CA、オープンソースDBで「Oracleを追い越す」

CAはIngresデータベースを間もなくオープンソース製品としてリリースする。「SQL Serverを圧倒する」この製品で、同社は最高のデータベースと目するOracle 10gを追い越したい考えだ。(IDG)

» 2004年07月29日 15時16分 公開
[IDG Japan]
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 米Computer Associates(CA)は、長らく動きのなかったデータベースに新たな命を吹き込み、MicrosoftのSQL ServerやOracleの10gよりも優れた製品を作り出そうと考えている。

 同社は来週、サンフランシスコで開催のLinuxWorldで、「Ingres」データベースを独自の「CA Trusted Open Source License(CA-TOSL)」の下でオープンソース化する計画だ。同社幹部が先週、本社での会合で明らかにした。

 「これは市場を大きく変えると思う」と同社上級副社長トニー・ゴーハン氏は語った。「われわれはOracleに対抗する」

 このIngresのバージョン(r3)は、MicrosoftのSQL Serverを上回る性能を発揮する上、オープンソースなので価格の点でも魅力的だと同氏。同氏は、具体的なベンチマークは挙げられないが、これら2つのデータベースを同じハードで走らせた場合、「IngresはSQL Serverを圧倒する」と話した。

 MicrosoftはIngresと比較したテストを行ったことはないが、SQL Server担当製品管理ディレクター、トム・リッツォ氏はCAのテスト手法に対し、ベンチマークの業界団体TPC(Transaction Processing Performance Council)によるものではないことを理由に疑問を向けている。

 「Ingresは当社の主流のライバルではない」とリッツォ氏は語り、MicrosoftではIngresをハイエンド寄りのSQL Serverではなく、MSDE(Microsoft SQL Server Desktop Engine)と競合するものと見なしていると続けた。MSDEの次期版は「SQL Server Express」という名称で、来年前半に「SQL Server 2005」とともにリリースされる予定だ(6月29日の記事参照)。SQL Server Expressは無償版データベースとなる。

 Microsoftは先日、SQL Server 2005のβ2をリリースし、AMDのOpteronプロセッサのサポートと、新しい管理ツール「SQL Server Management Studio」を追加した(7月27日の記事参照)。このツールは、既存の管理ツールを組み合わせて、SQL Server Reporting Services、Notification Services、XML、SQL Server 2005 Mobile Editionのサポートを加えたものだ。

 ゴーハン氏は、CAはIngres r3に12〜18カ月取り組んできたと説明する。「これは重要な製品だ。多数の新機能が加えられている。Ingresは過酷な業務に耐えられるものでなくてはならない」

 Ingresはまた、オープンソースデータベース「MySQL」よりも開発が3〜5年先行していると同氏。だがCAは最高のデータベースとして、IBMのDB2よりもOracleを選んだ。

 「Ingres r3をOracle 9iと比べた場合はかなりの接戦だが、Oracle 10gはわれわれの上を行く。われわれは10gに追いつけると考えている。目標はOracleを追い越すことだ。ただ追いつくのでは意味がない」(ゴーハン氏)

 そのために、CAはOracle技術を使ったクラスタリングオプションをIngresに加えた。またJBossと提携して、JBossのパーシステンス・クエリーサービス「Hibernate」をデータオブジェクトのエクスポーズに活用している。

 だが少なくともアナリストの1人は、Ingresがデータベース市場に食い込むチャンスついて懐疑的な見方をしている。

 「新たなオープンソースDBMSに関心を持つ人はいないと思う」とオープンソース技術を専門とするコンサルティング会社New River Marketing Researchのビル・クレイブルック社長。「データベース市場に影響を及ぼすのは非常に難しい」

 CAと同じことをやろうとして失敗した企業もある。例えばGreat Bridgeは、PostgreSQLのサポートサービスを5万ドルで販売する事業では生き残れないと判断し、2001年9月に会社をたたんだ。

 さらに、たとえCAが実際に性能でOracle 10gを追い越したとしても、特にDBMSと併用されているアプリケーションを考慮すると、SQL ServerやOracleなどのデータベースからの移行にはコストがかかるため、Ingresがオープンソースで初期コストが無料だという魅力は薄れる。こうしたコストは、顧客がオープンソースデータベースに移行する妨げとなるかもしれない。

 クレイブルック氏は、Ingres r3にとって最も有望なチャンスは、小規模企業や新興企業にあると指摘する。

 「ほかに幾らか可能性がある分野として、構造化データと非構造化データの管理がある」とCAのゴーハン氏。

 CAはまた、オープンソースコミュニティーの成果を取り入れて、主にネイティブXMLサポートなど、現時点でIngresにない機能を追加する計画だ。だがそのためには、今はまだ存在していないIngres開発者のコミュニティーが形成される必要があるとクレイブルック氏は指摘する。

 最初のオープンソースのIngres r3はLinuxに対応する。その後ほかのプラットフォームのサポートも加えられる予定だ。

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