「IBMを追い抜くまで私の役割は終わらない」とOracleのフィリップス社長Interview

Oracleが総帥エリソン氏のカリスマに依存しない企業づくりを進める中、フィリップス社長から強気のメッセージが聞かれ始めている。Oracle OpenWorld Shanghaiでは、SAPを追い抜くのは時間の問題とし、さらにIBMを追い抜くまで私の役割は終わらないと話した。

» 2004年07月21日 13時05分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 昨年5月、ウォール街のスターアナリストからOracle入りしたチャールズ・フィリップス氏は、Peoplesoft買収を仕掛け、派手なデビューを飾った。この1月には早くも営業やマーケティングを統括する社長に昇格し、創業者であるラリー・エリソンCEOのカリスマに依存しない企業づくりの一翼を担う。歯に衣着せぬエリソン氏に負けず、「IBMを追い抜くまで私の役割は終わらない」と同社のメッセージを喧伝し始めたフィリップス社長に「Oracle OpenWorld Shanghai 2004」で話を聞いた。

メッセージは野心的だが、まだまだ語り口は控えめなフィリップス社長

── Oracleの社長に昇格して6カ月が過ぎました。昇格するにあたって何をやりたいと考え、そしてどこまでできたと思っていますか。1月のOracle AppsWorld San Diegoでは、「創業から30年近いOracleだが、IBMに比べたらまだまだ若い」と話していましたね。

フィリップス Oracleはとてもエキサイティングな企業です。しかし、私の目標は、IBMよりOracleを大きくなることです。そのためには、Oracleはもっと売り上げを伸ばし、そしてIBMには縮小してもらわなければなりませんが、いずれにせよ、それまで私の役割が終わることはありません。

── 社長として次なる成長戦略を打ち出していくことが期待されていると思います。具体的に話をしてもらえませんか。

フィリップス われわれは会社を成長させていくことにフォーカスしており、それは事業のすべての分野において成長を図っていくのですが、中でもグリッドコンピューティングへの移行が柱となります。グリッドコンピューティングによって企業のシステムをより低価格にしていくことがOracleを次なる成長に導いてくれると思います。この40年、企業はメインフレームに代表される高価で大型なコンピュータによってシステムを構築してきましたが、Oracle 10gのグリッド技術を使えば、低価格なIntelベースのPCサーバとLinuxを活用して堅牢なシステムが構築できるようになります。

 グリッドは、複数のPCサーバを1台の大きなコンピュータとして仮想的に見せる技術です。(システムごとに孤立する)ITのインフラを最適化したいと考えている企業にとっては、こうした技術は魅力的だと思います。コモディティー化したPCサーバを活用することによって、コスト削減というメリットも享受できるからです。こうした技術を競合他社は提供できていません。

次なる成長戦略

── 6月からスタートした2005会計年度では、「Go for growth」を掲げ、営業利益率の改善に加え、売上高自体の増加を目指していると聞いています。具体的な施策を教えてください。

フィリップス ローエンドに参入し、中小規模の企業顧客を増やしていくことや、先ほども触れましたが、グリッドコンピューティングによってハードウェアのコストを引き下げ、Oracle製品の導入を促進していくことが、売り上げの増加につながると思います(Oracle、グリッド好調で増収増益参照)。

 また、われわれにはソフトウェアの完全なスイートがあります。それは、「あらかじめ組み立てられた」(Pre-Assembled)ソリューションです。(あらかじめ組み立てられた、動作保証済みのセキュアな構成である)テクノロジースタックである「Oracle Stack」は、企業顧客にとって価値のあるものです。彼らは、数百のベンダーから製品を購入し、自らそれらをインテグレーションすることは望んでいないからです。

 人手による作業をなくし、市場のすそ野を拡大していく、それがわれわれのアプローチです。

── 1社からすべてを購入することに対して顧客らの抵抗はないのでしょうか?

フィリップス われわれは顧客らがビジネスプロセスを自動化するためのすべてのインフラ技術をそろえています。データベースからアプリケーション、ビジネスインテリジェンス、そして重要な管理ツールまであります。それらは、あらかじめ組み立てられたスタックであり、顧客は部品をいちいちインテグレーションしなくて済みます。

 これがIBMであれば、多くのコンサルタントを送り込み、高い金額を請求することになると思います。エンタープライズアプリケーションの分野ではSAPの後塵を拝していますが、それは彼らが先にビジネスを始めたからで、追い抜くのは時間の問題です。

── Asianuxを「Unbreakable Linux」にしていくことが、今回のOracle OpenWorld Shanghaiで大きくクローズアップされています。Asianuxの意義を教えてください。

フィリップス Linuxをベースとしたソリューションの質を高めていくために、われわれはサポートするLinuxの数を絞り込んでいく方針です。派生が多すぎれば、顧客にとっても、Oracleが負担するコストの面でもいいことではありません。

 しかし、われわれ自身がLinux OSを販売する計画はありません。Linuxは原則的に無償だと考えています。今や税金のようになっているWindowsのライセンス料金を節約できるのであれば、それはITインフラ全体のコストを引き下げることになります。(アジア地域で統一された)Asianuxをテコにし、より多くのOracle製品が採用されることを効率的に実現していきたいと考えています。

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