SunNetworkアジア初開催、「ネットワークこそがビジネス機会を創造」とジョナサンCOO

アジアでは初開催となるSunNetwork Shanghai 2004でジョナサンCOOは、「ネットワークこそがビジネスの機会を創造」と話した。Sunは創業の原点に立ち戻り、さらに前進を始めようとしている。なお、富士通と次期SPARC/Solarisサーバを共同開発することも明らかにされた。

» 2004年06月02日 20時13分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「SunNetwork Conferenceがようやくアジアにやってきた」

 Sun Microsystemsでアジア太平洋地域を統括するジェイ・ピューリ上級副社長は6月2日朝、「SunNetwork Shanghai 2004」のオープニングで開口一番、こう切り出した。昨年、SARS(重症急性呼吸器症候群)のあおりを受け、直前になって中止を余儀なくされた上海国際カンファレンスセンターでの開催だが、中国はこの1年のあいだにさらに長足の成長を遂げ、「世界の工場」から「市場」へと変貌した。既にインターネット人口が1900万人、携帯電話加入者は2000万人に達している。

 早朝から3000人を超えるが顧客やパートナーらが詰め掛けたキーノートに登場したのは、この4月、社長兼COOに昇格したばかりのジョナサン・シュワルツ氏。彼のお披露目でもある。

購読モデルの典型は携帯電話。「Windows PCで儲けた会社をあまり聞かないが、Java搭載携帯電話なら100社は下らない」とシュワルツCOO

 「ネットワークこそがビジネスの機会を創造し、その価値を高めてくれる」とシュワルツ氏。同社は創業当初から「The Network Is The Computer」というビジョンを掲げてきた。20年前の原点だ。彼はそれを話すことで、Sunが新しいビジネスモデルへ顧客らを導くことができるリーディングベンダーであることを強く印象付けようとした。

 昨年9月のSunNetwork 2003 San Franciscoで、既に同社の新しい顔としてキーノートに登場していた彼は、そのときと同様、携帯電話の着メロが20億ドルという巨大市場を形成していることを引き合いに出し、「購読」(サブスクリプション)モデルが新しいビジネスを創造していることを強調した。

 「だれがこんなこと予測できただろうか?」とシュワルツ氏。

 この「予測不可能」こそ、ビジネスをより魅力的なものにしてくれることはない。いわゆる「大ばけ」だ。このSunNetwork Conferenceが開催されている上海の新しいビジネス街、浦東(プートン)はそれを最もよく体現している。天にも届かんと、100階を超えるホテルや巨大なテレビ塔がそびえる摩天楼をだれが想像できただろうか?

テクノロジーが商業化のカギに

 しかし、予測もできない爆発的な成長の波に乗るには、やはりテクノロジーが不可欠だとシュワルツ氏は話す。

 「例えば、ネットワーク上で個人を認証する技術がなければ、課金はおぼつかない。技術は、セキュアであること以上に大きな経済的なチャンスをもたらしてくれるのだ」(シュワルツ氏)

 ネットワーク自体が「消費される商品」となり、「ビジネスモデル革新の基礎」となるネットワークエコノミーでは、携帯電話端末が無料で配布されることもあるのはご存じのとおりだ。サブスクリプションモデルによって自動車市場が変化を遂げても不思議はないとシュワルツ氏は話す。

 「ネットワークにつながり、新作映画が配信されるといったサービスが豊富になれば、“クルマはフリー”ということも夢じゃない」(シュワルツ氏)

 ならば、データセンターも?

 かつてマッキンゼーのコンサルタントとしてキャリアをスタートさせた彼は、そんな突拍子もないビジネスモデルをこのIT業界にも当てはめようと考えている。

 「Java Enterprise Developer Promotion」がその筆頭だ。Javaデベロッパー向けの各種ツールを3年間サブスクリプションしてくれれば、ハードウェアが付いてくるというもの。年間1499ドルを支払えば、AMD Opteronを搭載した最新のエントリーサーバ「Sun Fire V20z」が無料になるという。

 企業顧客向けということでは、データセンター向けの100以上のサービスを1つにまとめ、サブスクリプション形式で提供しようという「Sun Preventive Services」や、使用量に応じて料金を支払うユーティリティー型のストレージソリューション「Sun Utility Computing for StorEdge Systems」も発表されている。

1Mバイト当たり2セント、市民一人当たり33セント

 今月から提供が始まる後者は、エンタープライズクラスのストレージアレイ「Sun StorEdge 9980」を使い、1Mバイト当たり月額わずか2セントからという。ハードウェアやソフトウェアはもちろん、関連サービスも組み込まれている。Sunでネットワークストレージグループを率いるマーク・キャネパ執行副社長は、「受話器を取れば、ダイヤルトーンが聞こえる電話と同じ」と話す。

 やはり昨年9月のサンフランシスコ開催でベールを脱いだJava Enterprise System(コードネーム:Project Orion)は、「従業員一人当たり年間100ドル」という単純明快、かつ極めて安価な価格が話題となったが、「市民一人当たり年間33セント」という破格の値付けまで飛び出した。これは、発展途上国の政府や地方公共団体を支援するのが狙い。

 「もっと多くの人をネットワークに参加させたい。もっと多くの人にネットワークを介して価値を提供したい」とシュワルツ氏。

 同社は富士通との20年来の提携関係をさらに強化し、次期SPARC/Solarisサーバ(コードネーム:Advanced Product Line)を共同開発することで合意していることも明らかにした。2006年半ばには共同開発された新しい製品ラインが市場に投入されるという。

 Sunは「The Network Is The Computer」という原点に今再び立ち戻り、次の20年に向けてさらに前進を始めようとしている。

 なお、N1 Grid Containersツールを使い、単一のシステムを8000以上の仮想システムに分離できる機能などが追加されたSolaris 10のプレビュー版や、ポリシーベースでデスクトップ環境やアクセス権を制御できるようになったJava Desktop System Release 2がステージでデモされ、会場は拍手で沸いた。

富士通を代表して伊藤千明常務がステージに招かれた

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