インタビュー
2004/01/08 20:46:00 更新
「SoftEtherを危険視するのはおかしいです」――19歳の開発者に聞く (2/2)
ITmedia 開発にあたり、苦労した点などはありますか。
登 SoftEtherでは、TCP over TCPによるパケット伝送を行います。しかし、最初にSoftEtherを作ってみたところ、非常に通信速度が遅いんです。どのくらい遅いかというと、100MbpsのLocalLANで500Kbps程度しか出ませんでした。
TCPはパケットロスがないよう保証するプロトコルなので、パケットを送る際に「前のパケットが送信できたか確認応答をとる」時間が必要になります。そのため、1パケットずつ正直に送ると、確認の時間をとられて通信速度が遅くなってしまいます。
これを解決するには、ある程度のパケットをまとめて1つのデータとして送ればいいと考えました。しかし、これだと確かにビットレートは稼げるのですが、その上のレイヤでカプセル化をしようとしているTCPパケットは、一定時間待ってから送信することになります。このため、あまり多くのパケットをまとめると待ち時間が長くなって、「このネットワークは速度が遅い」と判断してしまい、TCPのフロー制御が行われて、やはり速度が落ちてしまうのです。
このため、「パケットをある程度まとめて送信するが、まとめすぎない」というバランスをとるのが、一番重要なところでした。いろいろプログラムを書き換えて、現在は状況が改善しています。
ITmedia 今後は、SoftEtherを使ってどんなことを考えているのですか。
登 現在、SoftEtherの使用方法や特徴を多くの人に体験してもらうため、期間限定で「実験用匿名仮想HUB」を提供しています。これは、SoftEtherの仮想LANカードをインストールしていれば、誰でも接続できるものです。
ここに接続したユーザーは、自動的にDHCPでIPアドレスを割り当てられ、仮想ネットワークを経由してインターネットにアクセスすることができるようになります。これまで、述べ人数で7427ユーザーが接続しています(*1月6日時点)。
こちらとしては、どのくらいのユーザーが仮想HUBに接続した場合、どのくらいの負荷がかかるのかをチェックし、バグとりをしています。1月1日に立ち上げてから、今まで再起動なしに運用できています。
なお、仮想HUBを踏み台にしてインターネット上のサーバを攻撃したり、誹謗中傷の情報を発信するのは禁止です。そうしたことを防止するよう、パケットのログをとっているほか、仮想HUBに接続する各ユーザーを管理できる機能も実装しています。
ITmedia SoftEtherを利用した、商用サービスは考えているのですか。
登 SoftEtherはフリーソフトですが、「それを利用し、経費以上の対価をとってサービスを提供すること」は禁止しています。これは、将来的に商用サービスを開始する際、競合事業者が発生しては困るからです。
現状、企業から商用化の話はきていますし、IPAとしても、未踏ソフトウェアの商用展開は推奨しています。これから特定の企業にライセンス提供して、その企業が窓口になってサービスを提供することになると思います。
SoftEtherは導入が容易で、Windowsでは唯一、プロキシを通せるVPNソフトです。支店間接続や、リモートメンテナンスに利用できます。ほかに、ユーザーの家庭と高齢者の家庭をVPN接続すれば、NATなどを気にすることなくテレビ電話が可能です。さきほどの仮想HUBを、特定目的で運営することもあるかもしれません。
ITmedia 具体的なスケジュールはありますか。
登 これは、あまり話せません。もっとも、ライセンス提供した企業の方から、発表があるかもしれないですね。
(文中敬称略)
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関連リンク
SoftEtherのサイト
登氏のホームページ
[杉浦正武,ITmedia]
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