーションをもたらすものだと語る。

 「ソフトウェア同士がコミュニケーションをし、XMLを通じてすべての情報を統合できる。誰もがソフトウェアを再利用できるようになるのだ。オブジェクト指向プログラミングなど、これまでの技術に大きな実りをもたらすものだ」

 例えば、音声認識は10年後には、ソフトウェアが何を話しているのか、意図を含めて理解するようになると言い、検索技術などにも革新が起こると話す。「まだ気がついていない多くのイノベーションがあるはずだ」

スティーブ・バルマー氏

マイクロソフトにも早稲田の卒業生が多いとも


 代表で行われた学生からの質問で「では20年後は?」と問われたバルマー氏は、「Microsoftではビジネスマンとして通っており、技術のビジョナリーではない」としながらも、「20年後はメディア自体が大きく変わる」と答え、TVのチャンネルも無限となり、無限の情報ソース持つようになると説明。子供たちはもう本を見て育つことはなく、あらゆる場所で、一人20台前後のコンピュータを持つようになるとの未来予測を披露した。

質問する学生

学生代表質問の様子。質問はTRONとWindowsの提携にも及んだ。バルマーCEOは「PCのOSと組み込み型のOSは違うもの。競争的な関係だけでなく、協調関係をもって双方の特長を生かしていくことが重要」と回答


コンピュータセキュリティ技術者育成で早大と提携

 MicrosoftはR&D分野に今年69億ドルの投資をしてきた。「トヨタが62億ドルだから、おそらく日本のどの企業よりも多い」(バルマーCEO)が、単独では限界があると、大学と協力することで、民間企業ではできない研究を貴重としている。今回の早大での講演や提携も「タレントの確保と、著名な大学とのリレーションを継続的に確保していきたい」との理由にある。

 10年後の将来像を実現するために、Microsoftが「No.1プライオリティー」として力を入れているのがセキュリティを高める努力と、バルマー氏は、Trustworthy Computing(信頼できるコンピューティング)に触れ、業界全体で取り組む必要があるとも述べている。

 この日、コンピュータセキュリティの技術者育成で提携した早大は文部科学省の支援の下、2001年に理工学部内に「セキュリティ技術者養成センター」を設置し、コンピュータセキュリティに関する技術者と研究者の育成に力を入れ始めている。

提携の調印式

早稲田大学総長の白井克彦氏とバルマーCEOが提携を取り交わした


 「セキュリティしか分からない技術者ではなく、ネットワークのこともコンピュータのことも知った技術者」(中島達夫 理工学部コンピュータ・ネットワーク工学科教授)を育成することが目的で、来年度からは開発・研究者の育成も本格化させる予定だ。マイクロソフトとの提携により、来年度からWindowsのセキュリティ技術カリキュラムを用意しマイクロソフトからセキュリティ技術者養成センターへの講師も受け入れる。

 バルマーCEOは講演の中で日本の学生に向けてエールも送っている。「日本はモバイル通信の分野で最先端にいるのを知っているか? 皆さんにとってチャンスなのです。ただ米国と日本は先端を行くものとしての責任もある。立ち向かってほしい」

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[堀 哲也,ITmedia]