「スタンダードを教育し、素地を作るのが狙い」IBM、教育機関向けの新プログラムを発表

米IBMは7月20日、教育機関に有償・無償の支援を提供する新プログラム「IBM Academic Initiative」を発表した。オンデマンドスキルを持った学生を教育していくのが狙いとなる。

» 2004年07月21日 20時31分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 すでに速報でも報じたとおり、米IBMは7月20日、「Rational Software Development User Conference 2004」にて、教育機関に有償・無償の支援を提供する新プログラム「IBM Academic Initiative」を発表した。同プログラムでは、学生にオープン標準技術とIBM技術を習得してもらう目的で、プロジェクトベースのカリキュラムを組むことを狙いとしている。

 対象となるのは、Java、Linux、Eclipseなどのオープンスタンダードな技術、およびIBMのソフトとサーバ技術を支持し、こうした技術の習得コースを設けている大学やコミュニティカレッジ、職業訓練校などの教育機関となる。すでに世界中で250校が選ばれており、速やかに1000校規模に拡大していきたいとしている。また現在、そうしたカリキュラムを持っていない場合も、大学側にその意思があるのであれば、それをサポートしていきたいと話す。ハード、ソフトだけでなく、教材なども無償または低価格の有償という形でサポートされる。

 合わせて、ポータルサイトとして「Scholars Portal」を用意、ソフトやハード、教材を無償提供するプログラムを活用するほか、IBMがボランティアアーミーと呼ぶ技術者を派遣して各機関のITカリキュラムを評価し、教員やスタッフ向けの講習を行う。こちらでは低コストの教材やツールを大量に配布する方法を考えているという。

 この発表に際しては、同プログラムを受けているノースフェイス大学の学長兼CEOのスコット・マッキンリー氏などが招かれ、大学側のメリットを話した。

スコット氏 「テクニカルだけでなくビジネスも考慮したアプローチが必要」と話すスコット氏

「教育に携わる者として、大学で学んだことと、実際の開発現場とのギャップが大きいように感じていた。単にコーディングの技術だけに優れた学生では、実際はうまくいかないことが多い。それはチーム開発にはコミュニケーション能力なども求められるからだ。テクニカルだけでなくビジネスも考慮したアプローチが必要だと考えている。IBMの協力により、これらをカバーしたカリキュラムを提供できる」(スコット氏)

 オンデマンドを駆使できる人材の要求は米国だけでなく、グローバルベースで高まっている。品質も人材もまだまだ足りないていない現状で、将来を担う開発者をどこからどのようにリクルートするかはどの企業にとっても重要な問題と成り得る。最新のコンピューティング環境を利用し、これまで以上に実践的なカリキュラムを学生に対して提供することで、最新のコンピューティングに対応した学生を送り出せるのが大学側のメリットとなる。

「だからといってIBMの技術だけに特化したものを学ばせようとしているわけではもちろんない。問題なのは顧客のビジネスの問題であり、それはビジネスロジックを考えることであるともいえる。学生が別のプロセスが必要だと考えるならそれを提供すべきだろう。どのプロセスを使えという強制的なものになるわけではなく、スタンダードを教育し、素地を作るのが狙いなのだ」(IBMソフトウェアグループデベロッパーリレーションズ担当のジェネラルマネジャー、ブエル・ダンカン氏)

 しかし現在、ソフトの開発は中国などにオフショアとして投げてしまうことも少なくない。主に米国を中心に展開される同プログラムについて、その意義を尋ねられると、ダンカン氏は、

「確かにオフショアなどが多く行われていることは知っている。しかし、ビジネス問題を解決するために、システムデザインの部分はオフショアせずにしっかりと考える必要があるのではないか」と話す。とはいえ、できるだけ速やかに米国以外へ同プログラムを展開させるつもりであるとも言い添えた。

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