ウインドリバーは6月22日、組み込みLinuxの開発に対応した、Eclipseベースの統合開発環境「Wind River Workbench 2.0」の出荷を開始したことを発表した。
ウインドリバーは6月22日、組み込みLinuxの開発に対応した、統合開発環境「Wind River Workbench 2.0」の出荷を開始したことを発表した。
同社の代表取締役社長の藤吉実知知氏は、「デジタルコンシューマ市場のビジネスを展開していく第一歩。日本の組み込み家電の活性化を期待する」と話す。
Wind River Workbench 2.0は、同社のリアルタイムOS「VxWorks」用の統合開発環境であるTornadoおよび、そのオプションツール群で提供している技術をもとに、現在オープンスタンダードとなりつつあるEclipseフレームワークへのプラグインとして設計されたもの。
同日から出荷を開始したバージョン2.0では、ホストOSにRed Hat Enterprise Linux Workstation 3.0を利用可能で、ターゲットプロセッサはPowerPCアーキテクチャを実装するMotorolaのプロセッサ「MPC82xx」となる。また、ターゲットOSは次のようなものが検証済みとしている。
また今後、OS、特定マーケット向けのミドルウェア、そしてWind River Workbenchをパッケージ化して販売していくような構想もあるとしている。
なお、ホストOSに関しては、Linuxに関しては現状ではレッドハットのRHEL以外はサポートする予定はないとしている。しかし、Windowsなどへの対応は検討しているという。
組み込み向けの開発工程は一般的に、ホストOSの準備に始まり、ターゲットボードの立ち上げ、ブートローダの開発、カーネル・デバイスドライバの開発という流れで進み、その後にアプリケーション開発が行われる。
こうした流れの中では当然のようにデバッグ作業が発生するが、「Wind River Workbench 2.0」の特徴のひとつとして、「WDBデバッグエージェント」が挙げられる。これは、一般的なLinuxデバッグエージェントであるGDBと異なるのは、GDBがシステム(カーネル)デバッグとアプリケーションデバッグで異なるエージェントサーバ(それぞれKGDBサーバとGDBサーバ)を使用してGDBデバッガに情報を渡すため、作業において切り替えの手間が発生していたのに対し、WDBデバッグエージェントではそれらをワンボタンで切り替え可能。Wind River Workbenchとの通信はイーサネットまたはシリアル経由で行われる。
そのほかの特徴としては、マルチ環境を総合的にサポートするフレームワークを提供するとともに、マルチCPU、マルチプロセス、マルチスレッドなどを同時にデバッグ可能なことが挙げられる。
なお、同製品の今後のロードマップとしては、2004年11月にバージョン2.1、翌12月に2.2のリリースを予定している。ホストおよびターゲットプロセッサの拡充を図っていく一方、バージョン2.2ではVxWorks 6.0にも対応する予定。ターゲットプロセッサについても、x86を最優先に、MIPSやARMに対応させていくとしている。
マーケティング本部部長の宮園 充氏は、スマートデバイス搭載ソフトウェアの開発におけるLinuxの状況として、「開発ツールへの不満度が63%に達し、かつ、この分野で業績が好調なLinuxベンダーは0」と話す。しかし、今回の製品を発表することで、こうした状況は改善され、同社が推進するDSO(Device Software Optimization)――スマートデバイス搭載ソフトウェアの最適化――が達成されていくとしている。
また、これによりVxWorksの市場価値が薄れるのではないかという懸念に、藤吉氏は、「今回の製品をお客様に提案しに行くと、3件に2件の割合でVxWorksを志向される状態。実際には適材適所で選ばれていることが分かる。とはいえ、私たちはOSの会社ではなく開発をサポートする会社である」とVxWorksを捨て去るようなことはないと話す。
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