阪急電鉄、グループ企業間でシェアドサービスを展開

日本PeopleSoftは、大阪に本社を置く阪急電鉄が、PeopleSoft Enterpriseを利用して、同社グループ企業間で人事業務を共有するシェアドサービスを構築したことを明らかにした

» 2004年08月20日 19時33分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 日本PeopleSoftは8月20日、大阪に本社を置く阪急電鉄が、PeopleSoft Enterpriseを利用して、同社グループ企業間で人事業務を共有するシェアドサービスを構築したことを明らかにした。社員を「人的資源」としてマネジメントし、ビジネスの成功を目指す。

 阪急電鉄は2298人(2004年3月31日)の従業員により、不動産事業、流通事業、創遊事業、宝塚歌劇の運営などを行っている。2003年度の売上高は、2387億8400万円に上る。多くのグループ企業が存在する同社は、各社が独立して事業を拡大してきた経緯があるという。

阪急ビジネスアソシエイトの和田氏。「以前からPeopleSoftを利用していたが、シェアドサービス構築に当たり一度白紙に戻して検討した」と話す。

 だが、今後は、グループを1つの会社という視点で捕らえ、各社に共通した強みを引き出しながら、全体としての成長を図る方向に考えを転換する。具体的には、都市交通や不動産などのコア事業、レジャーなどにも力を入れるという。

 グループとしての統一性を強化するに当たり、システム的な対応も行う。取り組みの1つが、人事に関する業務をグループ企業間で共有し、社内情報の流通やコスト削減を目指す「シェアードサービス」の導入だ。

 シェアードサービスを導入することにより、グループの各企業は、間接業務などに割いていた人的資源をコア事業に集中させる。また、人事業務を切り離すことによってコスト削減を図る一方、シェアドサービスとして運用する人事業務は、専門化および高度化を進めることができる。結果として、人事サービスの品質向上を見込めるとしている。

PeopleSoftのHCMを導入

 具体的には、PeopleSoft Entarprise HCM(Human Capital Management)と、給与計算を行うGlobal Payrollを導入し、既に安定稼動しているという。5月の時点でグループ18社、およそ1万人のユーザーを対象に、シェアドサービスを実施している。

 同グループのシェアドサービスの構築をシステム的にサポートしている阪急ビジネスアソシエイトの和田等氏は、「PeopleSoft製品のデータ構造がグループのビジョンに合っていた」と話す。また、カスタマイズしたプログラムとパッケージとの親和性を維持できることが特徴である開発環境People Toolsも高く評価した。100%ピュアウェブ環境によるリアルタイム性にも着目したという。

導入効果は?

 シェアドサービスによって構築したグループ共通人事システムの特徴は、従業員IDをキーにして、さまざまな情報の履歴を管理できること。人事の基本業務や勤怠、給与などの情報も一元的に管理される。また、クエリーによる検索機能を活用することで、法定帳票以外はなるべく出力を抑え、ペーパレス化も進める。

 HCM導入後は、IDの統一や検索機能の強化が功を奏し、同グループに全体で意思決定の支援体制が強化された。また、システムが組織変更に柔軟に対応するため、今後の合併や分割といった動きにも計画的に対処できる。

 さらに、稼動するプラットフォームをホストコンピュータからWindowsサーバに移行したことにより、運用コストの削減も実現したとしている。

 「シェアドサービス導入によって、年間で5%のコスト削減が実現した。今後も5%削減のペースを守って行きたい」(和田氏)

 今後は、各事業会社も含めて、制度の統一を実施し、2007年度には、シェアサービスへの参加グループ企業を26社に伸ばし、1万5000人のユーザーを見込む。また、コンピテンシー管理も導入することで、個人の能力や実績を把握し、キャリアプランの作成も行うとしている。

 一方、日本ピープルソフトの日本およびアジアパシフィック担当HCMプロダクトマーケティングマネジャーの横井クリスティーヌ由美子氏は、阪急電鉄のシェアドサービスと絡めて、「CEOの関心事は顧客の保持、コスト削減、そして、3つ目は人材開発が挙げられる。企業は、人材のパフォーマンス管理により、企業の将来のリーダーを特定していく必要がある。」と話した。

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