エンタープライズ:ニュース 2003/12/09 20:38:00 更新


基調講演:ビッグウェーブ「Longhorn」へ向かって始動

マイクロソフトは12月9日、都内ホテルで「.NET Developers Conference 2003」を2日間の日程で開催。次期Windows「Longhorn」について、開発者へいち早く説明された。

 「コンピュータ産業はこれから変化する。とても興奮している」。基調講演に立ったMicrosoftのデビッド・トレッドウェル氏(.NETデベロッパープラットフォームチーム ゼネラルマネジャー)は拳を握りしめた。

 技術の転換点にいることを強調して始まった「.NET Developers Conference 2003」は、10月末の米国「PDC 2003」で発表された次期Windows OS、Longhornについて、国内の開発者に向けていち早く説明される場となった。Longhornに関して具体的な説明がされるのはPDCに続き日本が二番目のことだ。

デビッド・トレッドウェル氏

トレッドウェル氏は.NET Framewrokをはじめコード名Indigoなどの開発チームを率いる


 トレッドウェル氏は、LonghornはマイクロソフトにとってMS-DOSからWindows 95への転換以来の「ビッグウェーブ」になる、と惜しみなく強調した。API、COM、サービスとソフトウェアのコネクティビティは革新を遂げてきたが、同社は2000年から提唱している.NETの延長線上に位置するものとして、Longhornに多大な力を注いでいる。

 「次のブレイクスルーはLonghornで起こされると信じている。これはユーザーにとってだけでなく、デベロッパのためのプラットフォームでもある」(トレッドウェル氏)

 Longhornはハードウェア技術の革新を生かすものでもある。Longhorn登場時期と予想されている2006年、PCは4〜6GHz/2コアのCPUを搭載し、メモリ2Gバイト超、HDD1Tバイト超、そして現在の3倍のGPU性能を持つ姿になると予想する。すでにTablet PCといったフォームファクターも登場し、PCそしてデータの入力の仕方さえも変わってきた。こういったハードの進化をさらに生かそうとするなら、「OSの使い方そのものも変化する」というわけだ。

 Longhornでは、これまでのWin32に代わるものとしてWinFXという開発プラットフォームが導入される。.NET Frameworkをベースにしており、「.NETスーパーセットと考えればいい」(トレッドウェル氏)。下位互換も可能で、Win32もコールしやすくなるとしている。

Longhornのアーキテクチャ

Longhornのアーキテクチャ


 このWinFXを構成する主要技術が、グラフィックス・ユーザーインタフェース(UI)のプレゼンテーションエンジンとなる「Avalon」、新ファイルシステムの「WinFS」、そしてコミュニケーションアーキテクチャの「Indigo」だ。これらのベースには、ファンダメンタルズと呼ばれるOSの基盤サービスが位置する。

 最もユーザー分かりやすく違いを感じさせるAvalonは、グラフィックス、メディア、アニメーションに統一したプレゼンテーションモデルを提供する技術だ。ビットマップではなくベクターベースの描画エンジンを持つことで、拡大しても綺麗な描画を可能にするという。基調講演ではデモも行われ、UIにメディアやアニメーション機能が加わることで、明らかにアプリケーションが魅力的になることを感じさせた。アプリケーションのアクセシビリティも向上しそうだ。

LonghornのUI

LonghornのUI、サイドバーが特徴的だ。デモではクルクル回転するボタンやWindows Mediaの画像が流れるキャンバスのデモが見られた


 開発には、XAMLというXMLをベースにしたマークアップ言語が用意されている。これにより単純な宣言型記述によるアプリケーション開発が実現されるという。また、Windowsフォームでもコード部分とコンテンツ部分を分離して開発できる点も注目される。こうすることで、コーティングを行う開発者と画面を作るデザイナーとのコラボレーションを実現できるメリットがある。

 新ファイルシステムのWinFSは、NTFSに構造化の機能を付加したものだという。「SQLの持つ強力なクエリーメカニズムをWindowsに組み込んだ」(トレッドウェル氏)。あらゆるデータが統合された環境で管理され、単一のアプリケーションだけで利用されるだけでなく、ほかのアプリケーションからもデータの関連性を導きだすことができるとしている。

 拡張WebサービスのIndigoは、.NET Frameworkを拡張し、追加的なサービスを加え、サービスの構築をシンプルにするとしている。

 2005年とも2006年とも言われるLonghorn登場までに、マイクロソフトでは次期SQLサーバのYukon、そして次期Visual Studio、Widbeyを投入する予定だ。.NET Developers Conferenceでは、これらについても詳しいセッションが用意されおり、参加者にはLonghornのデベロッパープレビュー版、YukonとWhidbeyのPDCプレビュー版が配布される。

 「Longhornは.NETのスーパーセット。いまからでも.NETで開発を始めてほしい。これが一番の移行のポイントだ」(レッドウェル氏)

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関連リンク
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[堀 哲也,ITmedia]