デベロッパーとユーザーはLonghornの機能縮小で喜ぶ?

Microsoftは、Longhornで提供する予定の機能を縮小する一方で、Windows XPとWindows Server 2003にそのいくつかを追加することにした。これはデベロッパーにとっては大きなメリットだという見方がある。

» 2004年08月31日 07時55分 公開
[IDG Japan]
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 MicrosoftはLonghornの野望を後退させ、Windows XPとWindows Server 2003にLonghornテクノロジーのいくつかを追加することにした。Longhornの魅力は色あせるかもしれないが、デベロッパーにとっては失うよりも得ることのほうが多いという見方もある。

 次期Windowsリリースは2006年に出荷されるが、統合ストレージシステムであるWinFSは組み込まれないとMicrosoftが8月27日に明らかにした。WinFSはMicrosoftが喧伝していたLonghornの3つの主要コンポーネントの一つで、リレーショナルエンジン技術を使い、ユーザーは自分のコンピュータ内や企業ネットワーク内で関連ファイル、書類、電子メールメッセージを簡単に探すことができるようになる。MicrosoftはWinFSを2006年リリースのLonghorn OSのアップデートとして提供する予定に変更した。WinFSは次期SQL Server 2005の技術をベースとする予定だ。

 WinFSの遅れは損失ではあるが、現行OSに主要なLonghornテクノロジーを提供すると約束し、2006年中にLonghornの提供を行うと確約していることは重要な前進であると、アナリストやユーザーは述べている。

 Windows XPとWindows Server 2003でAvalonグラフィックシステム、WinFXアプリケーション・プログラミング・モデル、そしてIndigoコミュニケーションサブシステムをサポートすることで、デベロッパーはより広範囲なインストールベースを対象にすることができる。Microsoftはこれまで、Longhorn以前のOSに提供するのはIndigoだけだと述べていたが、これはWinFXとAvalonを使って開発されたアプリケーションはLonghornベースのPCでしか動作しないことを意味していた。

 「これは賢明な動きだ」とエンジニアリング会社であるLLI Technologiesの上級ソフトウェアデベロッパーであるデビッド・バーク氏は語る。「個々のプレゼンテーションおよびコミュニケーションサブシステムはLonghornのように一気に花開くようなものではないが、テクノロジーの進化が徐々に進んでいく、現実世界に生きているデベロッパーにとっては歓迎すべきニュースだ」と同氏は述べた。

 IDCの調査担当ディレクターであるアル・ギレン氏も同意する。「Microsoftは非常に巨大なインストールベースを持っており、新しいテクノロジーを導入するときには古いシステムにも提供しなくてはならない。そうしなければ、非常に巨大な非互換システムのインストールベースが出来上がってしまうからだ」(ギレン氏)

 ギレン氏によれば、WinFSの遅れがMicrosoftの負い目になることはないという。「確かに引っ込めはしたが、コンポーネントとして提供することになっている。Windows Server 2003でも同じようなことをしており、製品とともに提供されたコンポーネントもあれば、その後に提供されたものもある。製品の提供を優先させ、その後にパーツを提供するわけだ」と同氏。

 WinFSがなくても事実上困らないというユーザーもいる。「われわれにとってはNTFSで十分だ」とある企業でデスクトップエンジニアリング担当マネジャーを務めるトーマス・スミス氏は語る。「ファイルシステムのためにLonghornに移行することはない。セキュリティなどの理由でならアップグレードするが」(スミス氏)

 バージニア工科大学のシステム管理者であるアラス・メミシャジチ氏は、WinFSで予定されている機能を待ち望んでいるわけではないが、Microsoftの約束を全面的に信じているわけではないという。「Microsoftの約束がどうなっていくかはみんな知っている。製品が最終的に登場してくるときには最初の予定とは大幅に違ったものになるものだ」とメミシャジチ氏。

 WinFSの遅れと、WInFX、Avalon、IndigoをLonghornから分離したことにより、喧伝されたOSの魅力の多くが失われることになる。同社にとって、幹部が最初に宣伝したような「ビッグバン」リリースではなくなるのだ。

 「Longhornという名前は今ではまったく別のものを意味する。単に次のWindowsリリースというだけだ」とするのは、Directions on Microsoft誌の調査ディレクターであるロブ・ヘルム氏。

 MicrosoftはWindows XPをリリースした2001年以降、新しいクライアントOSを出荷していない。PCメーカーはMicrosoftのLonghornリリースでPCの売り上げを加速したい意向だ。アナリストとユーザーによれば、ほとんどのユーザーは新しいOSを既存のハードウェアに導入することはせず、新OSが組み込まれた新しいコンピュータを購入するという。

 さらに、MicrosoftがLonghornを古いWindowsバージョンと互換性を持たせ、かつてはLonghornのみに提供予定だったテクノロジーでアップデートすることができれば、ユーザーをWindows XPおよびWindows Server 2003にアップグレードさせる手助けになりうるとヘルム氏は説明する。

 「Microsoftが現在から2008年頃までに提供する新機能のほとんどが利用可能だということを知れば、Windows XPとWindows Server 2003にユーザーが飛びつくのは理解できる」(ヘルム氏)

 Microsoftが最初にLonghorn機能の計画を公にしたのは2003年10月にロサンゼルスで開催されたProfessional Developers Conferenceで。同社の会長兼チーフ・ソフトウェア・アーキテクトであるビル・ゲイツ氏がLonghornは「この十年で最大のリリース、Windows 95以降で最大のもの」と喧伝し、WinFSは「聖杯」と持ち上げた。

 MicrosoftはLonghornの最初のβ版を2005年中頃にリリースする予定。Longhorn Serverは2007年リリースの計画だ。

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