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2004/05/20 23:37 更新


SAP R/3が世代交代、「成長力」を備えた「mySAP ERP」が7月国内出荷へ

SAP R/3がmySAP ERPへと世代交代する。Enterprise Services Architectureベースへと進化し、NetWeaverのERPエンジンとして生まれ変わる。

 SAPジャパンは5月20日、SAP R/3の後継として「mySAP ERP」を7月から出荷することを明らかにした。ERPの代名詞、SAP R/3の出荷が始まったのが1992年。日本法人も同時にビジネスをスタートさせており、「今日の成功の礎」ともいえるSAP R/3は、mySAP ERPへと世代交代する。

 ライセンスとしてのmySAP ERPは既に昨年から提供が始まっているが、今回発表された2004年版は、「Enterprise Services Architecture」(ESA)ベースへと進化した次世代ERPだ。

 SAPが掲げるESAは、最近流行のSOA(サービス指向アーキテクチャ)をベースとし、企業向けアプリケーションの基盤へと昇華させたもの。ユーザーインタフェース、ビジネスプロセス、およびアプリケーションロジックを分離することで、新しいビジネスチャンスや外的環境の変化に即応できるという。

 次世代版ERPを「成長力を備えたERP」と表現するのは、SAPジャパンの玉木一郎バイスプレジデント。

 SAPは、ESAを実現するための技術基盤として「NetWeaver」を用意する。NetWeaverには、ポータル、ビジネスインテリジェンス、マスターデータ管理、インテグレーションブローカといった各種コンポーネントがあり、「人」「情報」「プロセス」の統合を可能とする。

 今回発表された2004年版のmySAP ERPは、開発者から見れば、NetWeaverを介してアクセスできるエンジンに生まれ変わる。J2EEやWebサービスといったオープンスタンダードの流儀で各種のサービスを組み合わせることによって新しいビジネスプロセスにも柔軟に対応できるわけだ。先ごろの「SAPPHIRE '04 New Orleans」では、2007年までにCRMやSCMといったmySAP Business SuiteをすべてESAに移行させるロードマップも明らかにされた。レガシーを含めたSAP以外のシステムに対してもNetWeaverは連携基盤として機能するため、システムや組織の壁を越えて一貫したビジネスプロセスを構築できるようになる。

 次世代版のmySAP ERPでは、業務のスピードや質を高めるための「Sense & Respond」というコンセプトも具現化されている。RFIDへの対応機能が実装されたため、現場で起こっている事象(モノの動き)をシステムが人を介さずに把握・分析し、例えば、異常値が発見された場合に担当者のポータルにアラートを出し、次のアクションを促すといったシステムも構築できる。

 SAPのヘニング・カガーマン会長兼CEOは、SAPPHIRE '04 New Orleansで「例外処理による管理」という言葉を使い、このコンセプトを説明している。

 NetWeaver自体も順次ESAに対応が進んでおり、ビジネスインテリジェンスの機能を提供する「BW」やその上で機能する「SEM」(戦略的企業経営)などをERPと同じサーバ上で稼動できるようになった。NetWeaverのESA対応は2006年までに完了し、さらに統合の度合いが高まるという。

 なお、SAPジャパンでは2005年末までに200社以上からmySAP ERPの受注を狙う。

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▼SAPPHIRE '04 New Orleans Report

[浅井英二,ITmedia]

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