富士通との提携がもたらすものは――Sun EMEAトップが語る

「世界で最も提携を進めている企業」。SunのEMEA(欧州、中東、アフリカ)地域責任者エリー・サイモン氏は同社をこう表し、富士通とのサーバ提携や、買収に出る可能性を語った。(IDG)

» 2004年06月04日 19時02分 公開
[IDG Japan]
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 Sun Microsystemsが今週、2006年に登場する次世代SPARCベースサーバの開発と流通で富士通と提携したことを、アナリストは実利的だと賞賛。Sunはこれにより、コストを削減し、「スループットコンピューティング」の推進により力を入れつつも、SPARCの灯を絶やさずにいられると評価している。

 このSunの最新の提携はビジネス的にプラスになると各方面で見られているが、同社のEMEA(欧州、中東、アフリカ)担当バイスプレジデント、エリー・サイモン氏は、これは最終的に顧客に恩恵をもたらし、同社のスループットコンピューティング戦略が奏功すれば、顧客により低いコストでさらなるシステム性能が提供されると主張している。

 サイモン氏は6月3日、IDG News Serviceに対し、富士通との提携がSunだけでなく同社の顧客におよぼす影響、この提携がEMEA地域でどんな意味を持つか、さらに同社の次の大きな動きは、提携ではなく買収かもしれないと語った。

――Sunがこの提携により、富士通と開発、製造、流通で力を合わせることで恩恵を受けるのは確実と見られています。この提携によるコスト削減を顧客に還元するつもりですか?

エリー・サイモン氏 ええ。当社の競争力は確実に高まるでしょう。これら製品(SPARCサーバ)の開発コストを(富士通と)シェアしますから、われわれ両社にも、エンドユーザー向けの価格にも影響します。また当社は、スループットコンピューティングとスーパーコンピューティングに本格的に集中できるようになります。これは明らかに顧客のメリットになります。データ負荷の高いアプリケーションで30倍の性能が提供されるのですから。さらに当社は時間も節約できます。当初は3〜5年でスループットコンピューティング製品を完成させる計画でしたが、今は「Advanced Product Line」(APL)と同じ2006年半ばの予定です(APLはSunと富士通の共同開発によるSPARCサーバラインのコードネーム)。

 半導体ビジネスは今、SPARC、IntelとAMDのx86アーキテクチャ、IBMのPowerによる三つどもえの競争になっています。私としては、これ以外のプロセッサは消えると思っています。OSも同じです。Microsoft、Red HatやSUSEのLinux、Solarisの3者が戦っています。提携に投資すれば、開発スケジュールを早められるだけでなく、ほか(の製品)が消えるスピードも速くなります。

――非常に密接に共同開発を行うことを考えると、富士通ブランドのAPLとSunブランドのAPLの競合が懸念されませんか?

サイモン氏 両者は常に競合していくことになるでしょう。自由市場なのですから。顧客にとって違いとなるのは、この技術から顧客がどのようにして恩恵を得るかです。その違いはISV(独立系ソフトベンダー)やこの市場のナレッジパートナーとの関係によりもたらされます。結局、当社が本当にやりたいのは業界に関する専門知識を築くことです。顧客は当社が彼らの業界をよく知っており、ISVとインテグレータに投資しているという事実を根拠に選択するでしょう。

――共同開発によるSPARCベースサーバの立ち上げまで、Sunと富士通は既存のSun FireとPrimePower製品ラインを提供していくわけですが、これは欧州での流通にどう影響しますか?

サイモン氏 富士通のブランドとプレゼンスは、特に同社のサービス部門を考慮に入れると欧州では極めて強力です。それをSunの力と合わせると、欧州最大級の勢力になるでしょう。互いの強みを補完し合うのです――例えば富士通はドイツで強く、Sunは英国に強力な市場を持っています。

 EMEAは今のSunのビジネスにおいて明るい材料となっています。昨四半期、EMEAはSunの売上高の37%を占めていました。1年半前は、この割合は30%でした。

――両社がSun FireとPrimePowerを販売するまでに、どのくらいかかりますか?

サイモン氏 向こう数週間以内に実現するでしょう。

――Sunは最近AMDのOpteronプロセッサをローエンドサーバに採用し、Microsoftとの長期にわたる紛争で和解し、そして今度は富士通との提携を強化しました。これらの提携は5年前から市場がどう変わったかについて、何を物語っているのでしょうか?

サイモン氏 5年前は戦いの時代でした。当社は今、顧客の要望に応えています。x86に関しては、Intelとの提携は適切ではなく、AMDと組むのが良いと考えました。Microsoftと和解したのは、相互運用性の壁を打ち壊す必要があったからです。そして富士通との提携により、新しいプロセッサとサーバの立ち上げが早まるのは明白です。当社は世界で最も提携を進めている企業で、以前からそうだったと主張したいですね。

――次の大型パートナーは?

サイモン氏 私としては、Sunはこれまで以上に買収に乗り出すと思っています。

――どこを買収するのですか?

サイモン氏 グリッド製品の導入を推進しそうな企業ならどこでも。当社はN1(ネットワークコンピューティング技術)で大きく前進しましたが、このグリッドを商用アプリケーションにする必要があります。

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