Lotus Notesからの移行を考える第十一回(1/2 ページ)

グループウェア製品として大きなシェアを誇るLotus Notesは、国内においても導入の事例は数多い。社内基盤として普及しているこのNotesから、オープンで拡張性の高いプラットフォームへ移行するメリットとは何か?

» 2004年07月20日 14時00分 公開
[吉川 幸比古,ITmedia]

 グループウェア製品として、世界的に最も有名なソフトウェアはLotus Notes(以下Notes)だろう。このジャンルの先駆としてさまざまな分野で数多くのユーザーを抱えており、特に日本の大企業においてはこのNotesの採用事例は多く、依然として大きなシェア(例えば都市銀行では100%、官公庁でも70%超)を誇っている。

 ところが、ここにきてNotesユーザの先行きに暗雲が立ち込めてきている。ご存じのとおりLotusは既にIBMによって買収済みであり、NotesもIBMの戦略商品としての位置づけのもとで今後のロードマップが示されている。だが、最近のIBMはLotusプラットフォームのJ2EE基盤への移行の流れを加速させつつある。すなわちIBMのもうひとつの戦略商品であるアプリケーション構築基盤の、WebSphereへの統合戦略である。

 また、Notesが最も販売数を伸ばした時期のバージョンであるR4.6系およびR5系のサポート切れ時期が近づいてきたこともあり、ユーザはここ数年の間に社内のNotes基盤をどうするかという決断を迫られている

Notes普及の経緯と環境変化

 Notesが販売開始された当時は、その機能面における圧倒的な競争力は絶大なものであり、他に選択できる製品はないに等しかった。特に当時の細い回線をベースとした企業ネットワーク環境では、Notesの持つサーバの分散配置の思想や柔軟なレプリケーション機能は、企業にとって魅力的なものであった。またこのころのWindowsシステム環境下では、端末側にリッチなGUIを持った専用のクライアントソフトを配置するというアーキテクチャが一般的なものであった。

 ところがその後、企業の社内ネットワーク環境は飛躍的に改善され、その帯域はK単位からM単位を一気に飛び越えG単位で語られるようになった。この結果、社内基盤の維持費の構成内容も、回線費よりはむしろ人件費のほうがウエイトが高くなってしまった。

 この帯域の拡大にともなって、多くの企業ではインターネット技術に準拠したイントラネットの構築が進められた。社内ネットワークのプロトコルも、インターネット標準のTCP/IPが一般的なものとなった。そしてイントラネットの普及によって、企業内のNotes以外のシステム状況も一変したのである。社内の各部門や業務別に、手軽なホームページを構築して情報やノウハウの発信が行われたり、スケジュールや会議室予約などのWebアプリケーションの導入、さらには既存の基幹系システムのWeb化が進められたのである。

 ユーザの立場からは、このような社内システムとNotes上の情報は、同じインタフェースで使いたいというニーズが生まれるのは当然だ。Notesでは独自のアーキテクチャを使っており、ユーザーインタフェースは独特である。だが、一般社会へインターネットが普及した今、ユーザーが日常利用しているインターネットと同じテクノロジーのPOP3やIMAP4を使って社内メールを操作したいという声が上がるのは自然な流れとも言える。

 社内システムにアクセスする端末についても、社会全体のモバイル化に相伴って多様化が起きている。社内の各種情報に対して、社外からPDAや携帯電話を使ってアクセスするという業務スタイルはもはや一般的なものになった。こうした多様な端末への対応という面では、専用クライアントというNotesのアーキテクチャでは、クライアントソフトの開発などでどうしても対応が後手に回ってしまう。昨今の端末は標準的にWebブラウザが組み込まれており、このWebブラウザでのアクセスが最も手軽で安価なアクセスだといえる。

 こうしたユーザーインタフェース部分の不満については、LotusもDominoを出荷してWebブラウザを経由したNotesへのアクセスを実現したものの、実際にはそのインタフェースはお世辞にも使い易いとはいえず、根本的な課題解決には至っていない状況である。

Notesを社内基盤として使う問題点

 Notesの運用環境面ではどうだろうか?

 Notesはそのコンセプト上、導入してから時間の経過とともにデータベースが社内に乱立化していく傾向を持っている。プロジェクト単位、組織単位といったようにデータベースを目的別にどんどん立ち上げた結果として、社内には無数のデータベースが乱立化し、ユーザーから見ると必要な情報がどこにあるのか分からないといった状態になる。

図1■ノーツユーザは社内のデータベースの氾濫に悩まされている

 Notes利用ユーザーを対象にしたアンケートで、必ずあげられる不満の代表的なものに検索機能の弱さがある。これは、Notesではデータベースをまたがった横断的な検索や、文書に貼り付けられた添付ファイルを含めた検索ができないことに起因している。結果的にユーザは必要な情報を手に入れるために多大な労力を払うこととなる。

 次にNotesの運用を行っている社内情報システム部門の視点で考えてみる。

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