F5ネットワークスは、アプリケーションフロー全体の管理が可能な負荷分散/トラフィック管理装置の最新版、「BIG-IP v9」を発売する。
F5ネットワークスは9月8日、負荷分散/トラフィック管理装置の最新版である「BIG-IP v9」を発表した。合わせて、ハードウェアプラットフォームの新製品、「BIG-IP 1500」「同 3400」「同6400」の3モデルもリリースしている。
BIG-IPシリーズは、バックエンドシステムの負荷分散を行うとともに、帯域制御、SSLアクセラレーションといった機能を実現するオールインワン型のアプリケーションスイッチ製品だ。当初は静的なHTTPトラフィックの負荷分散が主眼だったが、Webアプリケーションの広がりとともにその機能もL4からL7レベルへと拡張されてきた。
今回リリースされたBIG-IP v9は、いわゆるOSIモデルにおける「アプリケーションレイヤ(L7)」にとどまらず、ERPやCRM、SFAといったさまざまなIPベースの「アプリケーション」に対応した。ユーザーと各アプリケーションの間に立ち、それらが最も効率的に、かつ安全に利用できるよう、アプリケーションとネットワークインフラの双方を制御するという。
同社がこうした製品をリリースした背景には、アプリケーション配信の仲立ちをしたい、という意図がありそうだ。
「ネットワーク担当者とアプリケーション担当者の間に乖離が生じていることが、最大の課題だ」と、米F5 Networksのシニアプロダクトマネージャ、ジェイソン・ニーダム氏は指摘する。つまり、アプリケーション担当者がビジネスロジックに専念して開発したアプリケーションを、いざ社内に配備しようとすると、パフォーマンスやセキュリティの面でさまざまな問題が生じてしまう……というわけだ。しかもアプリケーションの増加はネットワーク構成を複雑化させ、運用コストの増加を招いているという。BIG-IP v9は、単なるトラフィック管理にとどまらず、こうした課題を解決するために投入されるものだという。
このためBIG-IP v9は、既存の製品に比べ、ソフトウェアやハードウェア、ユーザーインタフェースなどあらゆる側面で機能を一新した。その核となるのが、新たに開発された高速アプリケーションプロキシ「TM/OS(Traffic Management/OS)だ。
このTM/OSは、「アプリケーションフロー全体を検査し、管理する」と、ニーダム氏は言う。つまり、過去の機種がサポートしてきた「ディープパケットインスペクション」技術のようにパケット単位での精査ではなく、アプリケーションフロー全体を双方向で把握し、制御できるようになったという。
これにより、帯域制御や負荷分散、SSLアクセラレーションといった従来より提供してきた機能に加え、状況に応じたHTTPやTCPの最適化が可能になる。これを活用することで、クライアントの環境やアプリケーションに応じた、より高度なレベルでの配信の高速化が実現される、というのが同社の説明だ。また日本市場へのコミットという意味合いからも、IPv6ゲートウェイ機能をサポートし、既存ネットワークからIPv6ネットワークへの移行を透過的に行えるようにした。
こうしたアイデアを現実のものにするには、各種アプリケーションとの連携も欠かせない。同社はそのための独自API「iControl」を提供するほか、「OracleやMicrosoft、Siebelをはじめ、多くのアプリケーションベンダーと協力しており、Solution Centerを通じてテストや評価を行っている」(ニーダム氏)。現に、BEA WebLogic Clusterをはじめ、特定のアプリケーションに特化した機能も提供しているという。
BIG-IP v9は、同時にリリースされた3種類のプラットフォームのほか、BIG-IP 5000/2000シリーズやBIG-IP 520/540など、既存製品でもソフトウェアアップグレードによって利用可能だ。価格は、最小構成(従来の筐体)で395万円から。
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