Microsoftの歴史的戦いはついに終わるのか

独禁法訴訟の最後の闘士マサチューセッツ州は、司法省とMicrosoftの和解を支持する判決への上訴を考えている。しかし専門家は「最高裁に控訴しても同州が勝つ可能性はほとんどない」と指摘する。(IDG)

» 2004年07月02日 15時31分 公開
[IDG Japan]
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 Microsoftへのより厳しい是正措置を求めていた訴えを米控訴裁判所に全面的に退けられた米マサチューセッツ州は、この決定を不服として上訴するかもしれない。しかし法律専門家たちは、6月30日に下された、長期に及ぶ独禁法訴訟の和解条件を支持する満場一致の判決を受け、今後同州が勝ち星を上げる可能性は望み薄としている。

 実際、原告・被告側の双方とも、この歴史的訴訟が終結しつつあると強く感じていた。今の問題は、この明白な「終わり」が、Microsoftにどのような影響を与えるかにある。控訴裁の判決は、Microsoftと、米司法省ならびに当時この訴訟に関わったほぼすべての州が合意に至った2002年の和解条件を確認した。

 「今後彼ら(Microsoft)は少しばかりアグレッシブになるだろう」と話すのは、反Microsoft業界団体ProCompのマイク・ペティート社長だ。同団体は独禁法訴訟の和解条件よりも厳しい是正措置を支持している。「彼らは今なお、業界に危害を及ぼす可能性がある」

 「『Windowsに搭載できるのはどんな機能か?』と問うた答えが、『Microsoftが搭載したいと思うものすべて』だ」と同氏。和解条件では、これについて「一切の制限を課していない」とも。

 一方、米ニュージャージー州にあるSchindler ElevatorのITディレクター、アショク・バクシ氏は、独禁法訴訟は確かにMicrosoftの振る舞いに何らかの影響を及ぼしたと見る。

 同氏によれば、「(Microsoftは)交渉の場で、以前ほど横柄な態度を取らなくなった」という。しかし司法省による監視がなくなれば、「昔のやり方に戻るかもしれない――大手企業はそういうものだ」

 和解に応じていない唯一の州であるマサチューセッツ州、ならびに2つの業界団体――Computer & Communications Industry Association (CCIA) とSoftware and Information Industry Association (SIIA)――は和解条件が不十分であると主張、より厳しい是正措置を求めていた。彼らが求めていた是正措置には、Internet Explorer(IE)ブラウザをオープンソース化すること、OfficeをLinuxなどほかのOSに移植することなどが含まれていた。このほか、Media Playerなど一部の搭載機能をOSから切り離すことも要求していた。

 30日の判決は、この問題をめぐる法的な争いに終止符を打つものだと、専門家たちは見ている。

 シカゴのMuch Shelist PCで独禁法問題を担当し、1998年からこの訴訟を観察してきたヒラルド・スターリング弁護士は次のように語っている。「最高裁に控訴しても、原告側が勝つ可能性はほとんどない。ほぼ確実に、最高裁はこの訴えを受理することにさえ関心を示さないだろう」

 Microsoft幹部陣は、30日に行った電話会見で、この日の判決は、同社にとって独禁法訴訟の解決に向けたこれまでで最も重要なものだと語った。同社は現在、欧州で独禁法問題に直面しているほか、米国内でいくつかの集団訴訟を起こされており、後者については個別に和解を成立させている。実際、今週には、マサチューセッツ州アリゾナ州で起こされていた集団訴訟が和解に至った。ただしマサチューセッツ州の集団訴訟の和解は、同州が30日の判決を不服として上訴するかどうかの決定に直接影響を与えるものではない。

 30日の判決は、「Microsoftとこの業界が、この和解条件と判決を実践しながら前進できることを明確にした」とMicrosoftの上級副社長兼法務部長のブラッド・スミス氏は語った。

 同氏によれば、この判決は実質的に、MicrosoftのOS戦略を支持するものだという。「控訴裁は、Windowsからコードを取り除くことが大きな後退を意味することを明白にしたのだ」(同氏)

 マサチューセッツ州検事総長トーマス・ライリー氏の広報官サラ・ネイサン氏は、同州は上訴を検討中だが、担当者が83ページの判決文を完全に評価するまで決定は下さないと語った。

 米ボルティモア大学ロースクール教授で独禁法に詳しいボブ・ランデ氏は、今回の控訴裁の判決は予想通りであり、もし反対の判決であったら衝撃を受けただろうと言う。司法省が合意し、地裁が支持した和解条件よりも厳しい措置を、連邦裁判所が言い渡す可能性はほとんどないと同氏は話している。

 より厳しい是正措置を課す判決が下される「可能性は極めて、極めて低かった」と同氏は言い添えた。

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