ケーススタディ
2004/02/27 04:45 更新


富士写真フイルムのSAPビジネスインテリジェンス導入、64ビットWindowsで安定化

SAPジャパンが開催した「SAP NetWeaver Conferenece '04」で、ユーザー事例セッションとして、SAPのビジネスインテリジェンス(BI)ツールであるBWを導入した富士写真フイルムが、自社のシステム導入プロジェクトについて紹介した

 SAPジャパンが2月26日に開催した「SAP NetWeaver Conferenece '04」で、ユーザー事例セッションとして、SAPのビジネスインテリジェンス(BI)ツールであるBW(Business Information Warehouse)を導入した富士写真フイルムが、自社のシステム導入プロジェクトについて紹介した。社員の多くがBWを利用して自分の必要なデータを自由に参照している同社では、BWが業務の遂行に重要な役割を担っているという。同社システムの特徴は、64ビット版Windows Server 2003を採用していること。64ビットのメモリ領域により、レスポンスタイムの悪化といった問題を抱えやすいOLAP処理などもスムーズに運用できているという。

 富士写真フイルムは、従業員は約7万名、連結子会社は180社、売上高は2兆5000億円に上る。カラーフィルム、カメラ、ラボ機器などの製品販売やサービス、印刷や医療診断、複写機やFAXなどのビジネスも展開している。セッションを担当したのは、同社のIT部門が分社化してできた富士フイルムコンピュータシステムで、BW導入を担当した柴田英樹氏。

 「R/3で一元化された業務データを、よりユーザーニーズに則した形で提要する仕組みがBW」(同氏)

 BWにより、ユーザーが自分で最新のデータを使いこなせる環境を整備するビジネスインテリジェンス導入の典型的なケースといえる。特に、BWにより、帳票の追加開発コストの削減、ユーザーの情報活用を促すことによる経営のスピード化、ペーパレス化で環境負荷を軽減することを目指している。

 同社は、2000年3月にBW2.0B導入プロジェクト開始し、8月に本番稼動した。BW2.0Bを運用後、BW3.1へのアップグレードを検討、BW再構築プロジェクトなどを経て2003年11月から2.0Bと3.1が並行稼動、12月から3.1が単独稼動を開始した。

 本社や営業所、工場、研究所など約20拠点で、BW利用ユーザー数は500名以上、期首のピーク時には同時実行ユーザーは150から200名に上る。業務データは販売管理、在庫・購買管理、管理会計など。キューブ数は40、クエリ数は1000を超えている。

運用上の問題点

 BWを運用していた同社は、データ量の増加に伴い、期首にデータ処理が集中したときにシステムが不安定になったり、多くのデータを扱う企画系部門ユーザーのクエリレスポンスの低下、部門間のデータをまたぐ高負荷クエリの実行時の操作性悪化といった問題点にぶつかった。

 これをインフラの観点から究明した同社は、幾つかの原因を見つけた。

 1つは、32ビットWindowsの限界によるメモリ不足。Windows系OSは、メモリが最大4ギガバイトという制約があった。2つ目は、データベースとして利用していたOracleのメモリ使用方法にも制約があった。Oracleで利用できるのは最大で3ギガバイト、4ギガバイトのメモリをすべて利用することはできない。3つ目は、ハードウェアリソースの制約。サーバに搭載できるCPUの数、クロック周波数の制約も受けたという。

解決は64ビットWindows環境で

 こうしたメモリ不足によるBWのパフォーマンス劣化という問題を解決するために、同社が選んだ解決策は、BW 3.1へのアップグレードと、Windows Server 2003 64-bit Editionへの移行だった。データベースも、Oracle 8iからSQL Server 2000 Enterprise Edition(64ビット)へリプレースした。

 64ビットWindows Serverでは、仮想メモリの上限は16ギガバイトへ、物理メモリの上限は32ビット時の32ギガバイトから512ギガバイトへそれぞれ拡大した。処理能力が高くなったため、アプリケーションサーバの台数を削減することが可能になったという。さらに、64ビット環境に移行することで、データベースの拡張性は事実上無限になった。

 さらに、ハードウェア環境は、以前32ビットサーバ11台で運用していたものを、NECの64ビットサーバであるExpress5800で1台に統合した。同マシンは、サーバ筐体内に論理分割機能を利用できるため、1台のBW本番機内をパーティショニングでDBサーバ1台、アプリケーションサーバ4台に分けた。

今後の展開

 64ビット環境でBW3.1を構築した同社では、以前のようなパフォーマンスの問題は解決した。だが、柴田氏は、「システム環境の改善で、ユーザーのBW利用がさらに増えることが予想されるため、今後もデータ量の増加に気を配り、パフォーマンスを維持するためのサポートをする必要がある」と話す。

 今後検討しているシステム構成の最適化案の1つは、サーバマシンの論理パーティショニング機能の調整。開発テストで利用しているマシンのセルを、状況によっては動的に本番環境として稼動できるようにする。

 また、Itanium 2におけるCPUアップグレードや、アプリケーションサーバの追加などを検討する。そのほか、レポートや夜間ジョブのパフォーマンスチューニング、アーカイブ機能の実装、インタフェースのWeb化なども予定している。