プラットフォーム統一化に動く欧米と遅れる日本標準化へ進むRFID(1/2 ページ)

アクセンチュアの堀田パートナーに、RFIDが引き起こす可能性のある競争力の格差について聞いた。EPCで統一化の動きを見せる欧米に対して、日本の対応は遅れているという。

» 2004年09月08日 00時59分 公開
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

 欧米では今後、EPC(Electric Product Code:ICタグ利用における製品コード体系の1つ、EPC Globalが推進する。)をベースにプラットフォームを統一する方向で動く一方、日本はまだ対応が遅れている。もし日本の小売業が個々の小売業者が独自の動きをするとしたら、「それは悲劇」と話すアクセンチュア戦略グループの堀田徹哉パートナー。同氏に、RFIDが引き起こす可能性のある競争力の格差について聞いた。

エンティティの違いを越えた共通化を

堀田 RFIDは夢を語ると、適用範囲、応用範囲ともに広く、価値の高い技術と言えます。しかし、今言ったこと(品質管理や環境保護)を実現しようとすると、ほとんど全ての場合において、「異なるエンティティが共通のプラットフォーム上で管理されている」という状況をつくる必要が出てきます。

 もし10年後に、自動車を解体業者に持っていった時に、その解体業者がICタグを読んで情報を引っ張ってくる仕組みを持っていなかったら、無用の長物になる。在庫の圧縮でも、メーカーの配送センターだけでなく、小売の店舗までデータを連携できなければ、本当の意味での効果は得られない。

ITmedia データの標準化などが必要ということになりますか?

堀田 データを変換できる形で標準化することが要求される1つの要素になります。また、企業戦略上の情報の扱い方も問題になると考えています。

 小売業の慣行上、実売情報などを無秩序にメーカーやサプライヤー側に明らかにするという行為は、好む場合と好まない場合があります。こうした取引慣行の壁をどのように打破するかということも、ある意味で標準化の問題と言えるかも知れません。

 一方、システム上の課題としては、小売業者やメーカーがそれぞれ異なるシステムを使っていることが挙げられます。これも、データ連携の標準化の問題と言ってしまえばそうかもしれません。しかし、例えば、家電で考えたとき、量販店がサプライチェーンで利用している仕組みは各社で異なります。まず、パッケージシステム自体が違うことも多い。需要予測や生産計画の立案の仕方、またプランニングサイクルも違います。

 システム上のこうした分散化、違いを乗り越えて、どのように共通化していくかという点は今後の課題になります。

ソフトウェアベンダーの対応

ITmedia システム上の分散化を統合するために有効なツールなどはありますか?

堀田 RFIDだけのために、例えばERPパッケージを載せかえるといった状況は現実的にはあまり考えられません。

 現在、パッケージベンダーが取り組んでいることは、RFIDの仕組みで読んだデータを、会計などのシステムに取り組んで利用できるように、データを変換していくことです。

 次のステップとしては、異なるパッケージ間で情報を連携するなど、統合的なインタフェース開発などが考えられます。

ITmedia ドイツのMetroがSAPを使ってRFIDのシステムを導入しました。

堀田 マーケティング的な問題かもしれませんが、SAPはそうした点で成功しているようです。MicrosoftやOracleなど、ソフトウェアベンダーは概ね積極的にRFIDに取り組んでいます。そうした動きをチャンスと捕らえ、顧客を失わないことを考えています。

 というのは、RFIDなどの導入が本格化したときに、それに対応してシステムを載せ代えたいというニーズが出てくる可能性があります。技術的に対応できなければアウトになってしまうため、ソフトウェアベンダーにとっては一番怖いことであるわけです。もちろん、「この際だからRFID対応してしまいましょう」といった提案もしていくでしょう。

ITmedia 米国ではWal-MartがRFIDによってサプライヤーの囲い込みを行おうとしています。今後、長い目で見た場合、日本の小売業への影響はどの程度ある考えますか?

堀田 その問題に関しては、RFIDの成否に関わらず、Wal-Martは西友に出資し、Carrefourも既に日本に出店しています。日本の小売対グローバルリテイラーという争いは始まっています。そんな中で、イオンなどは好業績を保っているといった状況もあります。

日米の業界構造の違い

 ただ、この争いにRFIDがどれだけインパクトをもたらすかと言うと、ちょっとまだあまりイメージできません。

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