SAP導入をめぐるトラブルでHPのサーバ部門が減収、幹部更迭

SAPのSCM導入時に発生したトラブルが主な原因でHPのエンタープライズサーバ&ストレージグループの売り上げが減収となった。フィオリーナCEOは、幹部3名の更迭を明らかにした。

» 2004年08月13日 14時25分 公開
[IDG Japan]
IDG

 SAPのサプライチェーンソフトウェアの導入時の障害がHewlett-Packard(HP)の収益に大きく響き、このトラブルが理由で同社の幹部3名が8月12日付けで解雇されることになった。

 HPは第3会計四半期決算の発表で、エンタープライズサーバ&ストレージ(ESS)グループの売り上げが前年同期比5%減の34億ドルになり、その主たる原因はソフトウェアの導入をめぐる問題にあることを明らかにした。同社は発表文の中で、そのほかの要因として、大幅な値引きや、「米国を中心とした新しい注文処理/サプライチェーンシステムへの移行が想定外の混乱をもたらした」ことなどを挙げている。

 HPのカーリー・フィオリーナCEO兼会長は、「パーソナルシステム、イメージング&プリンティング、ソフトウェア、サービスの各部門の業績には満足しているが、これらの堅調な決算もエンタープライズサーバ&ストレージ部門の容認しがたい業績で曇ってしまった。このため即刻、経営幹部を更迭するつもりだ」とする声明を発表した。

 フィオリーナ氏は、更迭人事の詳細は明らかにしなかった。しかしHPは同日、同社サーバ部門の四半期決算の内容が良くなかったために経営陣を刷新するという理由で、サーバグループの元責任者のピーター・ブラックモア氏を含む主要幹部3名が解雇されたと発表した。ブラックモア氏は、カスタマーソリューショングループ(CSG)の執行副社長という肩書だった。同グループは昨年12月、全世界の企業および公共部門の顧客への直販を管理するために組織された。

 フィオリーナ氏によると、今回の人事について、最初に電子メールで同社の従業員に通知し、その後でメディアに公表したという。「ピーター、ジムおよびキャスパーには、これまでの尽力と貢献に感謝する」と彼女は記している。

 HPのスポークスマンは12日午後、問題が起きた移行作業はSAPのソフトウェアに関連したものであることを明らかにしたが、それ以上の詳細を語らなかった。

 同日に報道関係者向けに行われた電話会見でフィオリーナ氏は、「この問題でESSの売り上げが約4億ドル、営業利益が2億7500億ドル減少した」と明かした。

 彼女は問題の背景として、「移行をきちんと実施できなかった」ことを挙げている。これらの問題は主としてHPのIAサーバ事業に影響を与えたが、ビジネスクリティカル事業とストレージ事業も影響を受けた。HPでは、製品の供給体制の維持に努めたものの、売り上げの減少を食い止めることができず、直販ルートの注文処理でチャネルパートナーに頼ったり、注文処理をはかどらせるために空輸という手段を利用せざるを得なかったという。こういった処理にかかった経費が同社の粗利益率に響いた。

 フィオリーナ氏は一連の問題について説明した後で、「これらの問題は基本的に過去のものとなった」と楽観的なコメントを述べた。

 HPによると、ブラックモア氏の後任は、現在、執行副社長兼最高マーケティング責任者を務めるマイク・ウィンクラー氏が就任する。ウィンクラー氏は就任後も従来の職務を兼任する形になる。

 CSGの上級副社長で北米・中南米地域担当の業務執行ディレクターのジム・ミルトン氏、およびCSGの上級副社長で欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域を担当する業務執行ディレクターのキャスパー・ローステッド氏も解雇された。ミルトン氏の後任を務めるのは、HPのテクノロジーソリューショングループの上級副社長兼ゼネラルマネジャーのジャック・ノビア氏。ローステッド氏の後任には、EMEA地域のイメージング&プリンティンググループのバーナード・メリック副社長が就任する。

 第4四半期のESSの受注残は1億2000万ドルに上るが、HPでは、8月末までに出荷スケジュールが通常状態に復帰するとみている。またフィオリーナ氏は、第4四半期末までに同グループの収支が黒字になると予測している。

 HPはSAPと緊密な提携関係にあり、SAPのサプライチェーン/ERPソフトウェアを中心とした専門的なコンサルティングサービスを提供している。

 SAPアメリカのスポークスマンのウィリアム・ウォール氏は、「両社はまず顧客として、そして戦略的パートナーとして、強力かつ建設的な関係にある。この関係は今日でも拡大を続けており、顧客としての関係を深めることについて討議している」と話す。

 ウォール氏は「HP社内のことを具体的に話すことはできない」としながらも、HPの発表文では問題の原因がSAPのソフトウェアにあるとしていないと指摘した。

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ