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2004/05/24 22:20 更新


中古機器市場の支配も狙うCisco

Ciscoは、再生品を新品よりも25〜30%安い価格で販売するための営業部隊をひそかに編成している。顧客がCiscoやライバル製品のグレーマーケットに流れるのを防ぐのが目的だ。

 Cisco Systemsは、再生品を新品よりも25〜30%安い価格で販売するための営業部隊をひそかに編成している。顧客がCiscoやライバル製品のグレーマーケットに流れるのを防ぐのが目的だ。

 Ciscoによると、同社の再生機器はコストが低いだけでなく、ライセンスとサポートを受けやすいという。中古ディーラーから購入したり、オークションを通じて購入した機器については、同社の保証やIOSソフトウェアのライセンス、サポート契約が適用されないからだ。

 Ciscoでは自社の中古製品を積極的に販売しようとしているものの、多くのユーザーは、Ciscoの正規チャネル以外の中古ディーラーが提供する50〜75%引きの値段に魅力を感じているようだ。この程度の価格であれば、Ciscoが中古製品のライセンスとサポートに対して設けている制約は障害にならないというユーザーもいる。

 Ciscoは先月、同社のリセラーがグレーマーケット業者やそのほかのベンダーの安売りに対抗する手段として、「Authorized Remarketing Program」を発表した。Ciscoによると、同社が2000年に開始した再生品プログラムは、中古市場に代わる選択肢を提供したり、低価格ベンダーに対抗することを意図したものではないという。CiscoではAuthorized Remarketing Programを通じた売り上げを公表していないが、同社の広報担当者によると、同プログラムは年々拡大しているという。

 Ciscoでビジネス開発とグローバル再生品マーケティングを担当するマネジャーのダグ・カーミン氏は、チャネルパートナー向けた最近のテレカンファレンスで、昨今の経済状況のせいでCiscoの顧客は同社製品の中古市場に目を向け、低価格の選択肢を探していると話した。Ciscoにとってもう一つの問題として浮上してきたのは、サードパーティーのリセラーがCiscoの既存の顧客に積極的にアプローチして、低価格の再生品を売り込もうとしていることだ。

 「さまざまな方面から多くの競争にさらされるようになってきた」とカーミン氏は話す。中古機器市場に加え、DellやHuawei Technologiesなどのように「機能よりも価格で」Ciscoに対抗しようとしているベンダーもあるという。

 カーミン氏によると、ある連邦政府機関が大規模案件の見積要請で、新しい「Catalyst 6509」スイッチの価格設定に難色を示し、大幅な値引きを提供したFoundry Networksの製品を検討したらしい。「Catalyst 6000の再生品を提示したら、契約を取り付けることができた」と同氏は話す。これは100万ドルを超える案件だったという。

 さらに同氏によると、正規のチャネルからCiscoの中古機器を購入している企業は、ソフトウェアのライセンスとサポートを受けやすいという。Cisco Authorized Refurbished Equipment製品にはライセンスとサポートが含まれているからだ。

 「eBayなどのオークションサイトから機器を購入した場合、Ciscoの保証の適用外になるだけでなく、サポートを購入するには、あらかじめソフトウェアライセンスを購入し、マシンがきちんと動作していることを確認するために料金を払ってCiscoの検査を受ける必要がある」とカーミン氏は話す。

 Ciscoはこの検査の料金を明らかにしていない。

 さらに同氏は、中古機器の再販を手がけている業者に関して、「この市場は2〜3社の巨大ベンダーで占められているのではなく、多数の中小ベンダーがひしめいている状態だ」と指摘する。

 Googleで「中古のCiscoルータ」を検索すると、何百という項目がヒットする。中古機器業界の大手ベンダーの1社であるNetwork Hardware Resellers(NHR)では、企業ユーザーや通信事業者、リース会社からネットワーク機器を買い取り、それらを調整した上で企業ユーザーや通信事業者に再販している。NHRは自社の再生品に対して90日間の保証とIOSソフトウェアのライセンスを提供している。またユーザーは、NHRを通じてCiscoのサポート契約「SmartNet」を購入することもできる。創業4年の同社によると、昨年は5000万ドルの売り上げがあったとしている。同社は業務用製品を専門に扱っており、販売する機器の95%が企業向けだという。

 NHRの創業者のチャック・シェルドン社長によると、同社はCiscoと「微妙な」関係にあるという。

 「Ciscoは、当社のようなベンダーから機器の購入を検討している顧客を妨害するのに躍起になっている」とシェルドン氏は話し、保証とサポートを取得するには、中古機器の再ライセンスを取得し、Ciscoの技術者による検査を受けなければならないとする同社の条件を指摘している。

 CiscoはNHRなどの業者をグレーマーケットとして分類し、顧客に対してこれらの業者を利用しないよう注意を呼びかけているが、シェルドン氏によると、NHRはCiscoと顧客の両方にプラスになっているという。「われわれは良い価格でユーザーに製品を提供し、彼らをCiscoの顧客としてつなぎ止めているのだ。これはCiscoにとって悪いことだろうか。われわれはNortelや3Comの製品を売っているのではないのだ」と同氏は話す。

中古でもOK

 カリフォルニア州オレンジにあるSt. Joseph's Health SystemもNHRのユーザーだ。同病院はIT管理アウトソーサーを通じて、本業務用と予備用に「Catalyst 6500s」と「7500」ルータおよび「2900」スイッチを購入した。

 機器の購入から運用まで同病院のIT業務全般の管理を請け負うPerot Systemsのシニアネットワークアーキテクト、ロバート・バンブーレン氏は、「NHRを通じて購入することにより、予算の制約にもかかわらず多くのネットワーク機器をアップグレードすることができた。この方法は、少ない費用で多くの成果を手に入れることを可能にする」と話している。

 オンライン証券会社のHold Brothersで先端技術を担当するクリス・ルーカスCTO(最高技術責任者)も、中古機器を購入している。

 「これまで多数の中古機器を購入したが、どれも欠陥はなく、中には工場で密封されたボックスに入ったままの製品もあった。中古製品は絶対お勧めだ。本業務用に使うのでなければ、予備やテスト用として利用するのもいい」とルーカス氏は話す。

 ルーカス氏は、Ciscoが中古機器に対してライセンスやサポートを提供していないのは問題だとしている。中古機器にもIOSライセンスとサポートが継続適用されることを望む同氏は、Ciscoの方針はユーザーに対する懲罰的措置だとみている。

 「Ciscoはなぜ、MercedesやLexusの中古車のように高い再販価値を維持するという方針を採用しないのか。同社は再販価値をゼロにすることで、新製品と中古製品の競合を避けたいと考えているようだ。しかし残存価値がゼロだというのなら、その機器には元々どのくらいの価値があったのだろうか」(同氏)

中古では満足しないユーザーも

 調査会社のGartnerでは、個々の製品について中古機器の売り上げを把握してはいないが、ルータ、スイッチ、通信装置などの各種の中古機器全体の今年の市場規模は約16億ドルで、来年には17億ドルに伸びる見込みだとしている。

 Gartnerの上席アナリスト、ローレンス・オーランズ氏は、「大手企業はまだ中古機器市場を受け入れようとしていない。しかし人気商品が出そろい、在庫も十分あるという状況になれば、多くの中小企業は中古チャネルを通じて必要なものを低価格で手に入れるようになるだろう」と話す。

 しかし中古機器にはリスクがあるとして、新品のCisco機器を好むユーザーも少なくない。

 コネティカット州のWaterbury病院のジム・オルソンCIO(最高情報責任者)は、「新品以外を購入するつもりはない」と話している。同病院では、超音波機器や放射線装置から電話に至る広範な種類の機器をCiscoのLAN上で運用しており、中古機器でリスクを冒す価値はないという。「製品には故障までの平均時間があり、以前使われていたものを再利用するということは、新品のときよりもその平均時間に近づいているはずだ」(オルソン氏)

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