特集:第3回 Visual Studio .NETプログラミングの勘どころ(6/6 ページ)

» 2004年08月11日 08時45分 公開
[石井宏治,ITmedia]
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NUnit

 .NET用のユニットテストツールの代表格であり、使ったことがある人は多いだろう。www.nunit.orgからダウンロードできる無料のツールだ。

NUintのメイン画面

 .NETのカスタム属性を使いコードに直接テストのための指示を入れることができるなど、使いやすさが魅力のツールだ。

 マイクロソフトが最近発表した「Visual Studio 2005 Team System」には同様のユニットテストツールが付属するが、それはまだ先の話であり、また障害管理やソースコード管理システムと統合されているという点を除いてユニットテストツール単体としてみれば、NUnitはVisual Studio 2005 Team Systemとほぼ同等の機能を備えていると思われる。

 当初は単独のツールであったが、Visual Studio用のアドインなどもリリースされ、Visual Studioの中から起動したり、デバッグしたりできるようになった。アドインに関してはドキュメントが少ないが、作者のブログに若干なりとも英語の説明と画面写真がある。それほど機能が多いわけではないので、画面写真だけ見れば使えるようになるだろう。

FxCop

 特に最近のセキュリティ問題の重要性の変化によって、静的解析ツールの重要性がクローズアップされてきている。静的解析ツールとは、ソースコードやオブジェクトからリスクとなる部分を解析するツールのことだ。

FxCopのメイン画面

 ツールによってそれぞれの役割が異なるが、FxCopは.NET用に開発された静的解析ツールのひとつで、コンパイル済みのバイナリから、.NETで守っておくべき規則や互換性のために推奨される事柄、デザイン ガイドラインへの違反事項などを検出してくれる。

 .NETのドキュメントは膨大なので、なかなかそのすべてを読み、頭に入れておくことはできない。定期的にFxCopを実行し、チェックしておくことで、問題を事前に察知することができる場合がある。自分のプロジェクトにはそぐわないルールがあればそれを外したり、あるいは自分のためのルールを追加したりすることも可能だ。

 Visual Studio 2005 Team Systemでは組み込まれる予定だが、現在のバージョンはGotDotNetから無料ダウンロードできるので、ぜひ開発プロセスに組み入れておきたい。

開発が終わったらテストサイトと運用サイトへのコピー

 ASP.NETでWebサイトを作成したら、運用サイトへコピーしなければならない。この時、前述したように運用サイトと開発機の間でURLが異なるため、いったん実際の運用サイトとは別のサーバにコピーして確認する方法をすすめる。マシンを確保できない場合には、ルート以下のURLさえ一致していればほとんどの場合にはテストが可能なため、同じマシンのIISで設定を行い、81番など別のポートを利用すればよいだろう。

 テスト用のサイトを経由してから運用サイトへコピーするメリットは、ほかにもある。

 まず前述のようにXMLなどのデータファイルがある場合。前述の設定を忘れれば、Visual Studioの「プロジェクトのコピー」コマンドではこれらのファイルがコピーされないので、開発側PCでは動作するが運用側サーバで動かないことになってしまう。テストサイトを経由すれば、テストサイト上でページを表示した段階でこの手の間違いに気がつくことができる。

 また静的なページなど、ロジック以外のコンテンツがある場合にも便利だ。前述のようにVisual StudioのHTMLエディタは、開発以外にはあまりおすすめできるものではない。FrontPageの方が格段に使いやすく安価だ。UTF-8以外でエンコードされたXMLファイルを壊す、といったVisual Studio特有の問題も発生しない。

 FrontPageも、マイクロソフトが買収した直後、FrontPage 97の頃は勝手にHTMLを変更したりしてくれたが、その後「ユーザーのHTMLを勝手にいじらない」ことはFrontPageの最大の目標の一つとなり、最新版である2003においてはそのような問題はまったく発生しない。開発者と編集者がファイル単位でオーナーを分けておくことができれば、編集者はテストサイトにFrontPageで接続すれば済む。

 運用サイトへコピーする場合を考えても、Visual Studioの「プロジェクトのコピー」コマンドを使うと、変更のあり、なしに関わらずすべてのファイルに対して上書きするかどうかの質問が逐次表示される。開発側PCに静的HTMLファイルなども全部入れてしまうと、これがかなり大変な作業となる。

 開発側PCには開発に必要な最小限のファイルだけを入れ、テスト側サーバでコンテンツを管理していれば、FrontPageで運用サイトへコピーするのは非常に簡単になる。ちなみにVisual Studioの「プロジェクトのコピー」コマンドはさすがに不評だったようで、次バージョンであるVisual Studio 2005ではFrontPageとほぼ同等の機能を持った「プロジェクトのコピー」コマンドが付属する、とマイクロソフトから発表されている。

インストールセットアップの作り方

 セットアップ作成ツールの定番と言えばInstallShieldだが、Visual Studio付属のセットアップ作成ツールも悪くない。

 特にセットアップ時に多くのことをユーザーに入力させると、セットアップすらしてくれなくなることが多いこと、最近の方向としてレジストリが壊れたときに備えてプログラム自身がそういった初期情報の設定機能を備えることが推奨されていることから、簡単で安定したセットアップを作る、ということに関しては十分な機能を備えている。

 筆者が唯一不満に思っていたのは、.NET Frameworkもいっしょにセットアップしてくれるセットアップを作れないことだったが、マイクロソフトは2003年12月にそれを可能にするVisual Studio用のアドインをリリースしている。本稿執筆時点でこのページからリンクされているドキュメントは古いが、ダウンロードしてセットアップをビルドすれば、.NET FrameworkやMDACをいっしょにセットアップ作成可能だ。

GUIで先行するVisual Studioの開発環境

 Visual Studioは決して安価な開発環境ではない。また足りない部分やおせっかいな部分も多分にある製品であるが、Windows上でアプリケーション開発で生計を立てるプロフェッショナルであれば、それぞれの道具をそれにあった使い道で使いこなし、自分の生産性や価値を上げていくことを考えてもよいと思う。

 .NETとJavaは、何かと競合として比較されるが、昨年あたりから特にVisual Studioを中心に、その開発効率においては.NETの方が優れているのではないか、というコミュニティの声が大きくなっている。最近発表されたSun MicrosystemsのSun Java Studio Creatorは、Visual Basicを見据えた戦略であることを表明している。現在、.NETで開発中、および.NETを検討されている人には、意識されるだけの開発環境を利用できる機会を持っているのだ。本記事が少しでもその支えとなり、読者のソフトウェア開発の助けになることを望みたい。

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