Webサービスの「約束」を果たすWS-I

Web Services Conference 2004のオープニング記念講演に、WS-Iのディレクターが登場し、Webサービスの相互運用性確保を狙うWS-Iの活動やその成果について話した。

» 2004年08月31日 18時42分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 8月31日、都内で「Web Services Conference 2004」が開幕した。オープニングの記念講演には、WS-I(Web Services Interoperability Organization)の理事会メンバーを務めるアンディ・アスター氏が登場し、Webサービスの相互運用性確保を狙うWS-Iの活動やその成果について話した。アスター氏は、ウェブメソッドで標準およびプラットフォーム戦略担当副社長を務めている。

 アスター氏は記念講演後のプレス向けセッションにも出席し、「WS-Iの狙いは、Webサービスの約束、すなわち異種混在環境においても相互運用性を確保するという約束を果たすこと」と重ねて強調した。

 2002年2月に設立されたWS-Iは、デベロッパー(ソフトウェアベンダーやSI)や企業ユーザーらに対して、Webサービス標準をどのように使ったらいいのかについてのガイドラインとして「プロファイル」を提供する。標準を実装する段階で非互換が発生するのを防ぐのが狙いだ。その意味でWS-Iは、ほかの標準化団体、W3C、OASIS、IETFとは活動が異なる。

 ユーザーニーズを反映した利用法に関する「シナリオ」、Microsoft、BEA、IBMなどさまざまなベンダーのプラットフォーム向けに用意される「サンプルコード」、プロファイルに準拠しているかをチェックする「テストセット」なども提供され、異なる企業の製品間でも相互運用性を保証しようとしている。

 ガイドライン策定の対象は、Webサービスの「トランスポート」(HTTPなど)、「呼び出し」(XML、SOAP)、「ディスクリプション」(XML Schema、WSDL、UDDIなど)といった基盤はもちろん、セキュリティを確保するための「WS-Security」(OASIS策定)に関するプロファイルも策定作業中だ。アスター氏は「ほかの領域でも標準が固まりしだいプロファイルの策定に着手していく」と話す。

 8月下旬には、Webサービスの技術を利用して添付ファイルの送信を容易にするプロファイル、「Basic Profile 1.1」「Simple SOAP Binding Profile 1.0」「Attachments Profile 1.0」をリリースしているほか、「Basic Security Profile 1.0」正式版の年内公開を目指しているという。

 軌道に乗るWS-Iの活動をアピールするアスター氏だが、課題として「ガイドライン策定のさらなる迅速化」も口にしている。やはりプレス向けセッションに同席した理事会メンバー、エドワード・コブ氏(BEA Systems アーキテクチャ&スタンダード担当副社長)も標準化プロセスそのものの複雑さと、それを追いかけてガイドライン策定を進めなければならない難しさを挙げた。

 「標準化団体は通常、ベンダー各社からボランティアで参加するメンバーによって運営される。彼らが望む方向に進みがちだし、そのステップも不明確なことが多く、ユーザーが望んでいることと違うことも出てきてしまう」とコブ氏。

 こうしたギャップを解消すべく、WS-Iではユーザーから要件を収集するための作業部会も設置しており、標準化団体へのフィードバックを行っているという。

 アスター氏は、「ベンダーにとっては顧客である企業ユーザーらが、ビジネス上のニーズを突きつけ、それを反映した標準化を求めていくことが必要だ」と話す。

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