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2004/02/19 23:22:00 更新


「仮想化」にアウトソーシング市場の勝機を見出すSAVVIS

かさむメンテナンスコスト、低いリソースの活用率……米SAVVIS Communicationsでは、多くの企業が抱えるこういった課題を、仮想化技術を下敷きにしたアウトソーシングサービスで解決するという。

 「Webホスティングに限って言えば、数年前のITバブルの時期、特にB2Cの分野で過大な期待があったのは事実だ」――マネージド型のIP-VPNやホスティングサービスを展開する米SAVVIS Communicationsの会長兼CEO、ロバート・マコーミック氏はこのように過去を振り返る。しかし同時に、「アウトソーシング市場は今後大きく成長する分野だ」とも予測する。ただ、同氏が成長を見込んでいるのは、単に機器を集約させるという従来型のアウトソーシングではない。仮想化技術を利用した新たなタイプのサービスだ。

 米SAVVISは、1995年に米金融情報企業のIT部門がスピンアウトして設立された企業だ。いわゆるWebホスティング/データセンター市場が膨らみ、そしてはじけた一方で、同社は着実にマネージドサービスを拡張してきたという。ホスティング事業から撤退したIntelより、Intel Online Servicesの事業を引き継いだほか、今年1月には米Cable & Wirelessの資産を買収した。つまり、かつてのDigital IslandやExodus Communicationsといった事業者の資産を傘下に収めたことになる。

 過去に数多くの事業者が参入し、撤退してきたホスティング市場に、なぜ今、SAVVISは積極的に取り組むのだろうか? マコーミック氏は、これまでの企業とは異なる独自のやり方でアウトソーシングサービスを提供することにより、他に類を見ない利益を顧客に提供するという。その鍵を握るのが「仮想化」技術だ。

 同社に言わせると、従来型のホスティングは、顧客のところにあった大量の機器をデータセンターに持ってくるだけ。スケールメリットこそ生まれるものの、アプリケーションやサービスごとに機器が必要であり、しかも人手によるメンテナンスを要するという点で、モデルに大きな変化はなく、顧客にとってはそれほどうまみがなかったという。

 「その上、顧客ごとにサーバやルータ、ファイアウォールやロードバランサーを置いていては、ラックはすぐに埋まるし、イーサネットや電源のケーブルだらけになってしまう。人的ミスや不良品に起因する障害は免れない」(マコーミック氏)。

菅沼氏とマコーミック氏

SAVVISの菅沼氏とマコーミック氏

 これに対しSAVVISが展開するのは、「共有インフラ、共有ハードウェア上に仮想的なインスタンスを構築し、必要に応じてリソースを割りあえてていく」(同氏)というやり方だ。これをネットワークのみならずサーバ/CPUやセキュリティ、ストレージなど、必要なITコンポーネントすべてに適用していくという。

 このモデルならば、年末商戦などで一時的に多くのリソースが必要になった場合でも、同社独自の管理/プロビジョニングソフトウェアを通じて割り当てるだけですむ。慌てて製品を発注し、納品を待って設定し……というプロセスで時間を費やすこともないし、あらかじめ余分に予備の機器を購入しておく必要もない。

 こうしたサービスを実現するために同社は、キャリアクラスの信頼性を備え、しかも仮想化を実現する機器を採用し、独自開発の管理ソフトウェアと組み合わせてきた。ネットワークに関してはNortel Networkの「Shasta」を、セキュリティサービスについてはInkra Networksの「Inkraシリーズ」を導入し、「真の意味でオンデマンドなサービス」(同氏)を展開しているという。4カ月前からはEgeneraおよび3PARdataの機器を採用し、コンピューティングパワーとストレージの仮想化も実現しているということだ。

 マコーミック氏はもともと、仮想化を主軸としたサービスを志向していたというが、最近になってようやく、それを実現するだけの技術と機器がそろった、と見ることもできそうだ。

 同氏によると、企業は今、サービスごとにばらばらにITシステムを構築していることが原因となり、3つの大きな課題を抱えているという。1つは、IT予算のうち7割が、システムのメンテナンスのためだけに費やされていること。2つめは、そこまでお金を投じて維持しているITインフラなのに、実際にはフルに活用できていないこと。そして最後は、アベイラビリティが低く、ダウンタイムを短縮できていないことだ。

 「これらの問題は、仮想プラットフォームをベースとしたマネージドサービスによって解決できる」(マコーミック氏)。個別にシステムを構築、運用している場合に比べ、よりよいパフォーマンス、よりよいアベイラビリティ、オンデマンドでの拡張といったメリットを提供しながら、コストは半分にまで削減できるという。

 同社は現在、アウトソーシングの市場では米IBM Global Services、EDSに次いで第3位のシェアを確保しているという。仮想化やユーティリティコンピューティングに注目が集まりつつある現在では、これからの激戦も予測されるが、「SAVVISは、サーバやアプリケーションだけにとどまらない、包括的なエンドツーエンドのサービスを提供できるし、独自のソフトウェアに縛られることもない。何より、この数年開発してきた管理/プロビジョニングソフトウェアによって、自動化されたシステムを持っている点で差別化できる」(マコーミック氏)。

 ことホスティングやアウトソーシングとなると、日本では長らく、自社システムを第三者に委ねることへの抵抗がネックとなってきた。しかしそれも、「オンデマンドのストレージサービスの登場などによって、変化しつつある」(サヴィス・コミュニケーションズの代表取締役、菅沼重幸氏)。

 ITがコモディティ化し、それだけでは差別化が図りにくい状況になってくればくるほど、アウトソースという選択肢が注目されるようになってきたと菅沼氏は言う。今は旧インテル・オンライン・サービス事業からの引継ぎ作業を進めている段階というが、今年前半には日本でも、仮想化をベースにしたサービスを展開していく計画だ。導入コンサルティングや設計などを支援するパートナーと組んでの販売も視野に入れているという。

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[高橋睦美,ITmedia]

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