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2004/04/13 00:21 更新


ユーザーの欲求を刺激するSunとMSの提携

SunとMicrosoftの提携は、双方の製品を利用するユーザーに相互運用性の改善をもたらすだけでなく、メンテナンスコストの低下につながるのではないかという期待の声が上がっている。

 Sun MicrosystemsとMicrosoftが相互運用性の改善に向けて提携したことは、Webサービスやグリッドコンピューティングなどの技術の広範な普及に向けた重要な一歩となる――ユーザーはこう考えているようだ。さらにユーザーは、ほかの企業も両社の方針を見習うよう求めている。

 大手食品流通企業で生産業務を担当するディレクター、ロジャー・スクワイアー氏は、「ベンダー各社は互いに仲良くしなければならない。当社のシステムにとっても、それが必要だ。ベンダーには選択肢はない」と話している。

 SunとMicrosoftでは、先ごろ発表した合意は、両社の技術の相互運用性改善を求めるユーザーの声に促されたものであることを明言している。しかし先週ラスベガスで開かれたAFCOM主催のデータセンターユーザーグループのカンファレンスでは、両社の合意が実際に、ベンダーに対するユーザーの立場が強くなったことを示すものかどうかが議論の的になった。

 Memorial Sloan-Kettering Cancer Centerのデータセンターマネジャーを務めるジェームズ・ロジャーズ氏(ニュージャージー州在住)は、「ベンダーは相変わらず、自分たちのビジョンにユーザーを誘導しようとしている」と指摘する。さらに同氏によると、ベンダーの手法にはほとんど変化が見られないという。

 しかしこの数年間にわたるIT支出の減少傾向は、ユーザーの立場をやや強くしたという主張も聞かれた。

 テキサス州プレイノーにあるFrito-Layのサーバ設備マネジャー、ドン・ティセル氏は、「ベンダーはユーザーの声に少し耳を傾けるようになってきた。彼らが生き残るためには、そうせざるを得ないのだ」と話す。

 イリノイ州ディケーターにあるIllinois Powerでコンピュータ運用マネジャーを務めるケント・ハウエル氏は、経済状況と技術の選択肢の拡大がユーザーの立場を強めているという。

 ハウエル氏は最近、「法外な価格設定」をしていたメインフレームベンダー数社との取引をやめたという。「新規顧客を獲得するためには、喜んで取引に応じる競合ベンダーはたくさんある。われわれはこういった機会を利用するにやぶさかでない。たとえそれが一部の機能をあきらめることを意味するとしてもだ」と同氏は話す。

 この台風の目にいるのがSunである。同社のUNIXサーバは、Linuxで動作する低価格のIntelベースのサーバから日増しに強まる競争圧力を受けている。Microsoftとの提携当日、Sunは四半期の純損失を報告するとともに、3300人の従業員を削減することを明らかにした。

 Sunによると、約束した相互運用性の改善がユーザーにもたらす具体的恩恵の内容はまだ整理していないという。ジョナサン・シュワルツ氏の後任としてSunのソフトウェア部門の責任者を務めるジョン・ロイアコノ氏は、「次のステップについて話し合う連絡チームもまだ設立していない」と話している。シュワルツ氏の社長兼COO(最高業務執行責任者)への昇格は、Microsoftとの合意が発表された日に明らかにされた。

 しかしアリゾナ州フェニックスにある地域医療プロバイダーのMaricopa Integrated Health Systemでコンピュータ運用マネジャーを務めるパット・リッダー氏は、ユーザーにとってはメンテナンスコストの低下という明確なメリットがあると考えている。

 「ミッドレンジハードウェア分野におけるSunの役割は、ソフトウェア分野におけるMicrosoftの役割に相当する。Sunは業界で最高クラスの品質の製品を提供している」とリッダー氏は話す。さらに同氏は、サーバソフトウェアのメンテナンスにはコストがかかると付け加えている。

 「両社がそれぞれの製品の相互運用性改善に本気で取り組むのであれば、両方のプラットフォームの問題に対処するスキルを持った技術者が増え、メンテナンスコストの低下につながる可能性がある」(リッダー氏)

 SunとMicrosoftの合意が、ほかのベンダーに対しても相互運用性改善に向けた合意の形成を促すかどうかという点については、ユーザーの意見はまだ分かれている。

 フロリダ州タンパに本社を置くTime Customer Service(出版社Timeの受注処理センター)の業務マネジャー、デニス・リード氏は、「残念ながら、多くのベンダーが相互運用性というトレンドに参加していない」と指摘する。

 しかし相互運用性への要求は次第に高まっている。その背景には、企業が業務部門とサプライチェーンとの連携を改善するとともに、Webサービスを開発し、グリッドコンピューティングなどの技術を検討していることがある。

 ニューヨーク州ポキプシーにあるマリスト大学に付属するInstitute for Data Center Professionalsのディレクター、バーバラ・マクマレン氏は、「ベンダー間に連携がない現状をユーザーはもう我慢しないだろう」と話す。

 一つだけはっきりしているのは、Computerworldが先週取材したユーザーは、具体的な恩恵を目にするまでは、SunとMicrosoftの誠意を信じるつもりはないということだ。

 カリフォルニア州アラメダにある財務管理企業Associated Third Party Administratorsのシステムソフトウェア担当マネジャー、ケン・ランバート氏は、「彼らの新しい友情から何か素晴らしいものが出てくると期待しているかと聞かれれば、答えはノーだ。本心からユーザーの利益を考えていることを示すには、まだやるべきことがたくさんある。彼らがこういった心配を払拭しようとしているのであれば、素晴らしいのだが」と話している。

SunとMSの提携で認証管理が容易に

 Sun Microsystemsのジョン・ファウラーCTO(最高技術責任者)によると、相互運用性に関するSunとMicrosoftの合意により、企業が両ベンダーの環境にまたがるユーザー認証を管理するのが容易になり、そのコストも削減できるという。

 しかし同氏は、ユーザーがいつこれらのメリットを手にすることができるのか、あるいはこういった相互運用性を実現するためにSunは自社製品を具体的にどう修正するのかを明らかにしていない。

 アイダホ州アイダホフォールズにあるIdaho National Engineering and Environmental Laboratoryの研究フェロー、エリック・グリーンウェード氏は、「MicrosoftとSunの環境が連携するのをとても楽しみにしている」と話す。同研究所では、SunのSolarisを含む各種UNIXシステムが動作するハイパフォーマンスコンピューティング設備を構築中だ。これらのシステムと既存のWindowsベースのオフィスシステムとの間で認証情報を交換/管理するための効率的な方法を探しているという。

 「この合意の結果、完全に分断された2つの環境を維持するという不便を解消するメカニズムができるのを期待している」(グリーンウェード氏)

 ワシントンにある法律事務所Howrey Simon Arnold & Whiteのブライアン・コンロンCIOによると、同社では「Active Directory」とSunのディレクトリ環境との間で認証情報をやり取りするために特別なソフトウェア層をコーディングしたという。「両環境間の連携に向けた動きは素晴らしい第一歩だ」とコンロン氏は話す。同氏が特に求めているのは、単一のユーザーデータベースで両環境のアプリケーションへのアクセスの認証/プロビジョニングを行う機能だという。

 Sunのファウラー氏によると、Microsoftとの提携により、二つの技術環境の間の連携改善に向けたSunの取り組みが加速するという。既にSunは、相互運用性を高めるために幾つかの作業を実施した、と同氏は付け加える。例えば、Sunの「Java System Directory Server」は、MicrosoftのActive Directoryとの間でパスワードと属性を同期化する機能をサポートする。Active DirectoryあるいはDirectory Serverに保存されたユーザーのパスワードは双方向に同期化することができるため、管理が容易になるという。

 Sunが昨年末、テキサス州オースティンにある認証管理ソフトウェアベンダーのWaveSet Technologiesを買収したことも、連携改善に向けた一歩となるもの。「WaveSetの技術をSunの認証管理ソフトウェアと組み合わせることにより、ユーザーは広範なOSにわたって認証/アプリケーションプロビジョニング機能を自動化および一元管理することが可能になる」とファウラー氏は話す。

 ファウラー氏は、シングルサインオンの実現や、Webサービス規格のLiberty Alliance ProjectとWS-Federationとの接近も期待できるとしながらも、詳しい説明は避けている。

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