高付加価値通信サービスの基盤に――NICTと沖電気がOCDM伝送実験

情報通信研究機構と沖電気工業は、OCDM方式を用いての都市間多重伝送実験に成功したことを発表し、実験機器を公開した。

» 2004年07月28日 23時32分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 情報通信研究機構(NICT)と沖電気工業は7月28日、既に実環境で利用されているWDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)ではなく、OCDM(Optical Code Division Multiplexing:光符号分割多重)方式を用いての都市間多重伝送実験に成功したと発表した。

 この実験は、研究用ネットワークである「JGN II」を利用して実施された。東京・大手町のKDDIビルと茨城県つくば市の間(片道約100キロメートル)を折り返し、メトロエリアでの通信に十分と想定される距離でOCDM方式に基づく光波長の符号化/復号化を実現。10Gbpsの速度で2チャネル多重の通信を行った(1550nm帯の波長を5波長利用)。研究室レベルではなく、実際の運用形態を想定した実験ネットワーク上での伝送実験はこれが世界初という。

デモ 実験はKDDI大手町ビルとつくば市を結んで行われた。東京側には符号化機器(行き)と、折り返して戻ってきた信号を復号化し、ノイズを除去する干渉除去装置などが置かれた

 1本の光ファイバの上で、いかに多くの情報を伝送できるようにするか――この課題を前に、いくつかの新たな技術が開発されてきた。一定の時間ごとに異なるチャネルを割り当てるTDM(Time Division Multiplexing:時分割多重)に対し、チャネルごとに異なる波長を割り当てるWDMが登場したのも同じ理由からだ。

 これに対し今回実験が行われたOCDM方式は、チャネルごとに異なる「符合(パターン)」を割り当てる。この方式により、同一波長を同時に複数のチャネルに割り当てることが可能になる。

 OCDM方式のメリットは、単なる高速化だけではない。むしろ、ルーティングの柔軟性や符号による帯域保証、可変伝送速度の実現といった、より高度な通信が可能になる点に特徴があるという。また、通信時にはFBG(Fiber Bragg Grafting)という、特定の波長体の光を反射する特性を持った光ファイバを用いた光符号/復号機を利用し、波長の拡散符号化を行う。このことから、復号前の波形はランダム信号のような識別不可能な状態となり、通信の機密性を保てる点もメリットの1つだ。

波長 上側に表示されているのは、符号化装置を経由して識別不可能な状態になっている波形。下は復号後の波形だ

 こういった特徴を踏まえると、OCDMは、WDMに取って代わる技術というよりも、メトロエリアでの高付加価値サービスの基盤としての役割が期待されるという。

 沖電気のラボラトリマネージャ、上條健氏は、実用化/商用化の時期こそ明言しなかったものの、「機密性が重視される専用線通信の置き換えや、アベイラビリティが求められるBSデジタル放送の局間通信、SANといった分野での利用が考えられる」と述べ、具体的なニーズを探りながら商用化の時期を模索していく考えを示した。コストについても、WDM並みを目指すという。

 今後は、多重化の向上に加え、より実環境に即した伝送を実現するためにもマネジメント系の充実を図っていく計画だ。

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