意思決定は常にデータの裏づけを――Cognos Forum開幕

ビジネスインテリジェンス大手の米Cognosは6月27日から30日までの予定で、米フロリダ州オーランドにおいて、同社の年次ユーザーカンファレンス「Cognos Forum 2004」を開催した。

» 2004年06月30日 15時22分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 ビジネスインテリジェンス(BI)大手の米Cognosは6月27日から30日まで、米フロリダ州オーランドにおいて、同社の年次ユーザーカンファレンス「Cognos Forum 2004」を開催している。企業内に蓄積するデータを使いこなし、営業、人事、マーケティングといったあらゆる業務を効率化する取り組みであるBIは、米国では知名度および実際の導入状況ともに進んでおり、多くの企業がその効果を同カンファレンスで発表した。

 参加者は前年より80%増の1800人に上り、日本からは富士通、日立東日本ソリューションズ、アシスト、リコーテクノシステムズなど、主に導入および販売パートナーの参加が中心になった。

Cognos Forumの展示場。PowerPlay、ReportNetのほか、日本ではまだリリースされていないEnterprise Plannningのデモも行われており、導入パートナーをはじめとする参加者でにぎわった(上)。「今回の参加者の多さに満足している。Cognosには今後大きな成長機会がある」と話すトム・マンリー氏。また、株価については現在は安すぎると笑った。

 初日の基調講演では、ロブ・アッシュCEOが、事情により急きょ講演をキャンセルしたことで参加者を驚かせたが、ユーザーを代表してスピーチを行ったFrost Bank、AmericanExpressが、企業全体からの観点から導入効果を紹介したことで、締まった内容になった。

 CognosでCFO(Chief Financial Officer)を務めるトム・マンリー氏は同カンファレンスを迎え、「ReportNetの登場により、BIプラットフォームは新しい時代を迎える。」とする。従来は、企業システムにはさまざまなソフトウェアが混在していたが、今後はそれらの「“標準化”がますます進む」という。

 ユーザースピーチのトップを飾ったFrost Bankのエグゼクティブ・バイスプレジデント、ルイス・ボストン氏は「最初は1人か2人の有志で導入を検討した」と話す。米サンアントニオをベースにするFrost Bankは、テキサス州全域で、企業および個人向けに銀行業務を行っている。設立は1868年、日本の年号なら明治元年に当たる。

 同社には、従業員が情報にすばやくアクセスする環境を構築し、顧客対応などの業務プロセスを効率化すると同時に、情報を引き出すためのコストを削減したいというニーズがあった。

 そこで、基幹システムからTeraDataを用いてデータウェアハウスを構築し、そのデータを従業員が必要とする角度から利用するために、CognosのレポーティングツールであるReportNetを導入した。これにより、顧客対応の改善やデータへのすばやいアクセスといった要件だけでなく、小口セールスの目的を管理したり、データの品質の管理など、業務をさまざまな形で管理できるようになったという。ツールによりデータを生きたまま活用できるようにしたことで、業務が可視化したことが最大の要因となったわけだ。

 一方、AmericanExpressのビンス・ネリノ氏は、「ビジネスの未来を予測してプランニングする」という同社のシステム改革におけるテーマに、Cognosを採用することで取り組んだ。これは、ビジネスインテリジェンスによって、日々のデータの変化を捕らえることで状況を把握し、業務など各種の計画、意思決定、リソースの割り当て、会計プロセスの再設計、企業文化の変革などを行っていこうとする活動だ。

 ここでも、可視性がキーワードになる。データを基盤に、業務が可視化されているため、「意思決定がトップダウンでもボトムアップでも両方で可能になった点に満足している」とネリノ氏。同社は、日本ではまだリリースされていないEnterprise Planningなどの製品を活用した。

 企業が蓄積するさまざまなデータを統合し、実際の業務プロセスを可視化させ、企業内の各部門が経営戦略が目指す方向に沿った取り組みを行うことを支援するコンセプトを、ガートナーは「CPM(Cooporate Performance Management)」と呼ぶ。同社は、CPMを「企業のパフォーマンスを監視・管理するための手法、評価基準、プロセス、システムの総称」と定義。2006年までに年商10億ドルを超える企業の70%が、従来型アプリケーションとBIツールの融合により、CPMを実装することになるとしている。

 CPMにより、企業は、企業活動における複雑性、リアルタイム性、縦割り型パフォーマンス管理の問題点、経営の透明性への要請、リスク管理要件の厳密化、株主価値向上のための迅速で正確なディスクロージャーといった要求に対応できる。

 BIは、導入した場合の効果の高さと、企業における認知度が乖離している印象が日本では特に強い。企業が他社への差別化を図る場合のシステム対応としては、最も即効性のある選択肢の1つと言える。

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