Cray、Opteronを搭載したHPC向けエントリー製品と「Red Storm」の進捗を説明

米Crayは日本AMDと共同で記者説明会を開催し、年末に投入予定のOpteronを搭載したHPC向けエントリー製品やOpteronをおよそ1万基使用した「Red Storm」の進捗状況について説明した。

» 2004年07月26日 08時12分 公開
[佐々木千之,ITmedia]

 米Crayは7月22日、日本AMDと共同で、同社の現状と年末にリリース予定のOpteronを搭載したHPC向けのラックマウント型エントリー製品などについて説明した。この説明会は1年ぶりで、昨年に続いて同社CTOのブライアン・コブレンツ氏が来日し、40TFLOPSを目指す超並列スーパーコンピュータ「Red Storm」の現状についても説明した。

 コブレンツCTOが最も力を入れて説明したのが、2月に買収を発表したカナダのOctigaBayの開発による、ラックマウント型HPCシステム「Cray XD1」。Cray XD1は高さ3Uの筐体内に、Opteron2基をSMP構成で搭載したカードを6枚、計12基搭載する。OSはCrayがHPC向けに拡張したLinux(カーネルは2.4.21)を採用。ピークパフォーマンスは53GFLOPS、1つのラックに12台収容できるので、ラックあたりのピークパフォーマンスは633GFLOPSとなるという。

Cray XD1のシャーシ内部 Cray XD1のシャーシ内部

 Cray XD1のOpteronには、それぞれCrayが開発した通信プロセッサRapidArray Interconnectが使用されており、筐体内部に設けられた24本の信号線RapidArray Linkによって96Gバイト/秒のスイッチファブリックを構成する。この仕組みによって、通信がボトルネックになることを避け、プロセッサの能力を発揮できるとしている。

 Cray XD1にはこのほか、あるアルゴリズムにおいて負荷の高い処理をプログラミングして受け持つことで、システムの処理能力を引き上げる、FPGAを使ったApplication Accelerrationサブシステムや、CPUカードのごとに動作状況を監視して、システムが正常に動作するよう管理できるActive Manager Systemも搭載している。

 Cray XD1は現在開発中で、第4四半期に少数の初期ユーザーに対して出荷を始め、2005年にはボリューム出荷を開始する予定。

 また、昨年発表され話題となった、米国エネルギー省のサンディア研究所に納入する、1万基以上のOpteronを使用した「Red Storm」の現在の進捗状況についても説明があった。

 コブレンツCTOによれば今四半期に最初の2500プロセッサのシステムを納入し、年内にはすべてのシステムを納入完了の予定で、2005年に稼働開始するという。Red Stormをベースとしたシステムは、カナダと米国(ピッツバーグスーパーコンピュータセンター)からの発注も受けたとのことだ。

 なお、CrayではOpteronとLinuxの組み合わせによるシステム以外にも、従来型のCray独自のベクトル型プロセッサを使った「Cray X1」も提供している。Cray X1の販売は好調で、5月には韓国気象庁への契約を勝ち取っている。2005年には1プロセッサあたりの処理能力を1.5倍にし、1システムあたりの搭載プロセッサ数を2倍にして、処理能力を3倍に引き上げた「Cray X1E」をリリース予定としている。

ブライアン・コブレンツCTO Crayのブライアン・コブレンツCTO

 さらにCrayは、米国エネルギー省のオークリッジ研究所との間で、ベクトル型プロセッサとOpteronを組み合わせた100TFLOPを目指すシステムを、2008年に納入するという契約を結んだという。詳細は明らかにされなかったが、これと別にDARPA(米国防総省国防高等研究事業局)の支援を受けて、2010年を目標に「Cascade」と呼ぶプロジェクトが進められており、これが終了するまでには1PFLOPSが視野に入ってくるとの見通しも明らかにした。

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