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2004/05/12 11:53 更新


雷鳴の中、SAPPHIRE New Orleans開幕──NetWeaverが業界に与えるインパクトは?

時折、遠くから雷鳴が聞こえてくる中、ミシシッピ河畔の街、ニューオーリンズでSAPPHIREカンファレンスが開幕した。SAPアメリカのマクダーモットCEOは、「かつてわれわれはSAP R/3によって全く新しいソフトウェアカテゴリーを紹介したが、この地で再び業界に弾みをつけたい」と話した。

 米国時間の5月11日夕方、ルイジアナ州ニューオーリンズでビジネスソフトウェアベンダー最大手、SAPの年次カンファレンス「SAPPHIRE '04 New Orleans」が幕を開けた。

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ホスト役としてオープニングセッションに登場したマクダーモット氏。42才の若さでSAPアメリカを率いる


 目抜き通りの喧騒とともに、時折、遠くから雷鳴が聞こえてくる中、ミシシッピ河畔の街には、全米はもとより欧州からも、約7500人のカスタマーやパートナーらが詰め掛けている。普段の雨であれば、スコールのようにすぐに降り止むのだが、どうやら今日は本格的に降りそうだ。ちょうどコンベンションセンターの裏手に流れる大河のピアも観光客が少ない。

 このミシシッピは、カナダ国境にほど近い湖から米国大陸を南に下り、メキシコ湾に注いでいる。その長さは6000キロをゆうに超える。

 夕方から始まったオープニングセッションは、SAPからのメッセージがこれといってなく、どちらかというと前夜祭なのだが、3000人近い聴衆が展示フロアに特設されたキーノートシアターを埋めた。

 前回、ニューオーリンズでSAPPHIREが開催されたのは1991年まで遡る。「SAP R/3」ローンチのときだった。

 冒頭の挨拶に登場したSAPアメリカのビル・マクダーモット社長兼CEOは、「われわれは(十数年前のSAPPHIRE New Orleansで)SAP R/3によって全く新しいソフトウェアカテゴリー(ERP)を紹介したが、この地で再び業界に弾みをつけたい」と話した。

目指すは「成長」をもたらすベンダー

 今回のSAPPHIREのキーメッセージは、「Growth through innovation」。どちらかというと「業務の合理化」で強みを発揮してきたSAPだが、イノベーションによって企業に成長をもたらすベンダーを志向し、変化に対して柔軟に即応できる統合アプリケーションプラットフォーム、NetWeaverを前面に打ち出している。

 「景気回復の兆候が見られる中、企業は単なる経費削減から抜け出し、次なる成長を目指している」とマクダーモット氏。

 3月中旬には、本国ドイツで行われたCeBITで「NetWeaver 2004」が発表され、日本でも「SAP NetWeaver パートナーコンソーシアム」発足が明らかにされている。

 NetWeaverはアプリケーションのための統合されたプラットフォーム。同社固有の4GLであるABAPとJ2EE標準をどちらもサポートするアプリケーションサーバから始まり、プロセスインテグレーション、ビジネスインテリジェンス、ナレッジマネジメント、ポータル、コラボレーション、モバイルコンピューティンといったさまざまな機能が統合されている。これまで手間と時間がかかったアプリケーション間の連携にはWebサービス標準を採用する。変化に対して柔軟に即応できる「SOA」(Service Oriented Architecture:サービス志向アーキテクチャ)を実現する切り札でもある。

 インターネット標準への対応が後手に回っている印象のあるSAPだが、2002年のJavaOne San Franciscoでは、ハッソー・プラットナー会長(当時はCEO)が基調講演に登場し、JavaデベロッパーらにNetWeaver構想を売り込んでいた。

 参加者を対象とした事前アンケートによれば、SAPが「信頼できるイノベーター」になることを最も多くの人が望んでいるという。

 2日目のキーノートにはいよいよヘニング・カガーマンCEOとエグゼクティブボードメンバーのシャイ・アガシ氏が登場し、同社がもたらすイノベーションとそれを支えるNetWeaverの詳細が紹介される。

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初日夜から展示会もオープン。幕張メッセでいえば「6館ブチ抜き」に相当する大規模な展示フロア


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▼SAPPHIRE '04 New Orleans Report

[浅井英二,ITmedia]

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