SAPジャパン、企業の人事部と事業部を密に連携させる新たな取り組み

SAPジャパンは、人事事業向けの取り組みを強化すると発表した

» 2004年06月03日 02時41分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 SAPジャパンは6月2日、都内で記者発表会を行い、人事事業向けの取り組みを強化すると発表した。7月5日に「mySAP ERP HCM(Human Capital Management)」の出荷を予定、同事業向けの専任組織「HCMビジネスディベロップメント」も新設する。さらに、パートナー企業との協業関係も強化する。また、人事事業だけで適用される新ライセンス体系「ESS(Employee Self Service)/MSS(Manager Self Service)」も、6月1日から提供を開始する。

 同社は、2006年度12月までに、人事ソリューションのユーザー企業を新規に125社、累計では377社へと拡大することを目標としている。

 発表会で藤井清孝社長は、HCMビジネスディベロップメントで部長を務める三村真宗氏について、「SAPのCRM事業を立ちあげた人物。この起用が、これまであまり注力してこなかったHCM分野にSAPジャパンがコミットすることを示していると理解してほしい」と話す。2003年末時点で、R/3のユーザー1200社の中で、HCMを導入している企業はわずか21%の252社に止まっている。同社はこの状況を改善し、SAPグローバルの平均導入率である40%にまで引き上げたい考えだ。

 ただし、日本で人事分野へのHCM導入率が低かったことには、幾つか理由が考えられる。データを一元的に共有して、リアルタイム性のある業務プロセスを構築することがERP導入の最大の効果であるが、従来の人事業務では、会計や販売、生産管理といったデータをリアルタイムに扱うことをあまり要求されていなかった。また、人事業務だけは、ほかのシステムと独立させておきたいという意図もあったようだ。

 そのため、ERPとしてR/3を導入しても、人事については国産パッケージを採用し、コスト効率を重視するケースも多かった。

次世代の人事システムのあり方

 そこで同社が打ち出す製品が、「次世代型人事」なるHCMだ。三村氏は、従来のニーズは定型業務の自動化、省力化であり、それには人事の単体パッケージでも対応できると説明する一方、「今後は人事部と事業部門がもっと連携するようになる」と話す。

 例えば、これまでは、営業やマーケティングといった事業部門の要員の配置の決定は、人事部が下すことが多かったが、今後は、事業部門が自律的に人材の管理を行う形が主流になってくるという。それぞれの社員が持つスキル情報なども共有することで、適材適所の人材配置が可能になってくる。

 さらに、福利厚生などのセルフサービス、目標管理、キャリア形成、スキル管理、e-ラーニングなど、事業部と人事部が連携しなてくは実現しない取り組みが一般化しつつあり、こうした観点から製品を考えた場合に、同社のHCMなどの優位性が見えてくるわけだ。

 SAPのアークテクチャとして、人事分野のシステムを考えてみる。従来は、各事業部や個人ごとに異なる手続きや画面を通じて、データが給与システムや経費処理システムなどに流入していた。SAPのアーキテクチャを採用した場合、まず各事業部のプラットフォームの違いは、NetWeaverによって吸収される。その上で、my SAP ERP HCMの給与計算、人材データ、組織データといった各機能を使うことで、複雑性を排した人事システムを構築できる。

新ライセンスの登場

 この日発表された新ライセンスESS/MSSは、人事部の従業員だけがライセンスを持つ従来型の体系に変化を加えたもの。人事部の従業員は、これまで通りHCMのフルライセンスを有するが、一般の社員にも制限された形でHCMのライセンスが与えられる点が異なっている。これにより、一般社員は、自律的に人材管理を行うために、ポータルを通じて人事システムにアクセスし、許可された範囲で人事業務を実施することができる。

 ESS/MSSの特徴は、利用できるアプリケーションの範囲が浅いことに対応して、一般社員向けのラインセンス単価が低く設定されていること。また、全従業員数を把握することが困難であることを考慮して、ユーザー数をロット単位に丸め、大まかに決める「ロットディスカウント制」も取り入れている。

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